魔王が落ちていた。
目が真っ赤だとのぞき込めば、これは元からだと答える。
そんな出会いからした話を、今も覚えているだろうか、と彼は言った。こうして佇んでいる時は、決まって隣に座り込み、足元の欠片を拾い上げる。
くたくたになるまで得物を振るった、一面の衝動の中にはまだ。勇者を語った者どもの、壊れた証明が残っている。欠片を握る彼は、いつも決まってこう言うのだ。「顔を赤くしているのは誰かな?」
正義は今も見つからない。それでも探すのをやめられないのは、山のような欠片を背負った彼がまだ、同じ方向を向いているからだと。
そうしてまた、赤鬼は決まりきった答えを返す。
「これは元から赤ぇんだよ」
「フフ、それは良かった」