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    H8ZfMDYUZb47549

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    H8ZfMDYUZb47549

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    パラ高の考察を良い感じに纏めたやつです こんな展開あったら死ぬので先手を打ちました

    きっと、ずっと……理解が、できない。こいつが言っていることはかなりの頻度で理解ができないが、そういう「訳が分からない」ではなく、脳がそれの意味を咀嚼することを拒んでいた。頭が真っ白になって、何も考えられない。それなのに、そいつは。……ただただ、俺を見つめて笑っていた。
    「ひかる?どうしたの?」
    どうしたの?じゃねぇよ。なんでそんないつも通りなんだよ。そう言いたかったけど、喉から声が出ていかなかった。まるで首を絞められているかのように苦しくて、変な掠れた音だけが耳に入る。
    「……は、?」
    「さっき、言った通りだよ。俺は消えないといけないんだ。……いや、俺の身体ってサ終したパソコンみたいでさ!ウイルスにはとことん弱いし、身体が持たなくて!」
    ……なんだよ。別にお前が人間だろうと人間じゃなくても別にどっちでも良いんだよ。黒井が黒井であることには変わりないから。なのにそれが原因でお前が消えるなんて、話が変わってくるだろ。それだったらお前が人間だったら良かったのに、とか思っちゃうだろ。俺は、別にお前が隣にいるだけで、それで……良かったのに。
    ……どうせなら、消えることを嫌がって欲しかった。なんでそんなに平然とした顔をしてるんだよ。怖いよ。何考えてんのか分かんないよ。理解できないものがこの世で1番怖いんだよ。
    「……あっそうだ、ひかる」
    「……………な、に……」
    「ひかるは、ひかるだけは、幸せでいてくれるよね」
    「……くろ、い、が……いな、っ……けりゃ、むり、だよ……」
    「えっ、嬉し〜、ひかるも俺のこと大好きじゃん!」
    「……そう、だよ。だから、」
    「……あっ、ごめん!……時間、だ」
    「……なぁ、ちょ、……まっ、い、かな……」
    「……ねぇ、ひ⬛︎る、大好⬛︎⬛︎よ」
    「…………ずるいよ〜……」
    ……ずるい。やっぱり黒井はずるい。告白するなら、体育館裏とか、2人きりのブランコの上とか、河川敷とか、あるだろ。
    ー目の前にノイズが走る。ノイズ混じりの黒井の声が薄くなっていく。そんなこと現実じゃ有り得ないと思うのに、実際に黒井の身体が、ノイズと、黒いモヤに包まれて消えていく。涙が溢れそうになるけどあまりの現実感のなさに、涙も引っ込んでしまう。
    「……黒井」
    ……消える前に告白すんなよ。告白の返事が聞けない告白なんてなんの意味があるんだよ。お前に返事ができないまま、俺だけこの気持ちを覚えててさ。勝手に「大好き」とか言って、押し付けんなよ。どうせ勝手に「俺も黒井のこと好きだけど」って言われたとか妄想してんだろ。勝ち逃げかよ。やっぱり、お前はずるい。
    ……こんなの、まるで……呪いじゃないか。
    「……嘘つき」
    ずっと、元気で俺のそばにいてね、ってのはなんだったんだよ。お前から約束しといて、破るなんて、本当に酷い。ああ、それとも。「ひかるが元気でいることが約束だよ?俺の状態は指定されてないし」とか、言うつもりかよ。腹立つ。
    「は、はっ……」
    ……ノイズが消える。もやが晴れる。そこには、何もなくて。まるで、最初から。黒井正義という存在が、いなかったかのように。世界は、静かだった。
    ……目の前には、黒井が消えてった古い一台のパソコン。立ち入り禁止の旧コンピュータールーム。電源はついたけど。特に、その中には、何もなかった。痕跡みたいなものも、何も。
    涙が溢れる。ぽつりぽつりと床を濡らしていく。急に現実に引き戻されて、決壊したかのように、止まらない涙を袖で乱暴に拭う。あーあ、今日はもう早退しちゃうか。だって黒井がいない学校なんて楽しくないし。でも、こんなぐちゃぐちゃの顔で帰ったら、母さんも父さんも、姉ちゃんも心配するか。
    じゃあわゲーセンでも寄るか。バイトも休みだし。……いや、黒井がいないのにゲーセン行っても楽しくないな。じゃ、どうしたら良いんだよ。どうしろって言うんだよ。
    「……黒井」
    「おーい、何やってるんだ……って、光か。どうした?」
    「……先生」
    「なんだよ、どうして泣いてるんだ」
    「……先生って、生命を与えられますよね。無機物に」
    「まぁ、できるけどな」
    「……じゃあ、復活させてくださいよ……っ!!黒井を。アイツをっ……!!」
    そう、気付いた時には醍醐先生のシャツを掴んでいて。縋り付くように。髪が乱れていて、顔は涙でぐちゃぐちゃで、目も赤くて。きっと今の俺は物凄く酷い顔をしているに違いない。
    「……あのな、光。死んだ奴を蘇生させる為に能力を使うのは禁忌なんだぞ」
    「……っ、」
    「輪廻だよ。この世はなるようにしかならないんだ。だから諦めろ」
    「……じゃあ、なんですか……?醍醐先生は我慢できるんですか、自分の大切な人が死んでも……?」
    「我慢するしかないだろ。受け入れないとお前が辛いだけだ」
    「……っ、」
    先生の服から手を離す。……もう、どうしようもないのだ。どうしようも、なくなってしまったのだ。
    「俺には光の話を聞いてやることくらいしかできないよ。……だけど、間違えんなよ、光。一歩間違えたらお前の方がおかしくなってしまうんだからな」
    「……ごめん、なさい」
    「……今日は早く帰れ、光。そして早く寝ろ。辛かったら明日来なくて良いから。色々な連絡は俺からしとく」
    「……嫌です。ここにいさせてください」
    「駄目だ。お前の精神に悪いからな」
    「……じゃあ、このパソコンを持ち帰らせてくださいよ……」
    「駄目に決まってるだろ。ほら、早く行け」
    「……そんぐらい、良いだろ……っ……!!約束、したんですよ!!ずっと、そばにい、」
    「……早く帰れ。実力行使に出るぞ。」
    この人が、本気で怒ってるところを初めて見た。いつも温厚で、適当な人だったけど。こんな風に怒るんだ。知らなかった。……ああ、勝てないな。俺の、負けだ。
    「………………はい」
    ドアを開けて、先生にお辞儀をして、廊下に出る。俯いて、何も見ないようにしながら、下駄箱の方向に向かってー
    「……あれっ、ぴかるんじゃね?」
    「やほー、ぴかるん。……どしたん?もしかして泣いてる?」
    「……見里……?平……?」
    「え、どしたん?ウチらでよければ話聞くし」
    いつもより柔らかくて、優しい2人の声。だけど、俺の心には届かない。……この2人に、いや、誰にも心配をかけたくない。これは俺の問題なんだ。だから、他人に背負わせる訳にはいかない。俺の中だけで整理をつけないと。
    「……いや、大丈夫……だから」
    「ぴかるん、嘘ついてるっしょ」
    「……嘘、じゃ……」
    「このままじゃぴかるんが壊れる未来、見えたから。大丈夫じゃないって、ぴかるん。そういうの、1人で背負わん方がええよ」
    「無理して話さなくても良いけどさ〜……でも『大丈夫』って嘘つくのはダメなんよ。うちらの友達のぴかるんを、ぴかるんが傷付けないでもろて」
    「……でも、」
    「でも、禁止にせん?それすると自己肯定感がみるみる下がって、詰んじゃうんよ、人生。あ、良いこと思い付いたかもしれん。でも、って言うたびぴかるんの自撮りをうちらのLINEに送ってもらうことにするってことで〜」
    「……なんで、だよ。絶対……嫌、だわ……」
    「……で、どしたん?」
    そこまで言われても、この感情を、ぐちゃぐちゃになって自分にも解けなくなった想いを、2人に打ち明けていいものなんだろうか。という不安が頭をよぎる。……黒井が消えた。だなんて、信じてもらえるとは思えない。……ああ、頭の中がぐちゃぐちゃになってきた。何も考えられなくなると、また、涙が、溢れて。
    「……くろ、い……」
    「……ん〜?……くろい?」
    「……え〜と?よく分かったねぴかるん。この前ちょっとパラレルの海で遊びすぎてさ〜、日焼け気味なんようちら」
    「……は?」
    「……え、ノリ間違った?」
    「説ある。ごめんね、ぴかるん」
    「……マサだよ、マサ。黒井正義、っていう……」












    「……ごめん、ぴかるん。うち、その人知らないわ」












    一瞬、脳がまたフリーズしたような感覚に襲われた。目の前が、真っ白になる。そんな、そんなわけないだろ。だって、今日の朝、お前ら黒井とだべってたじゃん。なのになんで、あいつが消えた後急に記憶が消えるんだよ。おかしいだろ。そんなの、そんなの。認められない。認めない。認めるわけにはいかない。認めたら、いけない。
    「……えっ、……は……?嘘、つくなよ……っ!!」
    「こんなことで嘘はつかんよ、ぴかるん」
    「……そそ。誰なん?その黒井正義って」
    「……俺の、俺の……っ!!大事な……人、だよ!!それだけで、良かったのに……!!」
    「……うーん。うちらはその人知らんけどね」
    「でも、ぴかるん、そんな嘘つかんもんね」
    「……お前らとも、友達、だろ。色々しただろ、夏祭りとか、世界救ったりとか、色々……あれ、これって、本当にあったことだっけ……?」
    脳裏によぎる、黒井との思い出。それら全部が、なんの変哲もない「普通」のものだ。別に、特別なことはほとんど何もしてない。それなのに。なんで、こんな。こんなに、苦しいんだ。
    「ぴかるん、『日常』が1番大事なんよ。だってさ、特別なことってのは多くて月に一回あったら良い方っしょ。殆どは普通の、ありきたりの日常」
    「じゃあ、日常が壊れたんなら、それが1番苦しいに決まってね?1番大きいものが崩れるんだからさ。……だから、ぴかるんが言ってること、うちらは信じるよ」
    「……未来見て俺の心読むのやめろよ」
    「あ、ごめんねぴかるん。でも言っとかなきゃいけないって思ったからさ」
    俺の中で、1番大きい存在。いつのまにか俺の心の中心にずかずかと入り込んで、そこに住み着いて、全然離れてくれない。別に何も迷惑じゃなかったし、嬉しかったから。今でも中心には黒井がいて、黒井に、俺は……吸い寄せられて、きっと永遠に、離れることができないんだ。
    「……なぁ、見里見てくれよ。俺の未来とか、黒井の未来とか」
    「ん〜ごめん、流石に『いない人』の未来は見えん、かな〜……」
    「じゃあ、平。黒井が生きてる平行世界は?」
    「ん〜……無理っぽい……そもそも、うちはマサのこと知らんから。『そもそも存在を認識できない』平行世界には飛べないんよ」
    「……ごめん」
    「謝んなくてもええよ〜、気持ちは分かるしね」
    そうか、どう頑張っても無理なのか。やっぱり。この世界全てから、黒井という存在が消えてしまったのか。なら、なんで。なんで俺だけは覚えてるんだよ。こんなの、こんなの。本格的に呪いみたいじゃないか。1人で苦しむしかないのか。
    「……え、てかさ。ぴかるんがそこまで大好きなマサってどんな人なん?気になる〜」
    「……気になるんだ……」
    「え〜?気になるっしょ。だってぴかるんが乙女ゲーの攻略対象だったとして、うちだったら攻略できる気がせんもん」
    「……俺を攻略したい奴いるわけなくね……?」
    「え、ぴかるん、もしかしたらマサってめちゃイケメンだったりする?」
    「……確かに顔は整ってるけど。黒井は、馬鹿でお調子者でうるさくて……」
    「え、そこ罵倒するん?」
    「……明るくて、優しくて……っ、ずっと俺のそばにいてくれてた」
    「え、良すぎん?えもいしチルい」
    「それな?結局のところ、ずっとそばにいてくれる人が理想よね」
    「……そう、だな」
    なんか、いつも通りだ。黒井がいなくなったところで、見里も平もいつも通りで。世界は、当たり前のように回ってる。でも、いつも通り日常を過ごすのが俺にとっての幸せだったはずで。……ほんの少しだけ、救われた気が、するような。
    「……ねぇぴかるん」
    「何、」
    「シュレディンガーの猫って、こういうことなのかもね」
    「……?」
    「うちらはマサのこと知らんけどさ、ぴかるんだけは覚えてるやん。うちらにとってはマサが存在せんけどさ、ぴかるんにとっては存在してるんよ。つまり、ぴかるんにとってマサが存在してたのは事実っしょ?なら、それでええやん」
    「あ〜ね?きっとマサもぴかるんに覚えてもらえてたら幸せやし」
    「……そうなのかな」
    「そこ自信持たないとマサも喜ばんよ、きっと」
    「ぴかるんはさ、もっと自分を信じてあげてね。そうじゃないと、きっと、悲しむ人がいるから」
    「みんなの為に自分を愛してあげてね、ぴかるん」
    「……方法がわかんね〜……」
    「ぴかるん、かわちぃし光も綺麗でチルいし、優しいしマジ最強、バイブスあげてけ〜」
    「結局この世、全部バイブスの問題だかんね〜」
    「……なにそれ?」
    「あ、ごめん。そろそろ、うちらバイトだからさ」
    「じゃね〜ぴかるん、お大事に〜」
    「……じゃあな〜……」
    そそくさと、入り口のドアから出ていくギャルの背中を見送る。……黒井〜帰るぞ〜、と言いかけて、隣に黒井がいないことを思い出した。……自分の下駄箱から乱暴に外靴を取り出して、今履いてた靴を力任せにぶち込む。ガタン!と音がしたけど、そんなことは知ったこっちゃない。
    ……1人きりの通学路を歩く。公園で小学生たちがヒーローごっこをしてる。付き合いたてのカップルが隣同士で歩いてる。速くなった足で爆速で帰宅する同級生がいる。
    空はオレンジと、藍色のグラデーション。まるで憂鬱を映したみたいな色だった。夕方と、夜の狭間。
    『なぁなぁひかる!ゲーセン行こうぜ!』
    『あ、そういえば今日ヤンジャンの発売日じゃん!買って帰ろ!』
    『今日こってり先生に怒られちゃってさ〜……一緒にラーメン食べに行こうよ、ひかる〜……』
    そんな声が、隣から聞こえそうで。でも、右を向いてもいつもの河川敷しか見えない。
    「……黒井、なぁ」
    今日も、地球は回ってるし、相変わらず世界は変な奴がいっぱいだった。そんな日常が続いてるのに、俺の中でだけ、日常が失われたみたいだった。
    それもこれも、全部お前が隣にいてくれないせいだよ。どうしてくれんの?
    「……忘れられないものを思い出と呼んで、それは美しかったり悲しかったり……そしてどこか、愛おしい」
    ……涙は、いつの間にか枯れていた。なんとか、きっと。家族を誤魔化せるくらいにはなっただろう。
    「ただいまー……」
    「おかえり、ひかる。もうそろそろ夜ご飯できるって〜」
    「……何?からあげ?」
    「え、違うけど」
    「……なんでもない、忘れて」
    姉ちゃんの不思議そうな視線を感じながら2階にある、自分の部屋に上がる。ベッドの上に仰向けになって、いつもの癖でスマホの画面をつける。開くのは、古のインターネットのウェブ。なんか、ないかな。……なんにもないか。
    「……ん?なんだこれ」
    閲覧数が極端に少ない個人サイト。そこには、少しレトロな作風の、個人制作アニメがあった。
    『これは、私の大事な人を弔う為のアニメです』
    唯一残されていたコメントに、そう書かれてた。……こんなのが、あったんだな。……あ、そうだ。
    「……待ってろよ、黒井」

    ー次の日。誰もいないコンピュータールーム。醍醐先生は、今は職員会議で来れないはずだ。
    「……そうだ、この手があったんだ」
    キーボードを叩く。俺はパソコンには強いから。こういうことなら、すぐにできる。サイトを立ち上げて、色々なリンクを埋め込んで。……最後は、このアニメの名前をつけたら完成だよな。ああ、そうだ。
    俺にとって、大事なのは日常なんだ。だから、俺にとっての日常をタイトルにすれば良い。じゃあ、これしかないだろ。
























    「私立パラの丸高校」
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