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    mamedaihuku228

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    mamedaihuku228

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    初夜的な感じのビリグレ。フェイスくんも出てきます。詳しく言うとただ準備をするだけで、エッチではありません。エッチな事はしてません。大切な事なので二回言いました。

    #ビリグレ
    bigotry
    #エリオス
    elios

     寮に入った時に二人で選んだソファに並んで座り、それぞれのカレンダー帳に赤い丸の印をつける。グレイのカレンダー帳には新作のゲームやフィギュアの発売日など、自身の趣味に関する事や、仕事の事などがぽつりぽつりとメモされているぐらいだ。きっとビリーのものは自分とは違って、情報屋の事や友人との予定などで埋め尽くされているのだろうとグレイは思っていたのだが、一瞬中が見えてしまったそれはグレイと似たようなものだった。それに気が付いたビリーは「グレイのエッチ♥」だなんて、カレンダー帳を胸に当てて隠すので、偶然であるとはいえ人のプライバシーを許可なく覗き込んでしまったと、「ごめんなさい!わざとじゃなくて…!」と、慌てて両手で目を隠して謝った。
    「ウソウソ♪グレイなら見てもいいヨ。情報屋の方は別にあるから、こっちは完璧ぼくチン用」
     そう言ってビリーが中を開いて見せるのを、とりあえず情報屋での秘密保持などは問題が無い事にほっとしつつ、そろりと指の隙間から覗いてみるが、細かく綺麗な字で書かれたそれはやはりグレイのものと大差ないものであった。パトロールの予定日、休日、マジックでの買い出し日、そしてグレイと同じく赤い丸印の日付。それを見るとグレイは途端に恥ずかしくなって、頬を染めて顔を俯かせた。ビリーがその日付を、黒の手袋をはめた指先でなぞる。
    「この日、約束ね」
     二人きりの時は外すようになった、ゴーグルの無い素顔のビリーの笑みは無邪気なものだった。まるで遊びに行く予定でもあるかのような、何でもない様な顔で言うので、グレイは自分がどう返事をするのが正しいのかわからなくて、ただ小さく頷く事しか出来なかった。
     お互いに翌日が休みである、赤い丸の日付。その日、グレイはビリーと初めて身体を重ねる。

     生まれて初めて恋人が出来たグレイにとって、他人と肌を重ねるのは未知なる領域であった。ビリーも初めてだと言っていたし、いくら情報屋といっても、仮に知識で知っていても体験するのとはだいぶ違うだろう。付き合う事すらお互い手探りで、だけどビリーはグレイを抱きたいと言ってくれた。好きだと言って、抱きしめてくれたのだ。グレイはそんな彼を受け入れたいと思ったし、出来るだけいい思い出として彼に刻みつけたいとも思っている。
     だけどそんな気持ちとは裏腹に、グレイにとって未知なるその行為に対し、いい思い出となる自信がまったく無かった。なぜならグレイの身体はどうあっても男の形をしており、女性の様な柔らかさなど備わっていないし、むしろ硬く骨ばっていて、抱き心地すらいいものでは無いかもしれない。
     そうやって迫りつつある赤い丸の日に、うんうんと悩む日が続いていたのだが、廊下である人とすれ違った時、グレイは咄嗟に彼を呼び止めた。


    ****


     天井から吊るされたシャンデリアはきらきらと輝いて、硝子張りの店内では少しばかり眩しい。小さな店ではあるが、壁やショーケースに幾つも並べられている商品はどれも上等な物なのだろう、シャンプーから基礎化粧水など、美容に関係する物がずらりと並べられている。そんな高級感ある店内で、男性店員がグレイの前に幾つもの瓶を並べると、初心者であるグレイにわかるようにひとつひとつ丁寧に教えてくれるが、グレイは圧倒的に自分とは不釣り合いな店の雰囲気と商品に、ただあわあわと目を回して縮こまるだけであった。

     ニューミリオン北部にあるブルーノースシティ。高級住宅街であり、富裕層の多いこのセクターは、グレイにとっては歩くだけで気後れしてしまうが、それでも美術館や家族と特別な時のレストランなどで立ち寄ったりする事がある。しかし今回目的とするのは、美術館やレストランではなく、今迄一度も足を運んだことのない男性専用の美容品店であった。
    「コレとかはどう?」
     そう言って、店員が勧めてくれた化粧水を差し出してくれる。誰もがうっとりするような端整な顔立ちに、首に掛けられたヘッドフォン。ひとつひとつ発せられる声すら蕩けるように甘やかだ。グレイが廊下で呼び止めたのはフェイスであり、親切にもグレイと共に美容品店までついて来てくれた。
     彼が化粧水をグレイの手の甲に馴染ませると、肌の中にすっと浸透していくのがわかる。痛みも被れも起こらないそれは、グレイの肌にはあうようで、なんとなしに匂いを嗅いでみたが香りがついている物では無い様だ。しかしこれが本当に良いものなのかよくわからないグレイには、これだと即決で決めてしまってもいいものなのか。
    「すぐに効果が出る訳じゃないよ。毎日使わないと。もっと肌質上げたいなら、スクラブとかオイルとか」
    「す、すくらぶ…おいる…?」
     スクラブとは何か。オイルと言われたら、オリーブオイルしかわからない。今迄美容などとはまるで縁が無かったグレイにとって、全くもって馴染みのない単語ばかりが並べられる。化粧水だとかは妹が使っているのを知ってはいるから辛うじてわかるが、あとはもうちんぷんかんぷんだ。その様子がおかしかったのか、フェイスがくすりと小さく笑う。
    「アハ、変な顔してる」
    「ご、ごめんなさい…」
    「謝らなくていいよ。それよりも…声掛けられた時はビックリしちゃった」
     彼はその時の事を思い出しているのだろう、綺麗な唇でニヤリと笑う。
    「“僕を綺麗にして”、なんてさ」
     そう言って、またクツクツと笑いだすのだ。そんなに笑わなくてもとグレイは俯くが、確かに廊下で突然呼び止められてそんなふうに言われたら驚くだろうし、笑うしかないだろう。グレイは自分の突拍子のない行動を思い出すと、顔から火が出る程恥ずかしかった。だけどあの時は、これしかないと思ったのだ。
    「そ、その…個人的な事情で、今の自分じゃ足りないなって思ったから…それで、その、少しでも綺麗になったら、違うのかなって思って…」
     フェイスは「ふーん」と、特別興味がある訳でもない様子で、グレイと同じように手の甲に化粧水を馴染ませて試していた。
    「あの、フェイスくん、ありがとう。突然変な事言い出したのに、お店を教えてくれるだけじゃなくて、ついて来てくれて。僕一人じゃ、ここまでくる勇気すら無かったよ」
    「別に。前の彼女がこういう店があるとか言ってプレゼントしてくれたの、たまたま覚えてただけだから」
    「ま、前の彼女…」
     まるで何でもない事のように言うが、彼女がいた事がないグレイにとっては知らない世界の話だ。だけどふとビリーの事を思い出し、もう知らない事ではないのだと、思わずにやけてしまう。
    「ねえ」
    「は、はいっ…!?」
     にやけていたのを見られてしまったと、グレイは慌てて顔を引き締めようとする。
    「ビリーとヤるの?」
    「えっ!?」
    「グレイは健気だねぇ」
     そう言って店員にも「ねえ?」と問うと、「そうですねえ」と深く頷かれる。
    「なっ、なななななんで…!?ぼ、僕、言ってた…!?」
     顔を真っ赤にしながら手をわたわたと慌ただしく動かすグレイとは逆に、フェイスは落ち着いた様子で瓶の蓋を閉め、店員にそれを返している。
    「言ってないけど、行動でバレバレ?美容とか全然興味の無いグレイが、突然綺麗になりたいだとか言うんだもん。絶対ビリーに関係する事でしょ」
    「そ、そうだけど…」
     確かに彼の言う事は正解だ。間違っていると指摘する必要がないぐらいの完璧さだ。それに観念するよう、グレイはがくりと肩を落とす。
    「ぼ、僕…そういうの初めてで、どうすればいいかわからなくて…ビリーくんに、少しでも良かったって思って欲しいんだ…」
     グレイの身体は硬く骨ばっている。女性のような柔らかさなんて欠片もない。だからグレイの出来る範囲で綺麗であれば、ビリーを少しだけでも喜ばせる事が出来るかもしれない。
    例えば抱きしめた身体から、彼の好きな香りがしたり。黒の手袋からでもわかるぐらい、肌が滑らかで気持ちの良いものだったり。なんでもないような事かもしれないし、もしかしたら不必要な事かもしれないが、出来る事はなんでもやりたいのだ。
    「それで、フェイスくんは僕が出会った中で一番カッコよくて綺麗な人だから…。何か、綺麗になれる方法を知ってるかなって…」
     ちらりとフェイスの方に視線を向けると、彼は何とも言えない顔をして、視線を逸らしてしまう。グレイは調子のいい事を言ってしまったから、不愉快な思いをさせてしまったと、慌てて「ごめんなさい!」と謝る。フェイスは「…違うから」と否定してくれるが、不機嫌そうな声だから気を使われているのかもしれない。グレイがあわあわと焦っていると、フェイスが小さな溜息を吐いた。
    「今迄、顔を褒められた事は何度もあったけど…」
     フェイスが、うっとりするような小さな微笑みを向ける。
    「グレイに褒められたのが一番嬉しかったかも」
     そんなとんでもない破壊力の言葉と顔をグレイに向けるので、なんだか色々と恥ずかしい事を言ってしまったと、今更ながらグレイは照れるのだ。
    「そんな、本当の事だから…」
    「まあ、ビリーならグレイが裸でベッドに寝転んでるだけで喜ぶと思うけどね」
    「ええっ!?は、はだか…!?そ、そんな…それは…!?」
    「アハ、ごめんごめん。グレイは本当に健気で可愛いね」
     そう言ってまたもや店員に「ねえ?」と問うと、「本当ですねえ」と微笑ましい視線を向けられる。なんともいたたまれない空気だ。
     その後、シャンプーやらオイルやら、目を回しながらもなんとかそれらを購入し、思っていたよりも安く済んだことにほっとする。最後に店員から通販もやっていて、まとめて購入すると割引が効いて送料が無料になると、しっかりと宣伝されてから商品を受け取り店から出て行った。どっと肩の力が抜けて、ふらふらになりそうな足取りでいると、隣を歩くフェイスが軽く肩を叩く。
    「喜んでもらえるといいね。ビリーに」
     ニヤリと彼が笑う。応援してくれるのは嬉しいが、ビリーに、と強調する所はとても意地悪だ。グレイは恥ずかしくて顔を真っ赤にさせながらも、「は、はい…」と小さな返事をするしかなかった。そうして彼は「お礼はショコラでいいよ」と微笑むので、帰りに彼のお気に入りの店で一緒にお茶をするのだった。


    ****


     赤い丸の日付が、とうとう来てしまった。あれから毎日化粧水やら何やらと塗りたくる日が続いたが、撫でてみると肌のハリが違う気がする。香りは慣れてしまってわからないが、もしかしたらいい香りがしているのかもしれない。前にジェイがすれ違った時、「いい香りがするな」と言われたので、多分大丈夫だ。
     パトロールが終わると、ビリーと待ち合わせをしてお気に入りの店で一緒に食事をする。そうしてビリーに手を引かれて辿り着いたのは、所謂そういうホテルだった。
     初めは自室でシようかとも思っていたが、すぐ向こう側の部屋でアッシュやジェイがいると思うと、なんだか申し訳ないし恥ずかしい。なので二人でこそこそと隠れてはスマホでこのホテルを探したのだ。
     ホテル自体の建物はよくあるような造形で、一見するとただのビルにも思える。だけど一歩中に踏み込むと、部屋を指定するシステムや、大きなベッドが異様に目立つ部屋など、いかにもという独特な雰囲気を感じさせる。
     本当に今日ビリーと繋がるのだと思うと、グレイの心臓は壊れそうな程跳ね上がり、目の前が真っ白になりそうだ。
    「グレイ、緊張してる?」
    「ビ、ビリーくん…」
    ゴーグルを外したバスローブ姿のビリーが、ベッドに腰掛けるグレイの隣に座る。彼の髪はまだうっすらと湿っていて、お風呂に入り終えた事がわかった。グレイも同じバスローブ姿だが、緊張のあまり意識が飛びかけていたのか、自分がいつどうやってお風呂に入ったのかさえ覚えていない。するとビリーがグレイの肩にこてりと頭をもたれさせる。
    「ボクちんは緊張してる~」
    「…ぼ、僕も」
     お互いこういった事の経験はないと言っている。なのでグレイと同じで、ビリーも壊れそうな程心臓が脈を打っているのかもしれない。そう思うと、なんだか嬉しかった。
    「ホント、長かったよね。もしかしたら約束したのも夢だったのかもしれないとか思っちゃうぐらい」
    「そ、そうだね…。印が無かったら、僕も妄想だと思ってたかも」
     印の日が近づくたびにドキドキしていた。恥ずかしい妄想なのかもしれないと、何度も思ったが印が現実だと教えてくれた。
    「ねえ、グレイ。ず~っと言いたい事があったんだけどさ」
    「な、なあに…?」
     ビリーが大きな瞳でニンマリと笑う。
    「いい匂いがするね」
     心臓がドキリと飛び跳ねた。グレイは咄嗟に「そ、そうかな?」だなんて誤魔化してしまったが、彼が手袋を外すとゆっくりと掌に重ねられる。
    「あと、肌もすっごく気持ちいい」
     そう言って重ねていた掌が、グレイの手首を撫で、腕や二の腕までをゆっくりとした動作で撫でるから、触れた肌が熱を持つ。わざとらしい彼の触れ方と言葉に、グレイは耐えられなくなって「…知ってるの?」と彼に問うた。
    「知ってると言うか、気付くよ。毎日一緒にいるんだもん」
     グレイの手を持ち上げると、それに頬ずりをする。ビリーの柔らかい頬を優しく撫でると、彼は心地よさそうに瞼を閉じる。
    「グレイ、どんどん綺麗になっていくから」
     パチリと開いた瞳と目が合い、顔が熱くなる。なんだか期待していたのが見透かされていたようで、恥ずかしい。
    「ボクちんのために、頑張ってくれたんだよね♪」
    「う、うん…」
    「嬉しい。ありがとう、グレイ」
     綺麗好きな彼が、少しでも不愉快な思いにならないように。少しでも良かったと思えてもらえたらと、グレイなりに自分を磨いてみた。ビリーが喜んでくれるなら、グレイだって嬉しい。
    ビリーは笑ってグレイに軽いキスをすると、今度は深いキスをする。ゆっくりと舌が入り込み、グレイの歯をなぞり舌を吸われると身体が痺れて力が抜けてしまう。その感覚が伝わったのか、キスをされたままゆっくりとベッドに押し倒されて、覆い被さるようにして抱きしめられる。
    「…へへッ♪シよっか」
    「うん…」
     ビリーの手がグレイの頬を撫で、バスローブの中に侵入していく。てっきり手袋を付けたままするのかと思ったが、彼の両手はむき出しのままだ。それが嬉しくて小さく笑うと、頬にキスを落とされ、それが首筋へと下に降りていく。
     心臓の音が彼にも聞こえているのだろうかと、ゆっくりと瞼を閉じる。印をつけた日が来るのは、本当に長かった気がするし、早かった気もする。だけどようやく彼と繋がることが出来るのだ。
     そこで、グレイは「ん?」と思った。
     繋がる、と言えば心だけではなく肉体的にもだ。だからグレイは彼が少しでも気持ち良く気分良く抱いてくれたらと…。
    「ああっ!!」
     グレイが勢いよく身体を起こすと、ビリーは油断していたのだろう、グレイの肩に強かに顎を打ち付け「アイタッ!」と叫ぶ。
    「なになになにっ!?どうしたのグレイ!?」
    「ご、ごめんねビリーくん。大丈夫?」
     グレイはそれほど痛くはなかったが、ビリーは痛そうに顎を摩っている。とりあえず舌は噛んでいないようで安心した。
    「ビ、ビリーくん…あの、本当にごめんね?…その、す、するのって…また今度じゃダメかな…?」
    「え…えーーーッ!?なんで、ボクちん何かしちゃった!?」
    「ビリーくんは何もしてないよ!…ただ、その…僕が失敗しちゃってて…」
     もじもじとしながらも、乱れたバスローブを整えるグレイにビリーは首を傾げる。
    「か、身体…綺麗にしたのに…その、準備を、忘れて…」
    「準備?」
    「………うしろ」
     そう言って消え入りそうな声で顔を真っ赤にさせるグレイに、ビリーも何が言いたいのかを理解したようだ。
     男同士で身体を繋げるには後ろを解さないといけない。準備も掛かるだろうし、何よりも触って気分のいい場所ではないだろう。潔癖なビリーなら猶更だ。だから触らなくてもいいようにグレイ自信で準備をしておこうと思ったのに、グレイは身体の事で手いっぱいで、そちらの事をすっかり忘れていたのだ。
    「ごめんね、ビリーくん。次はちゃんと準備するから、だからまた今度約束させてくれないかな…?」
     必死に懇願するグレイに、ビリーはしかめっ面をしていた。ビリーが不機嫌になるのも無理はない。せっかく約束してくれたのに、それを破ってまた次でと勝手なお願いをしているのだから。グレイは顔を真っ青にさせてどうすればいいかと必死に考えた。
     今からでもお風呂場へ行って、準備すれば間に合うだろうか。いや、まずはやり方を調べないといけない。必要なものもあるだろうから、それをどうやって手に入れるかも考えないと。どうして自分は肝心な部分に気が付かないのかと、泣きそうになりながらグレイは必死に考える。
    「グレイ」
     名を呼ばれて肩をびくりと跳ねさせる。恐る恐るビリーを見ると、眉間のシワは寄ったままだ。怒っている。そう思ったグレイの瞳からじわりと涙が滲み、視界が歪んでいく。
    「大丈夫だから」
     そう言ったビリーに再びベットへと押し倒される。
    「それは俺がする事だよ」
    「で、でも…」
     涙が一筋流れて、視界が元に戻るとビリーは笑っていた。自らのバスローブの紐を解くと、彼の肌が露わになって心臓が再び跳ね上がる。
    「グレイってば酷い。俺には何もさせてくれないの?」
    「そ、そうじゃないよ…でも…」
    「俺のために、こんなに綺麗になってくれたのに。また今度なんてされる方が嫌だよ」
     ビリーが額にキスを落とすと、そのまま傷の痕も愛おし気に撫でてくれる。
    「本当はね、グレイがここにいてくれるだけでいいんだよ」
     肺の奥を満たす香りも、掌に感じる肌も、全部グレイであればいいのだ。ビリーがそう言うと、グレイはきょとんとした顔をして、だけどすぐに顔を真っ赤にさせる。
    「グレイってば、可愛い~」
    「ううっ…」
     ビリーよりも六つも年上なのに、可愛いだなんてある筈がない。いつだってグレイの中で可愛いのはビリーであった。だけどそれを今言う必要はないのだろう。
     グレイは震える手で同じようにバスローブの紐を解くと、この日まで毎日手入れしていた身体を露わにする。ビリーは嬉しそうに笑って、だけど瞳の奥は期待に満ちていた。
    「よ、よろしくお願いします…」
    「こちらこそ!」
     押し潰すような勢いで抱きしめるビリーに、グレイは一度頭を撫でるとギュッと抱きしめる。ビリーは自然と出た言葉なのだろう、「いい香り」「気持ちいい」と呟いては肌を撫でてくれた。グレイはそれが嬉しくて、またあの店で買おうと思いながら、ベッドの上で身体を重ねた。
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    Replies from the creator

    mamedaihuku228

    DONEビリー×バンドマングレイ。だけど腐要素少ない…。もっとイチャイチャさせたいのに、なぜ…!!
    ボヘミアンを観て、バンドマングレイがビリーに向けて舞台の上からキス贈ってくれるの見て~~~ってなりました。照れながらやってくれ~~~観た作品に影響されまくります。フェイスはそういうの手慣れてそう。ジュニアはやらない。
    グレイはステージに立つとジェットみたいになるので、プライベートではファンに気付かれません。
     薄暗いステージの上で、目も眩むような眩しいスポットライトを浴びている。全身はジリジリとサウナのように熱いのに、身体の内側を巡る血液だけはひんやりと冷たい気がする。この妙な冷たさはいつまで経っても慣れないし、小鹿の様に震える足は治まる気配すらなくて情けない気持ちでいっぱいだ。それなのに、何度もこのステージの上に来てしまうのはなぜなのだろう。

     エンターテインメントに溢れる街として若者に親しまれるイエローウエストアイランド。賑やかなカジノや遊園地などがある中心部から少し逸れた所に小さなライブ会場があり、グレイはそのステージの上でギターを抱え、マイクの前でスポットライトを浴びていた。
    観客入場数は五十人程が限界だとスタッフから聞いていたが、明らかにキャパオーバーであろう人達がギュウギュウとすし詰め状態にされている。まるで満員電車の中のよう、苦しくて不快な筈なのに、グレイに期待の眼差しを向けている。はやく、はやく、と訴える目は輝いていて、ボールを前にする愛犬のバデイとそっくりだ。
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    mamedaihuku228

    DOODLEマフィアパロ…?9割ジェイのビリグレ、だけどかなり薄いめ。
    全然活かしきれてないけど、自分がマフィアだといえばそうなる!!
    冷酷で冷静にマフィアの仕事をこなすグレイの事を、堅気に戻ってほしいとこっそり願って見守るジェイ。久々過ぎて文章が難産過ぎたけど、書きたい所だけ書いた感じです(笑)
    本編だけなく、あらゆる世界の可能性を見出してくれる…ありがとうエリオス!!!
    マフィアパロ? 僕は、今日からドンの影です。

     そう言ったヘーゼルの瞳の青年は、いつしか言葉通りドンの影となった。

     陽射しも穏やかで、微睡むような昼下がり。ジェイは最近見つけたお気に入りの海辺のカフェで、ゆっくりと珈琲とドーナツを楽しんでいた。一見すると何処にでもいそうな男性市民であるが、裏の顔はニューミリオンで名を馳せるマフィアのドンだ。そんな物騒な名前を背負っているので、本来なら護衛を付けて外出するのが正解なのだが、ドーナツ一つを買うのに黒塗りのベンツを用意して、厳しい顔をした護衛をカフェにまで連れ回すのは気が引けるし、このゆっくりと時間が流れるような穏やかな店に如何にも堅気ではない男たちでテーブルを埋めるのは気の毒だ。何よりも、ジェイ自身が一人で出掛けたい気分であったのだ。たまにはマフィアのドンという姿を脱ぎ捨てて、ニューミリオンとドーナツをこよなく愛するジェイというただの男に戻りたい時もある。いつものパリッとしたスーツもコートも脱いで、シャツとボトムスとサンダルを穿けばあっという間だ。
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    mamedaihuku228

    DONE初夜的な感じのビリグレ。フェイスくんも出てきます。詳しく言うとただ準備をするだけで、エッチではありません。エッチな事はしてません。大切な事なので二回言いました。 寮に入った時に二人で選んだソファに並んで座り、それぞれのカレンダー帳に赤い丸の印をつける。グレイのカレンダー帳には新作のゲームやフィギュアの発売日など、自身の趣味に関する事や、仕事の事などがぽつりぽつりとメモされているぐらいだ。きっとビリーのものは自分とは違って、情報屋の事や友人との予定などで埋め尽くされているのだろうとグレイは思っていたのだが、一瞬中が見えてしまったそれはグレイと似たようなものだった。それに気が付いたビリーは「グレイのエッチ♥」だなんて、カレンダー帳を胸に当てて隠すので、偶然であるとはいえ人のプライバシーを許可なく覗き込んでしまったと、「ごめんなさい!わざとじゃなくて…!」と、慌てて両手で目を隠して謝った。
    「ウソウソ♪グレイなら見てもいいヨ。情報屋の方は別にあるから、こっちは完璧ぼくチン用」
     そう言ってビリーが中を開いて見せるのを、とりあえず情報屋での秘密保持などは問題が無い事にほっとしつつ、そろりと指の隙間から覗いてみるが、細かく綺麗な字で書かれたそれはやはりグレイのものと大差ないものであった。パトロールの予定日、休日、マジックでの買い出し日、そしてグレイと同 7666

    mamedaihuku228

    DONEビリグレ小説②
    遠距離恋愛みたいなことしてるビリグレ。
     まだ肌寒さが残る早朝。珍しく薄い霧がエリオスタワーを包み込み、ロビーにいたビリーは少しでも寒さがマシになるよう、黒の手袋越しに両手を摩っては温めるように息を吐いた。ヒーローである事を示す黒を基調とした制服は、もうそろそろ上着を脱いでもいいぐらいの季節だが、今朝の気温で半袖は身体を冷やしてしまうし、かといって昼になれば長袖ではうっすらと汗を掻いてしまう。なんとも複雑な季節である。
    誰もが憧れるヒーローの居住地でもあるのだから、タワーの中ぐらい常に適切な温度を保ってくれればいいのだが、エコだとかなんとか環境とやらで、ある一定の時間はロビーなどの一部の室内機は切られているようだ。前にジャックとジャクリーンが言っていた。
     そんな事をぼんやりと考えながら、受付もいない無機質な空間のロビーで、ビリーは静寂に包まれながらジッと待っていた。
     前に届いたのは二日前。その前は四日前。そのもっと前はいつだったか。指折り数えるのも嫌になってしまった。
    受付の椅子に適当に座って、スマホのアプリ画面をタッチして、ログインボーナスを受け取る。そして日課のミッションをこなし、イベント限定のガチャを引く。もうそれ 8219

    mamedaihuku228

    SPOILERエリオス8章ネタバレ。ビリグレで捏造ありです。 冷たい手足の指先を、父がささくれた大きな手で温めてくれる。ビリーはたった一枚の毛布とベッドを、父と一緒に身を寄せ合う様にして包まって、互いに寒さをしのいでいた。
    あらゆる地域を回ってマジックを披露する父の収入は不安定で、狭い部屋にベッドを無理やり置いたような、何の設備も無い相部屋の格安のホテルに泊まる事なんてザラである。しかしビリーにとって、ベッドの狭さや寒さよりも気になるのが埃っぽい部屋の事だった。別のベッドで眠る男も、身なりやこういった格安のホテルに泊まる事からして、ビリー達と同じく金銭に余裕がないのだろう。だから彼から汗や男独特の濃い匂いがしても仕方がない事なのだ。それでも少々潔癖の気があるビリーにしてみれば、それも眉を顰めてしまう。それに何よりも、こういったセキュリティやプライバシーなんて存在しない場所では、窃盗が起こりやすい。ビリーももっと幼い頃に、ここと似たようなホテルで昼寝をしていたら、ポケットに入れて置いたお菓子と小銭が盗られそうになったのだ。幸いトイレから帰ってきた父がそれを取り返してくれたが、あれ以来誰かといる時は警戒するようにしている。
    汚い部屋に、相部屋の男。 4302

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    未完です!!!!(最重要項目)
    まだ別垢で作品あげてたときのやつ見つけたので供養。いつか完成させたい。まだおせっせしてないから年齢制限は付けません。
    「うぅ...」

    少し前に恋人になったビリーが情報屋の仕事で部屋を空けているとき、グレイは部屋を暗くしパソコンと向き合っていた。
    その画面には【年上 彼女 処女】と検索された結果が映し出されていた。

    「やっぱり...めんどくさいよね、はぁ...」

    【年上彼女はめんどくさい、処女だと尚更】
    【変に期待されるから萎える】
    【やっぱ若い子の方が嬉しい】
    そうしたマイナスの言葉が羅列しており、自分で検索をかけたことを少し後悔しそうになった。
    付き合いたては手を繋ぎ、少し経てばハグやキスもした。そこまで来ると、やはりもっと先に進みたいと思うのが当たり前である。
    ただ、グレイはビリーが初めての友達であり恋人であった。
    先のこと、つまりセックスをしたことがなく25歳になっても処女である自分にコンプレックスを抱いていた。
    さらに、相手は6歳も年下の未成年だ。
    年上で処女、グレイはそれらのことを気にしていたのだ。

    「...だめだ、またネガティブグレイって言われちゃう...でもなぁ、はぁ...」
    「そうそう、ポジティブグレイにならなきゃだめだヨ〜!」
    「ふぇ!?」
    「にひひ、ただいまグレイ♡」
    「お 1867

    mamedaihuku228

    DONE初夜的な感じのビリグレ。フェイスくんも出てきます。詳しく言うとただ準備をするだけで、エッチではありません。エッチな事はしてません。大切な事なので二回言いました。 寮に入った時に二人で選んだソファに並んで座り、それぞれのカレンダー帳に赤い丸の印をつける。グレイのカレンダー帳には新作のゲームやフィギュアの発売日など、自身の趣味に関する事や、仕事の事などがぽつりぽつりとメモされているぐらいだ。きっとビリーのものは自分とは違って、情報屋の事や友人との予定などで埋め尽くされているのだろうとグレイは思っていたのだが、一瞬中が見えてしまったそれはグレイと似たようなものだった。それに気が付いたビリーは「グレイのエッチ♥」だなんて、カレンダー帳を胸に当てて隠すので、偶然であるとはいえ人のプライバシーを許可なく覗き込んでしまったと、「ごめんなさい!わざとじゃなくて…!」と、慌てて両手で目を隠して謝った。
    「ウソウソ♪グレイなら見てもいいヨ。情報屋の方は別にあるから、こっちは完璧ぼくチン用」
     そう言ってビリーが中を開いて見せるのを、とりあえず情報屋での秘密保持などは問題が無い事にほっとしつつ、そろりと指の隙間から覗いてみるが、細かく綺麗な字で書かれたそれはやはりグレイのものと大差ないものであった。パトロールの予定日、休日、マジックでの買い出し日、そしてグレイと同 7666