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    soww_c

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    soww_c

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    ループ&ループのつづきというか後日談?みたいな小話

    ウリエル社畜奮闘記「お前の後輩なんだから、お前が面倒を見てやれ」
    とんだジャイアニズムだと思う。だったらミカエル、お前の後輩でもあるじゃねーか。
    「俺は生憎、どっかのクソ上司が仕事サボってるせいで忙しいんだ、他を当たってくれ」
    後輩と呼ばれた若い青年は、俺たちの掛け合いを見て、自身が面倒ごとだと勘違いしてしまったのか、申し訳無さそうに肩を萎縮させた。
    思わず舌を打つ。
    「まぁいい、今からちょと時間空くからな…館内ぐらいは案内してやるよ」
    「さっすが、ウリエル。やっさし〜」
    パチンと両手を鳴らして、指を差し、後輩に向かって行けと促すミカエルに冷ややかな目線を送る。
    「後で、決定書にサインしとけよ。お前で止まってんだから」
    「えー、でも私、あの案には反対なんだが」

    は?あれだけ話が進んでんのに、今更反対だ?ダメだ、殺意が湧いてくる。
    このままじゃ後輩の前で、酷い罵倒を口走ってしまいそうだ。
    「その話はまた後でするわ、じゃ行こうか」
    強めにオフィスの扉を閉めると、後輩が後ろで肩をビクリとさせる
    「あー、ごめん。ちょっと殺意が…じゃなくて力加減間違えた。えっと…アダムだったよな?最初の人間の」
    「はい…そうです」
    「俺はウリエル、組織の運営や策定を任されている。まぁ総合窓口だとも思ってくれていい、なんでも聞いてくれ」
    「ありがとうございます…」
    「お前はどこに配属なんだ?」
    「防衛しょ…の…」
    「あぁ!セラんとこの!大変な所につかされたな」

    アダムの第一印象としては声が小さい奴だった。初めての事だらけで緊張しているのもそうだし、原罪の事もあるのか、後ろめたさが言動に出ている。

    「ここが第一会議室で、こっちが第二だ、で続いてこっちから、第三第四…」
    「いっぱいですね…」
    「だろう?これだけ会議室があっても話が全然進まないんだ。で、どっかの馬鹿が最終決定の時に、私は反対だとかいい出すんだぜ?でもな、アダム、そんな時でも天使は冷静でいなくちゃならねーんだ。飛び蹴りしてやりてぇって思ってもだ」
    新人の時にまず学ばなきゃいけないのは、それだと言っても過言じゃない。
    「ウリエル様は…、普通なんですね」
    俯いて、ぼそっと呟いたアダムの言葉が一瞬汲み取れなかった。
    普通……?あぁ、そういう事か…。みんなはアダムに対して普通じゃないのだろう。
    それもそうか、アダムは原罪を犯した人間だ、よく思ってない天使はごまんと居る。
    表立っては歓迎しても、偏見や差別的なものは動作の節々に出るものだ。
    「まぁな、主が決めた事だ。アダムを天使に選んだのなら、お前に疑いなんて持たねーよ」


    初めて人間が天使になるという事は、俺達天使は、初めて人間とまともに話しているという事になる。
    人間と仲良くする天使はルシファー以外に居ないからだ。
    主からの命令があって地上に降りる事はあっても、コミュニケーションなど取らない。人間に混乱を招かないために。
    だから、俺はアダムが何故そんな顔をするのか分からなかった。天使にはいない、こんな表情する奴。
    慰めたつもりだった、主が許してくださって天上したのだから、そんな暗くなるなと。


    ーーーあれは永遠に生きられるようなものではない

    アダムの表情に、堕天する前、いつかのルシファーの言葉が無意識に呼び起こされる。
    人間に、執着するのはやめろと叱責した時の事だ。なんで、やめねぇんだと、

    「あれは永遠に生きられるようなものではない。先に精神が壊れてしまうだろう。でも、私は人間の、そんな儚さや弱さを愛してる、だからやめない」




    ------------------



    ------------




    --------









    「だからやめない⭐︎じゃねぇぇんだよ!!」


    飛び起きて、ベタベタとまとわりつく毛布を振り払った。

    悪夢からの混乱の中で、周りを見渡すと、憎たらしい蛇や林檎が描かれた家具が目に入る。
    おい、寝ても覚めても悪夢じゃねーか。

    「こっちの悪夢は夢じゃねーのかよ…!」
    「ゆ、ゆめ?」
    驚いたアダムが、食べていたクッキーを手から滑り落とし、3つほどに割れる。

    「久しぶりによく寝たからか、変な夢見た…。過労死の前兆だ…」
    「こ、声大きいって…、あ、ちが…大きいです」
    「敬語も忘れるぐらい?ハムスターなんだ、しれてるだろ」
    「いえ…、ライオンキングかと思いました」
    ライオンキング?あぁ、あれ、いいよなぁ…。ハクナ・マタタとかよく出勤しながら歌ったてたわ…、あれ歌うと自分が今から出社だなんて嘘みたいに思えてくるんだよな。
    「そういえば、あのハイエナミカエルに似てね?」
    「な、なんの話ですか?」
    「え、ライオンキングだろ?お前がふったんじゃん」
    「ライオンキングにミカエル様を結びつけるのは、どうかと…。頭がミカエル様でいっぱいの証拠ですよ」
    「うわぁ〜、今の言葉屈辱だわ。俺がハムスターである事以上に屈辱な事ってあるんだ」
    新たな発見だな。
    立ち上がり、改めて周りを見渡す。時計は19時を指しておりもう直ぐルシファーが、会議から帰ってくる事を意味していた。
    「地獄の会議って短そうだな、意見とかルシファーの独断と偏見で決まっていくんだろ?ごちゃごちゃいう奴いねーじゃん」
    「そーでもないみたいですよ、ごちゃごちゃらしいです」
    「ふーん、どこの世界でも会議ってつまんなくて長いもんなんだな」


    なら、少しゆっくりアダムと話せるかもしれない。今日が、アダムが最初にループを使った日付と重なる日、話すなら今しかない。
    「なぁ、アダムは……」
    周りに変な奴がいると身につくスキルだと思うが、昔から俺の嫌な予感ってのは、嫌に当たっていた。
    「本当は2週目なんだろ」
    最初に抱いた疑惑、

    言ってしまってから、徐々に後悔が浮かび上がってくる。
    ーーえ、でもお前って察し能力高くても回避能力終わってるだろ。

    2ヶ月前のクリスマスの夜。ミカエルはパーティーハットを被って、チキンを頬張りながらそう言った。
    違う、お前の押し付ける能力と傲慢さと軽薄さと、etcが俺を聖なる夜にまで残業させたんだ。

    上司は締めのケーキまで手を伸ばして、それを見届ける残業漬けの俺。
    体に巻き付いた糸引き、
    クラッカーって馬鹿みたいにカラフルだ
    その全てが皮肉じみいて、ミカエルに「地獄に堕ちろ」と吐き捨てたのも、記憶に新しい。

    そうだよな、アダムの事だってほっとけばいいんだ、2週目だって気づいても、知らないふりをしたらいい。
    こんな夜勤明けのか弱い俺を騙して、ループだのなんだの。んで、挙げ句の果てに、ルシファーと一緒にいたいだけ?
    「今回のループで霊力の全てを消費して、お前は死ぬんだぜ?計算出来なかったか?」

    口を衝いて出た苛立ち混じりの言葉に、アダムはなんの反応も見せなかった。ただ、テーブルで割れたクッキーを摘んで食べている。
    「計算できなかったんだよな?そうだよな?自殺は大罪だもんな、アダム」
    「…………そうですね」
    天使が死ぬ所を、何度か見た事がある。そいつらは決まって、人間から天上した天使で、決まって自死だった。
    意味が分からない。ここは天国だ、神のご加護、不自由ない暮らし、何が不満なのか。

    ーーーあれは永遠に生きられるようなものではない

    あぁ、またくそうぜぇ蛇の戯言が聞こえてくる。


    「…………、計算できないというか……」

    アダムが切り出した言葉はカメレオンの歩く動きのように、ゆっくりと行ったり来たりを繰り返す。
    そしてそれらしい言葉を見つけられなかったのか、自虐的な微笑を浮かべて
    「なにも、考えられないだけです」と返した。
    そこには、前のような誤魔化しはない、ただ力不足のように足下に言葉が転がってくる。考えられない?なんだそれ?

    ブチっと音が鳴る。比喩でもない。
    「何も考えられない?じゃあ、今回は俺が代償を払ってやるよ」
    「えっ……」
    「徹夜明けとはいえ、後輩の昏睡に気づかなかった俺の落ち度だ。お前の50%なんて、俺にとっては何の支障もない」
    「や、やめてください!そんなの!私の勝手な行動で…!ウリエル様が尻拭いなど!!」
    「尻拭い?……違う、そんな事が問題じゃないだろ?」

    何が考えられないだ、何がエクスターミネーションだ、何がルシファーと一緒にいたいだけだ。

    今回の事ではっきり分かったよ。
    お前は他人や自分を欺いてないと、相手に執着出来ない、死ぬ気でいないと素直にもなれねぇ臆病者なんだってな

    「救われるのが怖いか…?アダム?」



    ルシファーが齎した、孤独や悪意や死。それに傾倒していく人間。
    あれは永遠に生きられるようなものではない。だと?
    儚い?弱い?
    そうか、ルシファーがそれを愛して一緒に堕ちて行くのというのなら、俺は


    「俺はお前を」























    あれだけ働いたらいくら天使といえど、いつか倒れると思っていた。
    「ウリエル、ウリエル!大丈夫か!」
    ウリエルはデスクの側で何かの書類を握りしめながら倒れていた。余りにも酷い報告書に卒倒してしまったのかと覗き込むが、思いもよらない書類だ
    ループの発動許可証…?一体だれが…
    「ん……」

    ウリエルが眉間に皺を寄せ、ゆっくりと目をあける。
    「お、おい」
    ゆらゆらと蝶のように視線を彷徨わせて、花に着地するように、捕らえた。
    「ガブリエル?」
    「そうだ、分かるか?」
    がはっと起き上がって今度は書類を穴が開くほど、見つめてわなわなと震え出した。
    「アダムが死んだ…?自死……?俺が代償を払ったのに……自死?あの後死んだのか…?なんで…」
    どうやら記憶障害を起こしているらしい。アダムは一年まえにとうに殉職している。
    「お前…働き過ぎだ…、とりあえず病院に行こう…天国には余りないが、隣町の田舎に小さな病院があるって噂を…」
    「ぶっ殺してやる…」
    「へっ?」
    書類に皺ひとつ付けないウリエルが、ぐしゃっと鷲掴み、天使にあるまじき発言を漏らす。
    本当に働きすぎている、カウンセリングも探さねば
    「おい、ガブリエル。この前のギャンブルの付けがまだだったよな?」
    「はっ?あれはチャラだってお前が言ったんだろ」
    「チャラもクソもあるかっ、いま精算しろ!」
    とんだジャイアニズムだと思う、あの上司にしてこの部下ありといったどころか。

    「精算ってなんだよ?金か?」
    「金なんかいらねぇよ、しこたま持ってる」
    「じゃあ、なんだよ」
    「お前、ループをつかえ。代償は俺が払うから」









    主よ、お助けください。とうとう同僚は働きすぎておかしくなってしまったようです。

    ウリエルの話によれば、発動者はループを使えないからと、俺は駆り出され、何処の場所で何処の時代だと聞くと、なんとそこは地獄で、ルシファーの城だとか。
    そんな所に何の用があるんだ、俺は行きたくない、そう告げると、なんと彼は胸ぐらを掴み「ゲヘナに通じるまで墓穴を掘らされてぇーの」と

    彼は天使じゃない。ヤクザです。ヤクザに賭けなんてするもんじゃない。



    「無駄に広い城だな」

    ウリエルはルシファーの城に降り立ってから、扉を開けては閉め開けては閉めを繰り返している。
    「な、なぁ。気が狂っているのはもう充分に伝わったから、やめてくれ。ルシファーに見つかるぞ」

    俺の言葉をさっきから無視を決め込み一心不乱に、何かを探している。まさか、お前…
    そして、一つの扉を開けて、立ち止まった。

    「アダム、お前が先にループを使っているのだな?」


    ルシファーを前に喋るアヒル、そんな奇妙な光景が扉の隙間から広がっていた。
    なんだこれ、俺も頭がおかしくなりはじめてる?

    「そして、アダム、お前は全て費やしたんじゃないか?だから、死んだんだろう?」
    「はぁ?アダムは自死だって言っただろう、耄碌したか?」
    「自死でも、他殺でも、なんでもいいんだ、ただ死ぬ運命から免れなくなるだけで」
    「そうなのかアダム」
    「アダムに記憶などない、これはお前のループだ」

    ルシファーはアヒルの言葉にただ呆然としていて、天井を見つめている。少しの逡巡を見せ
    「何故そんな事が分かる?」
    ルシファーの目は、ただ無機質な深淵が広がっていた。
    「お前が今回のように、手放せば、また戻ってくると思うよ、あの子は君が好きだからね」
    その言葉にルシファーは嫌にゆっくりと口角をあげ、ぐつぐつと煮えたぎるような笑い声をあげた。
    そして椅子が倒れる程のけぞって、天を暫く仰いだ後
    「アダムが私を好きなわけ無い」

    と掠れた、しかし鮮明な声で言った。
    「アダムは昔から私が嫌いなんだ、そんな事する訳がない」

    「そう?」
    アヒルは楽しそうに、尻尾を振り。軽いステップを踏む。

    「あぁ、確信して言える。アダムは私が好きじゃない。私はアダムから何もかも奪ったんだ、それで好きだったらーーー


    徐々に前のめりだった。ルシファーが話し始めてから。
    服を掴んでいたが、闘犬が鎖を引っ張るような勢いだった。
    ウリエル落ち着け、何か分からないが、落ち着け。どーどーどー!
    そうやって背中を摩るも、




    ーーーーただのストックホルムだろう」



    ブチンと縄が切れて、勢いよくウリエルが飛び出して行った。
    そして大きな羽を羽ばたかせて飛び上がる。


    ミカエルの奴ッ、飛び蹴りかましてぇ〜。でも俺は大人だからそんな事しねぇけど。

    いつかの酒場の情景が走馬灯のように流れ、俺は今日死ぬんだと覚悟した。


    ルシファーの顔面にウリエル足がめり込んでいく。
    「イイね!ウリエル!!」
    アヒルも一緒に羽ばたいた。俺は絶望し、平穏な日常と共にルシファーは吹き飛んていった。
    軟体生物のように転がっていくルシファーを他所に、ウリエルはアダムに足を向ける

    「顔をあげろ」
    息を付いて、俯いたアダムの頭を優しくなでた。
    「あんな奴の為に泣くな、アダム」
    俯いていて、泣いている様子は見てとれないが微かに身体を震わせている。


    「俺は長ったらしい会議の次に、恋愛ドラマが嫌いなんだ、さっさとくっつきゃいいのにだらだらだらだら…、だから」

    パチン、と指を鳴らすと馬鹿でかい弓が上から降ってくる。ウリエルはそれを、片手で軽くキャッチした。

    「恋のキューピッドになってやろうと思ってな。これで、ルシファーの心臓をぶち抜きにきた」


    ウリエルは察しはいいが回避能力が終わってる、ミカエルが言ってた事はどうやら本当らしい。
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