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    おりや🎤

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    おりや🎤

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    #ひふ幻ドロライ
    お題「怪談」

    ⚠️ひふ幻/SS/全年齢

    📚と二人で身を寄せ合って生きてきた🥂。いつものように夜のひとときを過ごしていると、凄まじい轟音と共に何かが砂漠に落ちてきて…。

    ⚠️ヒプクエ要素を含む、独自St☆llaパロ
    ※話術師→盗賊ですが、ゆくゆくは、しっかり話術師×盗賊になる二人です。

    君を連れ去る銀色の「——乾いた砂漠を吹き抜けていく、ヒュオオ、ヒュオオという寂しげな音に気を取られていると、不意に、背後からびちゃりと濡れた音がした」
     水晶の街を流れる清流のように涼しげなゲンタロウの声が、普段よりも低く、重々しげに言葉を紡いでいく。
     見渡す限りの砂、砂、砂。そんな砂漠の一角にある岩山の洞穴で、俺は寝台代わりに敷布をかけた細長い物入れに、ごろりと横になっていた。
     首元で一まとめに結んだ金の髪は、あと少しで毛先が鎖骨に届く。近々、はさみを入れて整えなきゃな。
     仕事用の貴族じみた上質な外套や、フリルの飾り袖がついたシャツなどはすべて、寝台を兼ねたこの物入れの中に仕舞ってある。
     代わりに身につけているのは、ねぐら用の安価な服だ。麻布で作られた、だぼっとしたシルエットの長袖シャツとズボンを身にまとい、ゲンタロウと二人きりの静かな時間を堪能している。
     山と呼ぶには小さすぎるこの岩山は、水晶の街からはかなり遠い。不便な上に洞穴も小さなものばかりなので、ここをねぐらにしようとする物好きは自分たちくらいのものだった。それが気楽で、心地いい。
     夕飯を終え、明かりと暖のために焚いている火の中で、薪がパチリと爆ぜた。その向こう側で、夜闇に紛れやすい黒の長袖に、裾を引き絞ったゆったりとしたズボンを合わせたゲンタロウが、冷たい岩肌を背に座り込んだまま、手にした紙を読み上げていく。
    「砂と岩ばかりのこんな砂漠には、ありえるはずのない水音。しとどに濡れた海藻を全身にまとわりつかせ、ずるり、ずるりと引きずるような薄気味の悪いその音が——って、寝るな!」
    「あいてっ」
     火を回り込んでまで、ゲンタロウが頭をはたいてくる。
    「何だ、その態度は。お前が聞きたいって言うから話してやってるんだぞ」
    「めんご、めんご〜。ゲンタロウの声がすげー聴き心地よくってさぁ」
    「怪談話を子守唄にするな」
    「ごめんって」
     また握り拳を作ってみせるゲンタロウに、笑いながら体を起こした。
    「でもそれ、ほんとに怪談話?」
    「知るか。そう書いてあるから、そうなんだろ」
     ゲンタロウが、手に持っていた紙切れをぴらりと揺らす。それは、どこからか風に乗ってやってきた本の一ページだ。砂に埋もれていたのを、盗みの帰りに見つけたらしい。
     ゲンタロウは盗みで、俺は水晶の街での「語り」で、日々の糧を得ていた。
     語りというのは、語り部のように物語を語るわけではない。貴族に似せた、そこそこ仕立ての良い衣装をまとって街に出ては、相手の愚痴を聞いたり労ったりする。つまりは、会話を商売道具にして礼金をいただく仕事だ。お嬢さん相手が多いけれど、持ち上げられたがりの男なんかも、良いお客だったりする。
     俺がもっと稼げれば、ゲンタロウに盗みなんてさせずに済むのだろうか。そう考えたこともないではないが、俺の稼ぎだけで食えるようになったって、きっとゲンタロウは生き方を変えない。彼には彼の考えがあって、今の生き方をしているのだ。——彼の兄の、仇を取るという。
     ゲンタロウが盗みをするのは、ここから一番近い水晶の街を治める領主に近づくためだ。ゲンタロウの兄の仇だというその男は、何人もの兵や犬たちによって、街の奥の奥で丁重に守られている。
     その男の屋敷に音もなく忍び込み、警備兵をかわし、目的を達するために、ゲンタロウは盗みという実戦を通して、そのための技量を体に染み込ませていた。
     自分の声を子守唄にされて不満げなゲンタロウの手から、彼が読み上げていた紙切れを取り上げた。自分でも目を通すと、紙面の上部に記された章題には、砂地に現れる水の怪——とある。やっぱり、怪談の類いではあるらしい。
    「けど、怖いとは思わねぇなー。この、濡れた海藻を引きずるような薄気味悪い音……とかいうのが、具体的にイメージできないからかな?」
    「さあな」
     ゲンタロウは興味をなくしたように、彼が寝床にしている地面の敷布に寝転んだ。
    「あ、イイコト思いついた!」
    「ろくでもないこと、の間違いだろ」
     かったるそうに背を向けたゲンタロウのそばに、片膝をつく。
    「いいことだってば。ゲンタロウが考えてよ、怖い話!」
    「はあ?」
    「そうしようぜ、絶対その方が面白くて怖い話になるよ!」
    「知らねえ、やらねえ」
    「そう言わずにさぁ」
     ゲンタロウの肩をゆさゆさと前後に揺らすと、虫でも払うようにその手を退けられた。
    「やりたきゃ、てめえでやれよ」
    「ええー。やだよ、俺っちじゃ面白くならねぇもん」
    「話術が生業だろ。がんばれー」
    「棒読み! そりゃ、俺っちは話術師やってっけど、そういうお話作りとかは専門外だし」
    「俺はもっと専門外だ」
    「そんなことないって!」
     取りつく島もないゲンタロウに、自分でも思った以上に強い声が出た。頑なに振り向かなかったゲンタロウが、横になったまま、ちらりとこっちに目を向ける。
    「寝ぼけたことを。盗っ人が語り部なんて、貴族が鍬を持つようなもんだろ」
    「貴族にも、農作業が合う奴だっているかもしれないだろ」
     膝の上で、ぎゅっと拳を握った。
    「俺は、ゲンタロウの作り話が好きだよ。昔は、よく聞かせてくれたじゃん」
    「それは兄さんの——」
     反射的に言い返そうとしたゲンタロウが、グッと口をつぐんだ。きつく眉を寄せ、再び俺に背を向ける。
    「昔の話だ。もう、今は違う」
    「ゲンタロウ……」
     彼と出会ったのは今から十四年前、俺が十五のときだった。ゲンタロウは自分の年齢を知らないというけれど、おそらく十歳前後だったのではないかと推測している。栄養が足りないせいか、体はとても小さかったけれど、その物言いや思考力は、学のない大人をすでに超えていた。
     俺は、水晶の国の王都で商人をしていた家族と一緒に、砂漠地域との境に位置する街——ゲンタロウの仇がいる、あの街だ——に商品の仕入れにやってきた。王都から、これほど遠くにまで足を伸ばしたのは初めてのことだった。そうして水晶の国の領地内だからと油断していたせいで、砂漠を根城とする盗賊団に襲われてしまったのだ。
     盗賊団が父と積荷に群がっている隙にと、俺は母と姉に手を引かれて逃げだした。荒事は苦手だなんて言ってないで武芸を身につければよかったと、どれほど悔いたことか。
     けれど、いくら悔やんだところで歴戦の荒くれ者たちにかなうはずもなく。森の中まで追ってきた盗賊が母を捕らえ、姉まで連れていくのを阻止することができなかった。
     顔はいいからと、俺の足を潰してから連れてこいと命じられた下っ端二人を残して、俺たちを追ってきた奴らは引き上げていった。そこに現れたのが、ゲンタロウだ。
     彼は下っ端二人の不意をつき、その俊敏さと相手の思考を先読みして機先を制する利巧さを武器として、男二人を倒してしまった。
     下っ端二人から数少ない金目の物を剥ぎ取ったゲンタロウは、俺の身包みをも剥がそうとした。俺はそんな彼に、持っている物はすべてあげるから、家族を助けてほしいと訴えた。
     見るからに年下の子どもになんてことを頼むのかという罪悪感も、この盗賊団の一味ではないとはいえ、この子どもだって盗賊に変わりないのだという嫌悪感も、どちらもあった。それでも、無力な今の自分が立ち向かうよりも、家族を救える可能性が高くなると思ったから、なりふり構わずに頼み込んだ。
     けれどゲンタロウには、すげなく断られてしまった。この下っ端連中ならともかく、向こうとやり合うほどの技量は自分にはないと、至極冷静に。
     どうしてもやりたいなら自分でやれ、奴らの戦利品が増えるだけだろうがな——ゲンタロウのその言葉に、反論できなかった。
     俺が一人で戻ったところで、ろくな抵抗もできずに捕らえられ、良くて母や姉と同様に売り飛ばされて終わり。街に戻って自警団に掛け合っても、手持ちの金がないから動いてもらえない。
     俺は、そこで決断した。今は、生き延びることが第一だと。生きて知と力を磨き、この手で家族を救い出すのだ。きっとそれが、自分たちの身を挺してまで俺を逃がそうとしてくれた家族にも、応えることになる。
     そうして、あの手この手でゲンタロウを口説き落とし、俺は彼と一緒に生活するようになった。
     いつか必ず家族を救い出し、父の無念を晴らす。そう胸に誓ったところで、家族を見捨てたことには変わりがない。自責の念と悔しさ、後悔に苛まれ、眠れない毎日を過ごす俺に、ゲンタロウが語り聞かせてくれたのが、物語だった。
     別に、お前に聞かせてるわけじゃない。俺が忘れないために、繰り返し口にしているだけだ。
     ゲンタロウはそう言っていたけれど、彼の語るその物語が、俺を夢の国へいざなってくれたのは事実だった。
     彼の紡ぐ物語は、本で読んだ御伽話にはないものばかりで、続きが気になって仕方がなかった。それなのに、ゲンタロウの声が心地良すぎて、気がついたら夜が明けているのだ。
     何度も話の続きをねだっては、俺の意を汲まず、気ままに語られるゲンタロウの話を懸命に記憶した。数年が経ってようやく、バラバラに語られる物語の断片を、それぞれのストーリーとして一本につなぎ合わせられるようになった。それとほぼ同時期に、ゲンタロウは物語を聞かせてくれなくなった。
     理由を尋ねても、ゲンタロウは「もう寝物語がないと眠れねぇ歳でもないだろう」としか答えない。自分が忘れないために繰り返してるんだって、言っていたくせに。
     けれど彼の言うとおり、その頃にはもう、ゲンタロウに語り聞かせてもらわなくても眠れるようになっていた。よかったことではあるけれど、俺はそれが、どうしようもなくさみしかった。
     意識を過去から今に引き戻すと、俺に背を向けて横たわるゲンタロウを、じっと見下ろした。
    「ゲンタロウの物語は、人を幸せにするよ」
    「しつこい野郎だな。俺はもう物語なんて——」
     淡々としていたゲンタロウの声に、苛立ちが混じったときだった。外から、耳をつんざくような轟音が響き渡ってきた。膝をついた岩肌まで、振動で揺れる。とてつない何かが落ちてきたような、一つや二つどころではない爆弾が一度に大炸裂したような、今までに聞いたこともない音だった。
    「一体、何が……」
     移動用の足として飼育しているラクダも驚いたのか、下の洞穴が騒がしい。ゲンタロウと二人そろって、洞穴の入り口に下げた砂避けの布をまくり上げた。
     地上から三メートルほどの高さにある入り口から見回すと、砂漠を照らす月明かりの中に、砂煙がもうもうと上がっている。ここから二キロメートルはあるだろうか。
    「何だろう。水晶の連中が、新しい爆弾でも作ったのかな」
    「……だ……」
    「え?」
     ゲンタロウの言葉が聞き取れなくて振り向くと、彼の目は、得体の知れない砂煙に釘付けになっていた。その口元には、笑みが浮かんでいる。まるで魔性のものに魅入られたような、そこにある感情の読めない、底知れぬ笑みだった。
    「鍵だ」
     ゲンタロウが、俺の存在など忘れたような顔で繰り返す。問いかけるより先に、彼は洞穴の奥へ引き返した。愛用の半月刀を手に駆け戻ってくると、納刀したそれと己の手足だけで、あっという間に岩肌を下りていく。
    「ゲンタロウ!? ちょっと、どこに行くのさ!」
     ゲンタロウは答えない。止まらない。砂嵐に備えるためのマントすら身につけないまま、ラクダを繋いでいる下の洞穴に飛び込んだ。
     俺が入り口に立ち尽くしたまま彼の奇行に驚いているうちに、ラクダにまたがったゲンタロウがその手綱を引いた。走りだしたラクダが向かう先にあるのは、あの砂煙だ。
     胸が騒いだ。
     遠ざかっていくゲンタロウの背中に、言い様のない焦燥感が込み上げてくる。彼がこのまま、月明かりすら届かない闇に溶け込んで、どこか遠くへいってしまいそうな——。
    「待ってよ、ゲンタロウ!」
     慌てて、入り口の縄梯子を下ろした。自分のラクダの縄を解き、必死で彼の後を追う。
    「ゲンタロウ! ……ゲンタロウ!!」
     何度も何度も、声が枯れるほど呼びかけて、ようやく彼のラクダの速度が落ちた。けれど、彼自身は俺を振り返ることもなく、ただ前だけを——砂煙だけを見つめている。
     彼の心をこれほど惹きつけるあの砂煙は、一体何なのか。
     不信と嫌悪ばかりが募る中、俺は必死でラクダを駆った。ゲンタロウが速度をゆるめてくれたおかげで、なんとかあと一馬身というところにまで迫る。
    「ゲンタロウ、引き返そう! 今すぐ見に行くなんて、危険すぎる。何があるかわからないんだぞ!」
    「だから行くんだろうが」
    「な——」
     答えるゲンタロウの声は、初めて聞くほどに高揚していた。ラクダを走らせたまま、ゲンタロウが俺を振り返る。
     月明かりに照らされた彼の目が、信じがたいほどの輝きに満ちていた。獲物に狙いを定めたような、それでいて、好奇心を大いにくすぐられた子どものような無垢さを帯びた瞳。
     そんな目、一度たりとも見せたことがなかったじゃないか。俺といるときには、一度も……。
     再び前を見据えたゲンタロウが、歌うように続けた。
    「こんなこと、夢にも思わなかった。予想もしなかった。何かある。あそこには、何かが——俺の世界(じょうしき)を超えた、この変わり映えのない毎日(たいくつ)を突き崩す何かが、きっと」
     その物言いに込められた熱には、覚えがある。ひどく似ているのだ。剣舞を披露する見目麗しい男について語る令嬢の、夢見るような情熱に。
     ああ、やっぱり。
     ゲンタロウの口から語られる言葉の方が、どこかの誰かが記した怪談話なんかより、よほどこの心を揺さぶる。怪談話の切れっ端にはちっとも冷えなかった腹の中が、今は氷塊をねじ込まれたように冷たく重く沈み込んでいた。
     ゲンタロウが一目散に目指す砂煙の中で、銀色の何かが月の光を弾いた。砂に突き刺さったそれは、水晶の街で使われる渡し舟の何倍もありそうだ。流線形を基礎にしているようだけれど、砂煙に紛れてその全容は依然掴めなかった。
     見たことも、聞いたこともない、想像すらつかないもの。
     その点では、砂煙の中にそびえ立つそれも、ゲンタロウが読んでくれた怪談に記されていた「濡れた音」も、どちらも同じはずなのに。
     砂煙に埋もれる銀色のそれだけが、俺の恐怖を掻き立てた。ゲンタロウの目を、興味を、心を、惹きつけてやまないそれだけが。
     砂煙の中のそれに近づくにつれて、ゲンタロウの駆るラクダの足がまた速まっていく。俺には見せてももらえないゲンタロウの瞳が、未知を求めて輝いているだろうその表情が、俺には、この世の終わりを告げる神託よりも、恐ろしく感じられて堪らなかった。



     このときの俺は、まだ知らなかった。砂煙を巻き起こしたそれが、墜落した宇宙船であることも、それに乗っていた剣の星の王様が、俺たちの運命を大きく開けさせることも。
     知らないまま、ゲンタロウの心を一瞬で奪い去ったその存在に、血が凍りつくほどの恐怖と憎悪を、一人静かに燃やし続けていた。
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    おりや🎤

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    お題「怪談」

    ⚠️ひふ幻/SS/全年齢

    📚と二人で身を寄せ合って生きてきた🥂。いつものように夜のひとときを過ごしていると、凄まじい轟音と共に何かが砂漠に落ちてきて…。

    ⚠️ヒプクエ要素を含む、独自St☆llaパロ
    ※話術師→盗賊ですが、ゆくゆくは、しっかり話術師×盗賊になる二人です。
    君を連れ去る銀色の「——乾いた砂漠を吹き抜けていく、ヒュオオ、ヒュオオという寂しげな音に気を取られていると、不意に、背後からびちゃりと濡れた音がした」
     水晶の街を流れる清流のように涼しげなゲンタロウの声が、普段よりも低く、重々しげに言葉を紡いでいく。
     見渡す限りの砂、砂、砂。そんな砂漠の一角にある岩山の洞穴で、俺は寝台代わりに敷布をかけた細長い物入れに、ごろりと横になっていた。
     首元で一まとめに結んだ金の髪は、あと少しで毛先が鎖骨に届く。近々、はさみを入れて整えなきゃな。
     仕事用の貴族じみた上質な外套や、フリルの飾り袖がついたシャツなどはすべて、寝台を兼ねたこの物入れの中に仕舞ってある。
     代わりに身につけているのは、ねぐら用の安価な服だ。麻布で作られた、だぼっとしたシルエットの長袖シャツとズボンを身にまとい、ゲンタロウと二人きりの静かな時間を堪能している。
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    おりや🎤

    DOODLE⚠️独帝/SS/全年齢
    長引く残業に土砂降り。踏んだり蹴ったりだった👔だけど、居酒屋で落ち合った🎲と話しているうちにその気持ちは思わぬ方へ転がっていき…。

    先日の大雨でどぼどぼになってむしゃくしゃしたので、ドダいちゃいちゃしろ!!の気持ちを形にしました。
    ラブホの風呂場で着衣えっちもいつか書きたい🥳
    禍転じて 最悪だ。
     傘を差してもびしょ濡れになったスーツの袖口を重く感じながら、黒い雨傘を畳んで店先の薄汚れた傘立てに突っ込む。安居酒屋の戸をくぐって、滑りの悪いその扉をガタガタと後ろ手に閉めた。途端に雨音が和らぐ。もちろん、昭和から働いているだろうこの扉の防音効果によるものではない。ただ単に雨足が弱まったのだ。
     何だよ、くそ。狙いすましたように、俺が屋内に入った途端に弱まりやがって。せめてあと五分、早まるか長引くかしろよ。
     内心で歯噛みしていると、愛想の薄い店員が、お好きな席へどうぞ、と空になったビールジョッキを片手に一言投げてきた。それに「ああ、はい……」と答えつつ、店内に視線をめぐらせる。奥にある四人がけのテーブル席に、目当ての背中を見つけた。黒いファーに縁取られたフードつきの、緑のモッズコート。ブルー一色だった気持ちに、明るい陽が差し込んでくる。
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    ⚠️ヒプクエ要素を含む、独自St☆llaパロ
    ※話術師→盗賊ですが、ゆくゆくは、しっかり話術師×盗賊になる二人です。
    君を連れ去る銀色の「——乾いた砂漠を吹き抜けていく、ヒュオオ、ヒュオオという寂しげな音に気を取られていると、不意に、背後からびちゃりと濡れた音がした」
     水晶の街を流れる清流のように涼しげなゲンタロウの声が、普段よりも低く、重々しげに言葉を紡いでいく。
     見渡す限りの砂、砂、砂。そんな砂漠の一角にある岩山の洞穴で、俺は寝台代わりに敷布をかけた細長い物入れに、ごろりと横になっていた。
     首元で一まとめに結んだ金の髪は、あと少しで毛先が鎖骨に届く。近々、はさみを入れて整えなきゃな。
     仕事用の貴族じみた上質な外套や、フリルの飾り袖がついたシャツなどはすべて、寝台を兼ねたこの物入れの中に仕舞ってある。
     代わりに身につけているのは、ねぐら用の安価な服だ。麻布で作られた、だぼっとしたシルエットの長袖シャツとズボンを身にまとい、ゲンタロウと二人きりの静かな時間を堪能している。
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