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    霊基異常で幼児化してしまったパ卿と、それに巻き込まれるバソとマスター(パーバソ)⑤《完》
    パ卿が元の姿に戻って答え合わせ。完結です。

    ▪️霊基異常〜パーバソのパが不思議な力で幼児化しちゃった!不定期日誌⑤《完》〜バソ著



    ▪️FINAL DAY

    「おはよう、バーソロミュー」
    「おはよう。……どうやら元に戻ったみたいだね」

    私が気絶した後、パーシヴァルは私を抱えマスターの元まで走ったらしい。どうやらマスターが魔力供給してくれたようで、今日はすこぶる体調がいい。

    「…………えぇと、」
    「パーシヴァル?」
    「まだです!!もう少し!!ほら!この鎖部分とか短い!気が!!」

    パーシヴァルはロンギヌスを指差して言った。私には普段通りに見えるのだが。
    メカクレでなくとも、小さくなくとも、柔らかくなくとも。私にとってパーシヴァルはやはり《可愛いパーシヴァル》だ。
    だから、この児戯にもう少しだけ付き合ってあげようと思う。

    「そうだね。じゃあ、……流石に大きくなった君を抱いて歩けないから。手を繋いでおこう」
    「はい!」

    パーシヴァルがあまりに嬉しそうに笑うものだから。私もつられて笑ってしまった。



    ▪️

    「やぁ!どうだったかな、私からの贈り物は!」

    唐突に現れたのは花の魔術師だった。
    ちょうど良かった。パーシヴァルが小さくなった原因を作った張本人。聞きたい事はたくさんある。
    恨み辛みもない訳ではないが、パーシヴァルの可愛さに免じて許す事にする。

    「あー……ちょっといいかな」
    「お小言ならお断りだよ!」
    「何故パーシヴァルにあの様な事を?」
    「何故って。そこの騎士様が願ったからだよ。たまには甘えたいって、甘える理由が欲しいって思ってただろう?だから叶えた。それだけ。ただの暇つぶしさ」

    パーシヴァルを見やると私から顔を逸らした。耳まで真っ赤に染まっている。マーリンの言葉はどうやら真実であるらしい。
    今後とも甘やかしてあげよう。代わりにメカクレを要求しよう。うん、ウィンウィンだな。我ながら名案だ!

    「さて、答え合わせは必要かな?」
    「何の?」
    「いやー、花の名前とか知らないんじゃないかと思って」

    パーシヴァルが成長する度に降った花にはやはり意味があったらしい。

    最初は、黄色い大きな花。
    次に、オレンジ色の星形の花。
    それから、小さな青い花。
    最後に、たくさんの薔薇。

    「ヒマワリ。カランコエ。ブルースター。薔薇。花言葉って知ってるかい?純潔の騎士様の心根は随分と美味しいものだったねぇ」
    「ねぇ!マーリン見てない!?」
    「しまった、マスターから逃げてる途中だったんだ。意味は自分達で調べたまえ!じゃっ!」
    「いた!まだ話終わってないよ!!人の恋路の邪魔したら駄目でしょ!?」

    言いたい事だけ言ってマーリンとマスターは駆けて行ってしまった。
    遠くの方で婦長の怒声が聞こえた。うん。怖い。廊下はなるべく走らない様にしよう。

    「花言葉、調べに行こうか」
    「……深層を知られるのは、少し、怖い」
    「図書館デート、したくない?」
    「……したい」

    もう成人になっていると分かっているのに、どうしても甘やかしてしまう。
    小さかろうが大きかろうが、甘えたいと素直に言ってくれれば良かったのに。まぁパーシヴァルらしくはあるけれど。



    ▪️

    ソファに腰掛け、花言葉が載った本を2人で開いた。
    手は繋いだまま。
    司書役をしている彼女からは見えない位置で。



    ——ヒマワリ。
    《貴方を見つめる》。

    ——カランコエ。
    《貴方を守る》《幸福を告げる》。

    ——ブルースター。
    《幸福な愛》。

    ——薔薇。(何本か分からないから本に載っている中で1番多い数を書いておく)
    《貴方が毎日恋しい》。




    「……君、随分と私の事好きだな?」
    「ええ。カランコエに関してはマスターからの魔力供給だったから、マスターへの言葉なんだろうけど。……私は、貴方が好きだよ」
    「知ってる。……年相応の我儘が垣間見える君も、今の君も魅力的だからね。思い知らされたよ」

    ひらり、と花が一つ落ちて来た。
    ピンクの愛らしい花だった。
    おそらくはまたマーリンの悪戯だろう。相変わらず分かり難い。現物を見た所で花の名前が分からなければ調べようもない。

    「桃、ですね。私の時代にも栽培されていたんですよ。……さて、どちらからの言葉なんでしょうね?」

    司書は手を繋いだ私たちを見て微笑んでからその場を去った。
    見られた気恥ずかしさと、教えてくれて有難うの気持ちが入り混じる。


    ——桃。
    《貴方のトリコ》。


    「……さて、どちらからの言葉なんだろうね?」

    術を掛けられたのはパーシヴァルだから、おそらくは彼からの言葉の筈だけれど。
    術がかけられていない筈の私の気持ちが代弁されてしまった様で少々気恥ずかしい。



    さて。
    調べ物も終わった事だし、そろそろこれにてこの日誌を終えようと思う。
    いずれ、どこかの誰かがマーリンに悪戯された時の参考になれば幸いだ。ならないだろうけど。

    例の約束がまだ果たされてないよ、とパーシヴァルが急かすのでこの辺で。
    そう言えば、少年のパーシヴァルに大人のキスをいくらでもしてあげると言ってしまったんだった。
    私もお礼と称してメカクレを充分堪能させてもらうとしよう!
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