ビー玉、夏の回顧「この季節は…ちょっと、感傷的になっちゃうね」
「…だな」
ガラスをばら撒いたような波間に翡翠色が踊る。出したばかりの輝くラムネ瓶の冷たさが愛おしい。蝉の声が耳をつんざく。夏らしい空の下、僕たちは座っていた。艦的には碇泊の方が正しいだろうか。
艦種も所属も違う僕らを舫うのはクロスロード作戦───ちょうどこの時期の実験。だからこうしているわけなのだが。
「なあ、25日はちょうど新月だとよ。…28日じゃなくて、良かったな」
「そっか…うん、きっと僕の中の新月もそう云うと思う。でも25日か」
「Baker実験の当日ってワケだ。今年もまたあの日を…はあ」
サラトガの沈没日は7月25日───実験当日。重くなる気分もわかる、同日では無いがあの炎に焼かれ、渚に呑まれ環礁に沈んだ身として。
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