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    マハバ組から見たパーバソ両片思い

    友人の友人。
    アシュバッターマンにとってバーソロミューはそれ以上でもそれ以下でもなかった。前に一度球技を共にした気もするが、大して記憶にも残っていない。

    それがここ最近急にその名を多く聞いている。
    と言うのも、カルナが友の話を嬉々として話している他に食堂にて本人の預かり知らぬ賭博が為されているからであった。
    曰く、《円卓騎士と海賊が結ばれるまでの期間》。
    3日。一週間。1ヶ月。様々な意見が様々な賭け金を以ってして語られている。
    賭け事の胴元であるドゥリーヨダナが進展を気にしてこうして宴を開く程には2人の間柄は進展が見受けられないのであった。


    ◼️◼️

    「わし様〜〜パーシヴァル〜〜ごめん本当ごめん!今から周回!ちょっとだけ!新宿で髄液18個落としてくれたら終わるから!!お願いお願いお願い〜〜!!」
    ノックの後、一拍も開けずにマスターがドアを思い切り開ける音が響いた。
    このカルデアではよく見る光景である。
    計算が苦手なマスターは時折考えもなしにスキルを上げたり、その場のノリで霊衣を解放する為素材が枯渇しがちだった。
    「いやだ!!!わしは行かんぞ!!」
    「また素材の在庫計算間違えたのか、マスター」
    「……ゔん。バーソロミューのアペンド開けれなくなっちゃった……」
    「行きましょう!」
    バーソロミューの為、と聞き即座にパーシヴァルは立ち上がり、夏の霊衣から真っ白な鎧へと霊衣を編み直した。
    その隣ではドゥリーヨダナが幼子の様に駄々を捏ね続けている。
    「いやだいやだ行きたくなぁーい!」
    「お願いお願いお願い〜〜!」
    お願い、と可愛らしい言葉を使えど元来マスターの命令は絶対である。本気で抗う気もないのか、ドゥリーヨダナはどうにか妥協点を探すべく、顎に手をやり思案した。
    「むぅ……他のメンバーは決まっとるのか」
    「まだ……」
    「なら、こっちの3人も連れていくなら行ってやっても良いぞ!!」
    「そう言ってるけど、皆んなどう?サブに居てもらう事になるんだけど……」
    「あーまぁ、俺らはどの道旦那が宝具撃つ度に呼ばれるからな、俺はいいぜ」
    「そうだな」
    「私はほら……パーシヴァルを連れて行くって事はランサー有利だろう?それにもう絆も10だし、行く意味が……」
    「んーーー、ちょっと待ってて!」
    マスター少し考え、指折り何かを計算してからダ・ヴィンチの元へと駆けて行き、数分後何かを抱えて戻ってきた。



    「じゃーん!見て!」
    「それは……」
    「夢火だよー!はい!バーソロミュー!これで絆上げられるね!」
    「マスター!どうして君はいつも私にそんな高価な物を与えようとするんだ!」
    「バーソロミューが!好きだから!!」
    間髪入れない回答に驚きながらも、それはバーソロミュー自身痛感している。最初は顔だけだったけど、今は中身も好き!全部好き!と夏以降日々繰り返し伝えられている為である。
    雛が親鳥を求める様なものだろう。それに純粋な好意を持たれていると言うのも悪い気はしない。
    「……まぁ、そこまで言うなら有り難く貰おうかな……」
    「なんと!バーソロミューにはマシュの概念礼装も持ってもらいます!!」
    「マシュ、相変わらずいいメカクレだね!」
    「じゃ、早速行こっか!」

    かくして、5人は宴を一時中断し周回する事となった。



    ◼️◼️

    「わし様に礼装つけ忘れました!!!」
    「こぉの馬鹿者が〜〜!!」
    「なんかコスト少ないなって思ってた!!」
    「ま、まぁ、何とかなるでしょう。頑張りましょうドゥリーヨダナ殿」
    「見ろバーソロミュー。おそろっちだ」
    「そっちのマシュもいいメカクレ具合だね!」

    敵が目の前に居ると言うのにフロントではドゥリーヨダナが喚き、それをマスターが助長し、パーシヴァルが慌てながら仲裁に入っている。
    サブではバーソロミューとカルナが互いの概念礼装を見せ合いながら意気揚々としている。
    アシュバッターマンは頭を抱えた。このパーティ大丈夫か。一旦撤退した方が得策な気がする。
    それを口にしてしまえば、ドゥリーヨダナが拗ねる為に決してそうはしないが。

    「ドゥリーヨダナ殿!貴方は全体バフもある!クリティカル殴りも出来る!さすが!なので、バーソロミューのアペンドの為に頑張りましょう!」
    「後半に本音が集中しとるが……まぁいい、とっとと終わらせて貴様らの話を聞かせるといい!」
    ドゥリーヨダナは棍棒を握り直し、敵陣を見やった。
    棒術を使わせればドゥリーヨダナの右に出るものはいない、どうだうちの旦那はかっこいいだろう。アシュバッターマンは思う。かつてはパーンダヴァの連中には凄惨な目に遭わされはした。それでも己の王は何千年も前からずっとこの世の全ての中で1番であった。

    ドゥリーヨダナが通常攻撃でNPを溜めている最中、パーシヴァルが宝具を撃った。
    キラキラと眩い光を背に、馬に乗り駆ける。
    その光には傷ついた者を癒やす効果まである。攻守に優れた友を見やりながらカルナは己のことの様にしたり顔を見せた。
    「さすがパーシヴァルだ」
    「そうだろう、そうだろう。かっこいいだろう。さすが私の騎士様」
    続いてバーソロミューも同じ様にしたり顔をした。
    アシュバッターマンは不思議で仕方がなかった。臆面もなく《私の騎士様》と言ってのけているものの、恋仲ではないのだという。
    「アンタら付き合ってないって聞いてんだけど……お互いそんなんで何で付き合ってないんだ?」
    アシュバッターマンは純粋な疑問をバーソロミューに投げかけた。
    バーソロミューの為に、と先陣を切るパーシヴァル。
    私の、と憚りもせず宣うバーソロミュー。
    恋愛話に疎いアシュバッターマンとてこれが所謂相思相愛であると理解出来る。なのに、何故。
    バーソロミューは眩い光を見つめながら、それを慈しむ様に微笑んだ。
    「互いの心を理解し合っているのに、これ以上何を望むんだい?」
    「この間は激怒していたのにどういう心の変化だ、バーソロミュー」
    先日カルナとバーソロミューは故あってシュミレータルームにて私闘を行ったのだと聞く。
    「いや、その、パーシヴァルから好意的な視線は向けられてたけど言葉にされたことがなくて。でも周りは恋仲になるならないの話ばかりで、その……肉体関係になる想像が出来ないんだ、年も離れすぎてる。縛りたくないんだ、縛られたくないんだ、今にして思えばあれは八つ当たりだったね、すまない」
    「互い、という事はお前も愛を伝えたのか」
    「いや…恥ずかしくてまだ……」
    バーソロミューの褐色の肌が少し赤らんでいる。
    なるほど、普段はあれ程機転の効いた作戦を練り、マスターを甘やかし、戦闘になれば苛烈を極めると言うのに。パーシヴァルは、不意に見せるこういったギャップが好ましいのではないかと思う。

    「互いと言うには語弊があるな、おまえのそれは一方的にに享受しているにすぎない。言わば搾取では?」
    「勇気が出たら言うよ、いつか、きっと、ね」
    「その日を楽しみにしている。結婚式には呼んでくれ」
    「しないと思うなぁ」
    「ドゥリーヨダナに準備をさせる。金のことなら案ずるな。あの小さき妖精に衣装を作って貰い、撒く花は魔術師に用意させよう。食事は……そうだな、赤い弓兵や…………あのヴリコーダラに任せればパーシヴァルの腹も満たせるだろうよ」
    「ヴリコーダラって誰だい?あぁ分かった。カルナ、君でもそんな顔するんだね。ビーマの事かい?」
    「そうだ。ビーマとパーシヴァルが合わされば延々とおかわりが机に届くぞ」
    「ンフフ、それは遠慮したいなぁ」

    二度目の生を受けて、と表現するのも妙な話ではあるが。カルナがこうしてビーマの話を自らするとは思わなかった。
    世代も生き方も違う2人が互いを思い合う奇跡を目の当たりにしているのだ。カルナの中の恨み辛みが完全に消えないまでも、ある程度昇華しているとしても不思議ではない。

    「終わったぞ!!!」
    「髄液が落ちたよ、バーソロミュー」
    「うん。お疲れ様、パーシヴァル。流石だ」
    「おー旦那お疲れ、あと何周だ?」
    「あと17個です!!!」

    ドロップ運悪過ぎてごめんね!!!!!
    マスターの叫びは新宿の片隅に響き渡った。
    いつか、本当に式を上げる日が来るのならそれはなんと幸せな事だろう。カルナの言う様な式が挙げられる様な日が来るとすれば己の怒りも一切合切消えるのだろうか。
    どうか、生まれも生き方も違う、己よりも数千年先を行きた子らの先行きがどうか少しでも良いものであったら良い。
    あと何十周か続く新宿での周回の中で、もう少しだけこの幸せな妄想に浸ってみたい、とアシュバッターマンは思った。
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