「あたしのことは"ママ"って呼んで」
女は言った。
「そういう気分なんです?」
実家という設定の寿司屋に立ち寄ると、少し茶色がかった長い髪を後ろで束ねた女が出迎えてきた。
「この前までの人はどうしたんですか」
「え?死んだわよ。たぶん」
天気の話でもするように軽く話す様子からして、さして興味もないらしい。
気付けばコロコロ変わる"母"や"父"に、"息子"の自分は毎回その日の気分でおもちゃにされている。いつでもそうだった。
でもそれはきっとその場かぎりの"母"や"父"も同じで、誰かのおもちゃにされている。
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