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    soww_c

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    あまあまにしたいルシファーvsあまあまアレルギーなアダム②

    少し描き直しました(><)

    ちゃぷたー②「言質は取ってある」
    ルシファーの言葉に、アダムは耳を疑う。
    疑ったが自分が間違ってた事は一度もないと改め直した。
    目の前まで、スマホを突きつけられていたが、ただのブラフだと、鼻で笑う。
    「嘘つけ」

    しかし何の躊躇もなくピコンと再生される動画に、嫌な予感が背中を伝う。

    重い石でも押し付けられたように前のめりになって、スマホに食いついた。
    音声は、声が飛び交って、どうやらどこかのBARのようだ。

    手ブレが激しいが何とか内装を捉えて、記憶を巡らせる。 
    しかし、こんなBAR覚えがない、ほらな、やっぱり嘘
    「もーアダム、起きてっ!迎えが来たよー!」
    しかし、エンジェルの声と共に名前が呼ばれ、事態は一変する。
    映像は焦点を捉えて、カウンターで項垂れる男を映し出した。
    「ん〜〜〜!!」
    相当泥酔なのか奇声を発しながら、ゆっくりと上体を起こしたゾンビを、アダムはまだ自分だと信じられないでいる。
    「るしふぁ?」
    しかし振り向いた男は間違いなく自分で
    「きてくれたのかぁ〜〜」と、カメラ外ではあるがルシファーに抱きついていた。

    枠内にいたエンジェルだけが映し出されており、それはもう絵に描いたような唖然だった。
    「わたしのかえりが遅いから心配でむかえにきてくれたのかぁ?」
    「いや、エンジェルに迎えに来いと連絡が来たからだが…」
    「そーか!わたしのために!」
    ルシファーの身体を離そうとしないアダムに、エンジェルが戸惑いを見せている。
    「え、二人って付き合ってたの?」
    「そんなわけないだ「そう!!」
    ルシファーの否定も遮って、脳がアルコール漬けの男はとんでもないことを口走っている。
    「そう、わたしたちつきあってる!!」
    それには流石のルシファーも驚きで言葉を失っていた。エンジェルに関しては、傾けたグラスの酒が口から滑り落ち、滝を作っている。
    「わたしたち、きょうからつきあうことにしたもんな?」
    含みがある色声に寒気がした。挙句ルシファーに身体を押し付けているのか、ぐらりと映像が一歩下がる。
    理解が追いつかない。
    え?私なんかのパラドックスに巻き込まれてる?ありえない事が事実としてあるってこれもうパラドックスだよな?だから永遠に理解が追いつかない?

    追いつかないアダムを置いて、動画は無情にも進んでいく。

    「なぁ?るしふぁ、おまえもわたしがすきだよな?」
    「え…」
    「わたしは、すきだ。おまえが、むかしからずーーーー


    アダムはスマホを奪い大きく振りかぶって投げた。美しい軌道を描いて壁に激突したスマホは、花火のように粉砕してゆく。

    アダムは乱れた襟を正し、息をついてからスタンディングオーベーションを送った。

    「いや、実によくできたフェイク動画だった。危うく騙される所だったわ」
    「フェイク動画じゃないんだが」
    「今の技術ってすごいんだな〜、ほんとリアルで」
    「まだ嘘だとほざくなら今からエンジェルに確認するか?」

    鈍器で頭を殴るような言葉に、アダムはくらりとめまいを起こす。
    確かに自分はルシファーを好いている、それがどれだけ惨めな事なのかも分かってる。
    しかし、この精神疾患は治らない。


    アダムはぼんやりとああ、死のうと、決意を固めているとルシファーが手を取ってきた。

    「あの時の返事…、お前覚えてないようだからもう一度言うが、私も好きだ」

    アダムは今度こそ自分の耳を疑った。耳だけじゃない、目の前にあるもの全ての存在に疑いを持ち始める。

    ルシファーが手に軽いキスを送り、深紅の瞳がゆっくりとアダムを捉えた。

    「だから、付き合ってやる」









    それから、何もかもが変わった。

    「おはよう。よく、眠れたか?」
    ルシファーが二人分の紅茶を持ちながら、隣に腰をかけアダムの頬にキスを送る。
    「猫舌だろう?アイスにしたが、ホットがいいなら私のと交換しよう」
    どちらがいい?と、朝の掠れた声で聞かれたが、アダムは固まって動かない。
    「どうした、そんな猫のフレーメン反応みたいな顔して」
    「う……」
    「う?」


    「うわぁああああああ!!」

    何が変わったってまずは、このけたたましい悲鳴からアダムの朝は始まる。

    心臓を中心に血液が無理矢理循環させられる感覚に混乱し、アダムはよろけながら立ち上がり距離をとった。

    「そ、それやめろって言ってるだろ!!」
    「なんだ?ただのあいさつだろう?」

    ただの?ただのっつたか?
    「毎朝うるさいぞ、それより今日は何か予定あるのか?」
    「な、なにっ…」
    「夕方、デートに行こう。この前お前が食べたいって言ってたミートパイの店がーー

    ルシファーの声が段々と遠くなる。でぃと。デート。デートだと?いや、無理だろ。今のバグった距離感でデート?
    てか、おわかりいただけたろうか。彼はルシファーじゃない、ルシファーの皮を被った何かだ。怖い、一挙一動の全てが。
    それともこれが…ギャップ?え、解釈の差異でバベルの塔が立つんだが


    「ーーーという訳なんだが、いいか?」
    「……えっ。ああ、………あ?」


    心ここに在らずだったアダムは、適当に返事をしていて、それがデートの合意だと、気付くのに一拍掛かる。
    「ちょ!まてッ、デートってなんだよ!」
    「デートっていうのは………、え、ググるか?」
    「いやデートの意味じゃなくて!!何でデートすんだよ、私とお前が!」
    「は?付き合ってるからだが?」


    自分達の間に転がってる深淵を忘れて、一般的な当然を語るルシファー。
    ーーー天国に帰りたい。
    そう、喧嘩してうるさいと羽を折られた事は一度や二度じゃない。
    しかし、それでよかったんだ。殺伐とした距離感の方が精神的には健全でいられる。
    今の状態だと、動悸はするわ頭がおかしくなりそうだわで、散々だ。

    「行かない、行くわけねーだろ」

    拒絶を見せれば、こんなおままごとすぐにでもやめるだろ。
    しかし、ルシファーは、そうかと優しく微笑んでアダムの側に寄ると

    「なら、買ってきてやる。家でデートしよう」と耳打ちした。








    夕方、コートを羽織るルシファーを呼び止める。

    「ん?お前行かないんじゃないのか?」
    驚くルシファーを横目に、アダムは舌打ちをした。
    私はデートが嫌だって言ったんだ…、普通、分かるだろ。なのに家デートとか…、2つの選択肢にデートしかないなら、まだ人目のある外にいた方がマシだ。

    「私も行く」
    ルシファーが何か勘違いしているのか、ふっと笑って頭を撫でる。
    やめろ、触んな。振り払うが、それも笑われた。
    「………ッしね」
    「上着は?寒いぞ」
    「手に…持ってる」

    玄関扉を開ければ冷たい外気が、晒された肌を撫でる。地獄の冬は天国と違って容赦がない、歩きながらジャケットを羽織った。


    横並びが嫌で、先々と歩いていたが、そういえば店を聞いていない。

    「店はどこだよ」

    苛立ち気味に投げかけるが、ルシファーは大袈裟に笑って、耳元に手をやった。いや、絶対聞こえてんだろ。
    「だからッ…」
    嫌味ったらしく耳元で言ってやろうと、歩み寄ると不意に手を取られる。咄嗟に身体を離すが、トラバサミのように外れない。
    「お、おい!はなせ…!」
    「折角だから、手を繋いで行こう」
    「は、はぁ?!お前ッ、人前だぞ!!」
    「ん?人前じゃなければいいのか?」

    と、唐突にルシファーが指をくるくるっと回し始め、ふいッと軽く振ると、ポリバケツに頭を突っ込んでいた浮浪者が発火しだした。

    一気に舞い上がる炎に、血肉の焦げる嫌な匂いが立ち込め、そして、耳を劈く悲鳴と地面にのたうち回る悪魔。地獄絵図。


    唖然としていると、ボヤ騒ぎに駆けつけたのか角から悪魔が現れ、同時にルシファーがまた指を動かそうとし始めたので、縋る勢いで動きを止めた。
    「お、おまっ……お、お、お」
    常軌を逸脱した奇行に、思考が纏まらず、鳥のような鳴き声を上げてしまうアダムを、ルシファーは心配そうにしていた。
    「どうした?寒いのか?なら、そこの悪魔で暖を取るといい」
    倫欠にもほどがある。
    「違う!!!何してんだ!!」
    「何って、お前が人前は嫌だというから…」
    「……この惨事を私のせいにするのかッ?」
    「惨事?……何を言っているんだ?」

    本当に分からないようで、アダムは意思の疎通を諦める。

    「……ッ。手は繋ぐから…、大人しくしていろ」
    「本当か?」


    嬉しそうに微笑むルシファーに、人前では何もしないと高を括っていた、自分に後悔する。






    「……………ッ」
    脂汗が滲み出た悪魔は、見たところ若者だった。多分、店の中で一番弱い立場の悪魔が、バックヤードで背中を蹴られ、今に至るのだろう。
    ワインを入れる手が震えて、テーブルクロスに盛大なシミを作っている。ルシファーは、それを冷めた目で見つめていた。

    次に吐く言葉をアダムは何となく予想する。
    「最後に、言い残す事はあるか?」
    はぁ、どうしようもないとため息が出た。

    「おい、やめろ。もう死臭なんか嗅ぎたくない」
    血肉が焦げた悪臭が未だ鼻腔にこびりついている。
    駆除の時はマスクをしていたが、プライベートで悪魔が燃えだすなんて、誰が予想できる?

    「しかし、こいつがデートの雰囲気をぶち壊してるんだが」
    いや、さっきからぶち壊してるのお前なんだが。
    さっきも、悪魔の炎に照らされた私の表情を見て「手ぐらいで、照れてるのか?」と言っていたが、その赤さじゃねーだろ、どう考えても。
    しかし、ぶち壊してくれた方が、デートの認識が薄れていい。何処の世界に、死人の出るデートなんてあるだろうか。


    「引きこもってたから気づかなかったけど、お前ってマジで全創造物の中で、一番嫌われてんだな」

    ルシファーが街中を歩くと、道端で寝そべったジャンキーでさえ、逃げ出す始末だった。
    トリップ状態でもそこの判断が出来るぐらには、歩く公害らしい。



    「人気の店だって言ってたっけか?だーれも居ねーけど」
    「さっきまで賑わってたのにな?まぁ、静かでいいじゃないか。乾杯しよう」

    グラスを傾けるルシファーに渋々乾杯をする。響き渡るグラス音に、改めて2人きりだと意識させられて、、、、ゆっくりと、アルコールが喉を通っていく。
    「勝手に赤にしたが、よかったか?」
    鈍い動きに、苦手と取ったのか、気遣いを見せるルシファーに居心地の悪さが増す。
    「べつに」
    「そう、ならいい」
    「………………」
    「………………」

    グラスがないと、視線を何処にやったらいいか分からない。
    沈黙の後付けのようにまた口を付けた。

    「お、今日は飲む日か?」
    「い、いや……」
    「なんだ、またかわいい酔っ払いが現れると思ったのに」
    「かッ………わ……!」
    かわいい?違う、お前はそうやって私を馬鹿にして揶揄いたいだけなんだ。だから私は、、私は、、

    「気持ちわりーんだよ、死ね。てか、酔っ払いの妄言を真に受ける奴、何処探してもお前しかいねーから」

    ずっと昔、主は教えて下さった。火というのは、罪を浄化する力があるのだと。
    だったらさっき燃え上がるべきなのはあの悪魔より、私だろう。
    期待を込めて、グラスから目を離すと、ルシファーが熱のこもった目でアダムを見つめていた。

    「なんだ?酔っ払った自分に嫉妬か?ちゃんとお前もかわいいよ」


    アダムはグラスを一気に煽って、もう一杯と注ぐ。酒に走るなんて、悪手だと分かっていても、ただ目の前の現実から逃げたかった。
    意識が無ければ、悪態は晒さない。そこまで一気に沈めてやる。














    青天が広がっていた、此処はどこだろう。口笛を鳴らしながら風が横切っていく。
    ふと、視線を下げれば、目の前に青年がいた。
    青年は地面に頭を擦り付けて、自分の身を守るように丸くなっている。
    周りの地面が抉ていて、何度も引っ掻いたのか、爪が何本か、土に紛れていた。

    アダムは青年と対峙する事に急速な恐怖が襲う、無意識に一歩、また一歩と後退した。
    この青年をアダムは痛いほどよく知っている。ジャリ…と砂が擦れる音に、青年はピクリと身体を揺らす、ゆっくり顔を上げると涙の成分で溶けてしまったような顔と目があった。
    「ルシファー…?」
    青年は涙で、羽のある者は全てルシファーに見える様だった。
    「ルシファー…帰ってきてくれたの?」
    羊膜で包まれた仔羊が、生きる為に立ち上がる様ように、弱々しく、しかし意志のある足取りだった。
    青年は、強くアダムを抱きしめて、首元に顔をうずくめる。背中に悪寒が走った。

    「神様にお祈りをしたんだ、幸せも、永遠も、もう何も要らないから、ルシファーのそばにいたいって」


    掻きむしるように、青年はアダムを抱きしめて、
    そんな青年を、アダムはじっと見つめていた。




    あぁ、気持ち悪いーーーーー


    惨めで、

    愚かで、

    醜悪で、


    生きてるのが不思議なくらい。



    気づけばアダムはその青年の首を絞めていた。死んだかどうかはどうでも良かった、ただもう動かないでほしい、それだけだった。
















    「……………………ッ!」
    溺れる人間が空気を必死に求めるように、アダムは意識から浮上する。
    「はっ……はっ……!」
    飛び上がって、悪夢から逃げるようにベットから落ちた。
    「どうしたんだ?」
    朝食の準備をしていたルシファーが慌てた様子で駆けつけて、心配そうにアダムの身体に触れる。そこから、一気に恐怖が膨れ上がった。

    「触んな!!!!」

    弾き、ルシファーから距離をとる。だいじょうふ、私は大丈夫だ。呼吸を整え、周りを見る。時計、窓、照明、クローゼット、現実を少しずつ取り戻していく。大丈夫、あれは夢だ。





    「落ち着いたか…?」


    ルシファーが、ゆっくり置くように言葉を口にした
    「昨日、沢山飲んだから、悪い夢でも見てしまったんだな、よくある事だ。落ち着いたら、下に降りておいで」





    は、ははは…。何が下に降りておいでだ、うるさい。うるせぇんだよ。
    お前も、甘んじて受け入れてる私も、全部が気持ち悪い。
    優しくされて慌てる私は、さぞ面白かったろ?でももう充分だよな、こんな、ぐだらないごっこ遊びは、お互い、さっさと終わらせよう。
    私の頭が本当におかしくなる前に。

    「こんなんだったら付き合う前の方が良かった!!」


    だから、別れる。そう言葉にしようと、口を開いた時、ルシファーが優しく微笑んでこう言った

    「なら、お前を今からぶち犯す。泣いて叫んでもやめない」


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