呼ばれて振り返った時、髪はもうほどけていた。
毛先をまとめただけでは、いつの間にかばらけてしまう。こうしてやり直すのも、中々どうして手間がかかる。そんな色が顔に出ていたのか、カマエルがのぞき込んできた。
「……そうだ、いい方法を知ってますよ」
背中に回った彼は、両手でなにかをやっている。分けた髪の束を、紐を編むようにまとめているらしい。受け取った鏡をのぞき込めば、長い編み込みがつながっている。
この方法は地上の少女に教わった。一通りを語った彼は、礼を言われた顔のまま、楽しそうに振り返っている。
地上とは案外、興味深いものかもしれない。髪の先を辿りながら、エーリュシオンはまだ、日の昇りきらない大地を見る。