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    おりや🎤

    @oriya_hpmiのpixiv掲載前のものなどを上げます。
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    おりや🎤

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    ⚠️独帝/SS/全年齢
    長引く残業に土砂降り。踏んだり蹴ったりだった👔だけど、居酒屋で落ち合った🎲と話しているうちにその気持ちは思わぬ方へ転がっていき…。

    先日の大雨でどぼどぼになってむしゃくしゃしたので、ドダいちゃいちゃしろ!!の気持ちを形にしました。
    ラブホの風呂場で着衣えっちもいつか書きたい🥳

    禍転じて 最悪だ。
     傘を差してもびしょ濡れになったスーツの袖口を重く感じながら、黒い雨傘を畳んで店先の薄汚れた傘立てに突っ込む。安居酒屋の戸をくぐって、滑りの悪いその扉をガタガタと後ろ手に閉めた。途端に雨音が和らぐ。もちろん、昭和から働いているだろうこの扉の防音効果によるものではない。ただ単に雨足が弱まったのだ。
     何だよ、くそ。狙いすましたように、俺が屋内に入った途端に弱まりやがって。せめてあと五分、早まるか長引くかしろよ。
     内心で歯噛みしていると、愛想の薄い店員が、お好きな席へどうぞ、と空になったビールジョッキを片手に一言投げてきた。それに「ああ、はい……」と答えつつ、店内に視線をめぐらせる。奥にある四人がけのテーブル席に、目当ての背中を見つけた。黒いファーに縁取られたフードつきの、緑のモッズコート。ブルー一色だった気持ちに、明るい陽が差し込んでくる。
    「帝統く——」
     いつものように足早に彼の元へ向かおうとして、顔をしかめた。……めちゃくちゃ気持ち悪い。足が。
     どぼどぼに濡れた革靴で一歩踏み出すと、どぼどぼに濡れた靴下がたっぷり溜め込んだ雨水をぐじゅりとあふれさせた。傘では防ぎきれないほどの土砂降りに濡れたスーツの袖口も、スラックスの裾も、胸に抱えた通勤用のビジネスバッグも、ずっしりと重くまとわりついてくる。
     ただでさえ残業が長引いてみじめな、しがない中年サラリーマンに追い打ちをかけた雨の置き土産に肩を落として、目的の四人がけテーブルへ向かった。
     帝統くんの向かいにある椅子の背もたれに手をかけると、焼き鳥串にかぶりついていた彼がようやく俺に目を向けた。
    「よお、えらく景気良く降られたな」
     俺の惨状を面白がる帝統くんに、可愛さよりも憎たらしさが勝つ。席に座りながら、俺は声を尖らせた。
    「そう言うなら、君の方はさっぱりだな」
     彼が着たままのコートには、雨の名残がほとんど見えない。雨粒がチラホラとファーにくっつき、雨の跡がフードの辺りにいくらか残る程度だ。ずぶ濡れの俺との差は何なんだ。
     むしゃくしゃする思いで見たテーブルには、唐揚げの小さなかけらと絞り終えたレモンやパセリが残る皿のほか、三分の二ほど飲み干されたビールジョッキ、丸裸になった串が四本転がる皿があった。これらは何個目の注文なのだか。
     そう思ったところで、ふとある可能性に気がついた。
    「……もしかして、待ち合わせの時間からずっと待っててくれた?」
     一時間半近く遅れるから、先に店に入っててくれ。そうメールはしたが、賭博狂いな彼のことだから、それだけの時間があればもうひと勝負すると思っていた。そうじゃなくて、ずっとここにいたのだろうか。雨にすっかり濡れたコートが乾いてくるほどの時間を、俺を待つために、一人で。
     残業やら悪天候やら、ちっぽけではあるが根の深い苛立ちを抱えていた胸が、思わぬ帝統くんのいじらしさにきゅんと甘く引き絞られた。ぐしょぐしょになった足元が、その気持ち悪さよりも浮遊感を強く訴えてくる。
     けれど、焼き鳥串の最後の肉塊を咀嚼し終えた帝統くんは、その串を皿に戻しながらあっさりと否定した。
    「んにゃ、まだ三十分も経ってねぇと思うぜ」
    「そうなのか……」
     期待が外れて内心しょんぼりしつつ、埃か何かでベタつくラミネートされたメニュー表を手に取る。やっぱり最初は生かな、とアルコールから一品へ視線を移しながら、帝統くんへ質問を続けた。
    「それにしては濡れてないな。今日は、さすがのお前も傘買ったか」
    「いや?」
    「……ネーチャンか誰かの傘に入れてもらったのか?」
    「いや?」
    「え……じゃあなんでそんなに濡れてないんだよ。お前、どこでもドアでも持ってるのか」
    「そんなん持ってたらラスベガスからモナコまで制覇しに行ってるわ」
     それもそうだ。だったらどうして、とメニュー表から帝統くんへ視線を戻すと、ちょうどビールを飲み干した彼が「すんませーん、生もう一個!」と店員に向かって声を張り上げた。俺も慌てて「もう一つお願いします!」と便乗する。
    「なんでって、あんま降ってなかったし」
    「はあ!? 嘘だろ!」
    「アア? そんなくっだらねー嘘つくかよ」
     俺はあんなに、消防車に頭の上から放水でもされているような雨の中を歩いてきたというのに、こいつが外にいるときは、こんな、ちょっとばかし濡れたかなって程度の雨だったっていうのか。なぜだ。日頃汗水垂らして真面目にあくせく働いている俺の方がひどい目に遭うなんて、世の中は理不尽すぎる。
     雨に冷えた両手で頭を抱えていると、帝統くんがひょいっと机上のメニュー表をかっさらっていった。
     次何食おうかなー、なんて呑気に呟く彼を、テーブルで項垂れながら恨めしげに見上げる。
    「好きに打ちまくって、外に出れば雨に降られなくて、人の金で自由に飲み食いか。イイご身分だな」
    「だろ」
     俺の嫌味に帝統くんは悪びれもせず、Vサインまでしてにまりと笑った。
    「このツキで明日、でっけぇ当たりをぶち当ててやるぜ」
    「……ホント、君は気楽でいいね」
     好きなことしか眼中にない彼に、嫌味なんて糠に釘。彼をちくちく刺すことは諦めて、ため息混じりに頬杖をついた。
    「当たりといえば、そんなにツイてるのによく切り上げられたな」
     俺が店に着く三十分ほど前にここに来たということは、一時間半遅刻すると言った俺のメールに合わせて来てくれたということだ。俺の方が、長引く残業やさっきまでの荒天の影響で、結局二時間の遅刻になってしまったから。
     なんだかんだ、俺との約束を守ってくれたのか。それなのに俺ときたら、宣言した時間すら大幅にオーバーして彼を待たせて——と、いつもの自責が顔を出したときだった。ビールを持ってきた店員に豚の角煮を注文し終えた帝統くんが、上げた口角を引きつらせて頬を掻いた。
    「あー、そりゃあ、まあ、お前との待ち合わせがあったし、なあ?」
     そう言う彼の目は、明後日の方を向いていた。声だってやけに高く上滑りして、落ち着きがない。
    「…………帝統くん、所持金は?」
    「…………」
     やましいことがありますとでっかく書いた笑顔を貼り付けたまま、その視線がさらに遠くへ逃げる。今日一番のクソデカため息が、口からこぼれ落ちた。
    「軍資金が尽きただけか」
    「そ、そんなわけねーだろ! 勝ってる中、ちゃんと時間を見て来てやったんだよ」
    「そうかそうか、それじゃあ今日は帝統くんが俺のためにギャンブルを切り上げてくれた記念日だな。せっかくだから、そんなありがたぁい勝利の金を少しは出してくれよ。その分、ここ以外は全部俺が持つから」
    「え。そ、それはちょっと、明日に全額ベットしてぇなあって……」
    「大丈夫、会計折半しろとか言わないよ。百円……いや、十円でいい。馬券一枚買うより安いだろ」
     営業先にすら見せたことのない、渾身の営業スマイルを向けてやる。今なら一二三に、どっぽちんいい顔で笑えんじゃん〜!と花丸をつけてもらえるはずだ。
     そんな俺のとびきり笑顔を見た帝統くんは、手と額をテーブルに勢いよくビタンッとくっつけた。
    「すんません、ビタ一文ありましぇん!!」
    「素直でよろしい」
     俺も何か頼むからメニュー貸して、と手を差し出すと、恭しい手つきで角の折れたラミネートメニューが献上された。
     まったくの無一文のくせに、遠慮なくバカスカ注文しやがって。俺が事故にでも遭って来れなくなったら、どうするつもりなんだ。
     帝統くんが俺のために——なんて淡い期待を裏切られ続けて、もう一度ため息がこぼれる。恋人になったからって、帝統くんがそれらしい甘やかな態度を見せるわけないと頭ではわかっているのに、ついつい期待をしてしまう。
     彼はそんな俺に、揉み手をしながら胡麻すり絶好調な猫撫で声を向けた。
    「いやぁカンノンザカサン、随分とお疲れのご様子で。あとで肩でもお揉みしまショーカ」
    「駄賃ならやらんぞ」
    「チッ……」
     居酒屋の喧騒に紛れさせる気もない舌打ちに、俺は何でこんな男に交際を申し入れたのだろうと遠い目をしたくなる。
     それでも、そんな賭博狂いのろくでもない男が愛しいことに変わりはなく、疲れた脳にさえ、別れを告げる選択肢は浮かんでこなかった。それどころか、これほどずぶ濡れになっていなければ、そんなろくでもなさすら可愛いだなんて頭が沸いた気持ちでいっぱいになっていただろう。
     そんな自分にご愁傷様と言いたいのか、帝統くんを可愛く思う余力がないことを嘆きたいのか、判別できない現状に三度目のため息が出た。
     手持ち無沙汰になったのか、煙草に火をつけた帝統くんが、吸い込んだ紫煙を吐き出しながらテーブルに肘をつく。
    「マジで疲れてんのな」
    「まあね」
    「ザンギョーのザンギョーしてたんだもんな」
    「まあ、うん。それもあるけど……」
    「けど?」
    「今日は雨の方がきつかったかな」
    「そんなに?」
    「そんなに。台風来てんのかってレベルだった」
    「へー」
    「へーって……お前も、音くらいは聞こえてたろ」
     メニューに書かれた餃子とホッケの間を往復していた視線を帝統くんに向けると、彼は慣れた仕草で灰皿に灰を落とした。
    「気にしてなかったから知んね」
    「あの轟音を……?」
    「もっとうるせーとこにいたしな」
    「ああ……」
     今日はパチンコ屋にこもっていたようだ。それにしたって、一度は静かな小雨の中を歩いたのだから、豪雨との差くらい気付けよ。そうは思ったが、彼の興味の外にある事柄について食い下がっても仕方がないことは、骨身に染みている。
    「ほんと、君は楽しいことだらけでいいね。こっちはずぶ濡れで、気分も下がりっぱなしだってのに」
    「何、トラックにでも水ぶっかけられたのか? ビシャーッて」
    「そうじゃないけど、着てるものが濡れるだけで気が滅入るだろ」
    「ふーん?」
     わかんねぇな、という声が聞こえてくるような帝統くんの反応に首を傾げた。
    「お前は違うのか?」
    「おう。だっておもしれーじゃん」
    「ええ……なんでだよ」
     今度は、こっちがわからんと言う番だ。若干引きながら問いかけると、彼は面白いという言葉を体現するように、にかりと笑った。
    「濡れっとさ、いつもと全然違う感触がするだろ? それがおもしれぇんだよ、川とかにジャブジャブ入ってるみたいで」
    「水遊びか」
     幼稚園児なら楽しいかもしれないが、枯れた三十路前には生憎とそんなものを面白がる余力はない。
    「まあ、楽しめるならそれに越したことはないんじゃないか。俺にはわからんが」
     すみません、と店員を呼ぼうと口を開いた俺の方へ、不意に帝統くんが身を乗り出してきた。なんだろう。
     顔を向けると、彼は目を細めてにぃっと笑った。今までのものとは、毛色の違う笑み。スイッチ一つで、周りの景色を切り替えられたようだ。目の前のテーブルも椅子も何もかもが消え失せて、この世に彼と二人きりになったような気がした。
     目の前で振られるオモチャに狙いを定めた猫のような彼の目に、全身にまとわりついていた冷たい雨の空気がじわじわと熱を帯び始める。
    「だったら勝負しようぜ」
     賭けのテーブルに大金を引き出させるその声が、禁断の果実に手を出せとそそのかす蛇のものと重なった。いつの間にか喉が干上がり、からからに乾いていたそこへ唾を飲み下す。
     呼吸すら止めて彼の表情に見入っていた俺の前で、煙草を手放したその指先が見慣れた黒のVネックシャツの襟元をクンッと引っ張ってみせた。帝統くんの谷間の陰影が、目に灼きつく。
    「びしょびしょになんのが楽しいか、楽しくないか。お前が楽しいと思えば俺の勝ち、俺が嫌だと思えばお前の勝ち」
     勝負の場は、いつものところで。そう締めくくられた言葉が示すのはただ一つ。日頃、彼と体を重ねるためだけに訪れる施設へのいざないだ。頭の中がそっちに流されて、今いる場所をすっかり忘れてしまう。
    「乗るか、乗らねぇか」
     独特に掠れた声を潜めて、帝統くんが低く笑った。その声は、魔法のように俺から思考力を奪った。勝ったら何をもらえるのか、負けたら何を支払うのか、どうやって「びしょびしょ」になるのか、一つも確認することなく言葉を返す。
    「乗る」
    「決まりな」
     帝統くんは、舌舐めずりをする獣のような笑みを残して身を引いた。テーブルの空きスペースに、豚の角煮が置かれる。いつの間にか、店員がテーブルの横にやってきていた。
    「っしゃ、いただきまーす!」
     ついさっきまで俺を絡め取っていた色香が嘘のようにからりとした声を上げて、帝統くんはさっさと角煮を口に放り込んだ。
     俺はといえば、彼の眼差しに晒されて石にでもなったように呆けていた。ビールジョッキにも手を出さず、ただただ彼を見つめる。と、帝統くんがとろりとした角煮のタレが残る箸先をこっちへ向けてきた。
    「お前が先にへばっても、お前の負けだからな」
     さっさと腹ごしらえをしろということか。にやりと笑って追加された条件に、俺はすぐさま手を挙げて、すでに遠くなっていた店員の背中に向かって声を張り上げた。
    「すぐに出せるものの中で一番腹にたまるものをください!」

     その後、帝統くんと二人で雪崩れ込んだラブホテルでのお風呂場着衣えっちは大層燃え上がり、俺は「生まれて初めて土砂降りに感謝した日」と手帳に書き込んだのだった。
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    おりや🎤

    DONE #ひふ幻ドロライ
    お題「怪談」

    ⚠️ひふ幻/SS/全年齢

    📚と二人で身を寄せ合って生きてきた🥂。いつものように夜のひとときを過ごしていると、凄まじい轟音と共に何かが砂漠に落ちてきて…。

    ⚠️ヒプクエ要素を含む、独自St☆llaパロ
    ※話術師→盗賊ですが、ゆくゆくは、しっかり話術師×盗賊になる二人です。
    君を連れ去る銀色の「——乾いた砂漠を吹き抜けていく、ヒュオオ、ヒュオオという寂しげな音に気を取られていると、不意に、背後からびちゃりと濡れた音がした」
     水晶の街を流れる清流のように涼しげなゲンタロウの声が、普段よりも低く、重々しげに言葉を紡いでいく。
     見渡す限りの砂、砂、砂。そんな砂漠の一角にある岩山の洞穴で、俺は寝台代わりに敷布をかけた細長い物入れに、ごろりと横になっていた。
     首元で一まとめに結んだ金の髪は、あと少しで毛先が鎖骨に届く。近々、はさみを入れて整えなきゃな。
     仕事用の貴族じみた上質な外套や、フリルの飾り袖がついたシャツなどはすべて、寝台を兼ねたこの物入れの中に仕舞ってある。
     代わりに身につけているのは、ねぐら用の安価な服だ。麻布で作られた、だぼっとしたシルエットの長袖シャツとズボンを身にまとい、ゲンタロウと二人きりの静かな時間を堪能している。
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    おりや🎤

    DOODLE⚠️独帝/SS/全年齢
    長引く残業に土砂降り。踏んだり蹴ったりだった👔だけど、居酒屋で落ち合った🎲と話しているうちにその気持ちは思わぬ方へ転がっていき…。

    先日の大雨でどぼどぼになってむしゃくしゃしたので、ドダいちゃいちゃしろ!!の気持ちを形にしました。
    ラブホの風呂場で着衣えっちもいつか書きたい🥳
    禍転じて 最悪だ。
     傘を差してもびしょ濡れになったスーツの袖口を重く感じながら、黒い雨傘を畳んで店先の薄汚れた傘立てに突っ込む。安居酒屋の戸をくぐって、滑りの悪いその扉をガタガタと後ろ手に閉めた。途端に雨音が和らぐ。もちろん、昭和から働いているだろうこの扉の防音効果によるものではない。ただ単に雨足が弱まったのだ。
     何だよ、くそ。狙いすましたように、俺が屋内に入った途端に弱まりやがって。せめてあと五分、早まるか長引くかしろよ。
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