ナイチンゲールの独白 天界の平和と平穏のため、彼女は造られた。
歌い清め、皆の心に安らぎを与えるために造られた。
この世から争いを無くすこと、それが神の啓示である。
歌うことこそ神の望み、民の望み。望みを叶える役目を誇りに思っていた。
彼女は歌った。小さな喧嘩であっても争いは争いであると、彼等の心を宥めた。
──互いに譲歩し、相手の意思を尊重するようになる。
彼女は歌った。他者を傷付けること、他者に傷付けられることを不安に思う者達の安寧を願った。
──安心して眠ることができると彼等は喜び、また歌を求めるようになる。
彼女は歌った。皆が競争や、それに伴う向上を止めても歌った。
──全てが停滞する。
振り返れば、起き上がる気力もなく涎や排泄物を垂れ流し怠惰に横たわる生き物が折り重なっている。
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