つい弄りたくなるその背中「あぁ…今日は一段と疲れた…」
「お疲れミナト」
一日の仕事終わり、ミナトは時々タンク街にある俺の個室に来る。が、来る時は大抵、疲れが溜まっている時や、少し機嫌が悪い時だ。
ようするに、俺に甘えに来たい時だな…本人はそういった素振りは見せないようにしているようだが、コイツは案外分かりやすい。
今日は大きなイベントがあった日だ。司令官の役目も多かったんだろう…
ソファに座って手で首を押さえながら、ミナトは首を捻った。
「しかし人の身体と言うのは本当に不便だな…立ちっぱなしだと肩がこる…オキソンや油をさせば治る訳でもないしな…」
「そればかりはな、そもそも素体はそう言う刺激も楽しむものだろ」
「俺は遊びじゃなくて仕事なんだがな…」
ムスッとした顔で不満そうに俺の方を見る。
見慣れた顔だが、拗ねた猫のようでおかしく思えてくる。
「じゃあ…そんなお疲れな司令官様には俺が肩揉みでもしてやるかな…」
「ん…あぁ、じゃあ頼むよ」
上着を脱げ、と言うと、あぁそうだったなと呟きながら上着をソファにかけた。
黒いインナー姿になったミナトの、俺の素体より骨張っていて細身な肩に手を置き、グッと力を入れる。
「…少し硬い気がするな…やはりこっているのか…」
「まぁこの素体も若い訳ではないからな…っ!ちょっと待てカブ、強すぎだ痛い」
「あぁすまん」
「お前力強いんだから手加減しろ」
タンカー相手の時は気をつけているんだが、ギア相手の時はつい気を抜いてしまう。
さっきより少し力を弱めながら、肩を揉みほぐしていく。
「どうだミナト、気持ちいいか?」
「んん…痛気持ちいい…と言うか…」
そうか、と言いながら、今度は手を首元に動かし、さっきミナトが自分で押さえていたあたりを親指でグッと押さえた。
「んっ…!」
「すまん痛かったか?」
「いや、まぁ少し…」
「手加減する」
まぁ首は素体の急所だからな…そう、戦闘の事を思い出しながら、大分手加減した力で首の後ろを揉む。すると、ミナトの肩がピクリと動いた。
「ちょっ…待て、もう少し強めでいい」
「はぁ?注文が多いぞ…手加減しろだの強めにしろだの…」
「いや、お前極端なんだよ!」
「してもらってるのに文句つけるのか?」
だが、言いながら振り向いたミナトの顔を見て分かった。成る程これは…少し遊んでやろうか。フッと自然と顔が緩んでしまった。
俺は強すぎずしかし弱すぎない微妙な力加減で、両手で肩から首の後ろにかけてほぐすように指を滑らせた。
すると若干ミナトの身体が跳ねる。構わず今度は、右手だけで首の両側を押さえるように揉みほぐし、下にすっと引く際に人差し指と中指で後ろの首筋をツゥとなぞった。
「っ…!」
目に見えて肩を震わせたミナトが、少しこちらを振り向きながらジトっとした目で俺を見ている。
「おいカブ…」
その耳はほんのり色付いている。コイツは本当に分かりやすいな…つい笑みが漏れる。
「ククッ…なんだ?」
「お前わざとやってるだろ…」
「なんの事だ?」
「とぼけるんんっ…!」
“な” まで言い終わる前に、ミナトの首筋にするりと指全体を這わせてやった。
肩をすくめながら右手で俺の手を振り払う。
そう、ミナトは首が弱い。
「カブ…!」
「おっ?司令官様がお怒りかな?これはデカダンスキャノン撃たれるな…」
「お前なぁ…!」
このやり取りも何度目か。俺がミナトをからかう時によく言う言葉だ。
ソファの背もたれ越しに掴みかかって来ようとする手を避けると、一人で勝手にバランスを崩して落ちそうになっている。
それがおかしくてクツクツと笑うと、ミナトは上着を引っ掴みながら立ち上がった。
「ハァー…帰る」
「フフ…そう機嫌を悪くするな。今度はちゃんと“して”やるから、な?」
そう言うと、更に耳と頬を染めながらいつものジト目で軽く睨んできた。
「うるさい、次は“俺の番”だからな」
「どうだか」
部屋の扉を開けようとする後ろ姿に向かって、もう一言投げかける。
「明日も来るんだろ?」
「来るか!」
バタンと扉が閉まる。
いや、あれは来る顔だな…
END
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【あとがき的な】
深夜テンションで肩揉みの話からマッサージネタいいよね〜って話してたら書きたくなったネタ。
「気持ちいいか?」とか聞いちゃうし、マッサージは台詞だけ聞いてたらエロと区別つかないよね〜ってヤツです。
普通に肩揉みしてるだけだったんだけど、イタズラしたくなっちゃったカブの図。
ほんで分かりやすいミナトの図。「俺の番」って言うのは、俺が攻めやるからなの意。襲い受けだから。まぁ無理なんですけどね。
別にそんなエロくないけど、こう言うソフトな触ってるだけのヤツも好きです…
書いたのは5月でした。