伯爵と牧師ルートに進んだシエシエの成長if 夏の終わりの夜風が教会の回廊を静かに渡っていき、未だに着慣れたとは言い難いローブとストールの裾を揺らした。新月なのか月は見えず、ちらほらと瞬き始めた星々は見る間に輝度をあげて夕闇に沈みゆく空を彩っている。
本日の夕礼拝もつつがなく終わり、人もはけた日曜夜の教会は敷地全体が静謐な空気に満ちていた。聖堂の扉を開け、空気の乱れを最小限に抑えるように音を立てずゆっくりと進めば、祭壇から向かって右手の中程、もはや定位置となりつつあるそこに兄の後ろ頭が見える。夕礼拝に殊勝な面持ちで大人しく参加していたそのままの姿勢で居残っていた兄は、こちらの気配には気付いているだろうに振り返る様子もない。
「領主のとこの長男が最近よく礼拝に顔を見せるって話題になってるぞ」
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