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    巣豆腐

    tsb腐 北くんはかわいい
    あまり表に出してないやつを出してる 雑です

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    巣豆腐

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    ヒノ北 タバコと匂いと帰り道の話
    付き合ってませんがボディタッチが多いです

    「あ〜、疲れた〜……」
    もう定時を過ぎ、窓から暗い空が見える。オフィスにはもう自分しかいなそうだ。ちょっと休憩しようかな……久しぶりに喫煙所でも行こう。この前アメリックに
    「ヒノモトはタバコ吸うんじゃねえぞ。俺の好みじゃねえからな。」
    とニヤつきながら言われてしまったので、実質オフィスではタバコを吸うことはできなかった。ティータイムには帰ってしまったアメリックへのあてつけじゃないけど、今日は吸ってしまおう。最近見つけた穴場の喫煙所へ歩いていく。どうせこんな時間までオフィスにいる人なんて自分しかいないだろうし、推しのソロ曲を口ずさみながら足を一歩また一歩と動かした。(スペインさんはフラメンコを踊って帰ってしまった。仕事は?)
    ノックもせずに喫煙所に入ると、北朝鮮くんがタバコを吸っていた。俺が入室してきたことが予想外だったらしく、俺を警戒して、開いていたスマホをポケットに入れた。
    「あっ、すみませんノックしないで入っちゃって、えっと、ご一緒してもいいスか?」
    「……いーよ」
    俺の表情筋がちゃんと働いたおかげでにこやかな愛想笑いはできたものの、よりにもよって、言うてそんなな関係の北朝鮮くんと二人っきりになってしまった。気まずい。入ってしまったものは仕方がないが、正直さっさとタバコを吸ってここから出たい。とりあえずいつものタバコとライターをポケットから出そうとした。タバコはあったがライターが無い。安いプラスチックの感覚を探すが、出てくるのはハンカチと衣服の糸くずだけだった。
    「……あれ、ライター……。あー、北朝鮮くん、火持ってるかな?」
    「持ってない。油なくなったから」
    「あっ、そっか。どうしよっ?!?!?!」
    「うごははいれ、そろままそれくわえへ」
    急に北朝鮮くんが俺の顔をつかんで、北朝鮮くんと俺がくわえたタバコ同士の先をくっつけた。俺から吸うと赤い火がこちらにうつる。俗に言うシガーキスだ。近いから、いつもはあまり見えない北朝鮮くんの深淵のような眼がじっとこちらを見てくる。俺は今変な顔をしていないだろうか、火照った顔の熱が北朝鮮くんの手に伝わっていないか心配だった。そんな状態が何秒か続いた後、ぱっと手が離れた。
    「——はい、おっけー。」
    「〜〜っ?!」
    「何。火貸してあげたじゃん。」
    「……っいや、あり、がと。」
    「ん」
    「……また、ここ来ていい?」
    「ここあんま人来ないから、うるさいやつとか連れてこないならいい。好きにすれば」
    「ありがと、北朝鮮くん」
    「誰にも言うなよ、今の」
    「……うん」
    それから、たまにこの喫煙所で北朝鮮くんとタバコを吸い終わるまでの時間で駄弁ることが多くなった。もちろんアメリックがいないときだからいつも喫煙所の窓から見える景色は暗いけれど。
    そして、ごくたまに、わざとライターを忘れていき、直接火をもらうこともある。その時だけ、北朝鮮くんとしっかり顔を合わせることができるのがなんとなく嬉しいから、なんていう些細な理由だ。このときにはもう彼に対する苦手意識は一方的に消え去っていた。

    「おいヒノモト! ヒノモトはどこだ!! 逃げるな!!」
    また別の日、なぜか俺の知らないところでアメリックの逆鱗に触れてしまい、何もわからないが捕まったらなんらかされそうなので逃げていると、咄嗟にあの喫煙所を思い出し、そこへ逃げた。ちょうど北朝鮮くんがいたので、小声で
    「北朝鮮くん俺のこと隠して!」
    と言ったのも束の間、遠くからバタバタとアメリックの怒号と足音が聞こえてきた。
    「ヒノモトはこっちに逃げたか!!」
    ヤバい。近づかれている。確実に声と足音が大きくなってくる。そう感じた途端、強い力に腕を引っ張られ、バタンと音がしたあと、視界が狭く、暗くなった。
    多分ここは喫煙所の隅に放置されていたロッカーの中だ。思考がまとまらず、困惑していると
    「しっ、しずかに」
    と至近距離で北朝鮮くんの声が耳元で囁いた。そういえば俺は今、北朝鮮くんと一緒にロッカーに入っている。すごく近い。上半身はほぼ密着している。北朝鮮くんの手が俺の後頭部にまわって、肩に頭を押し付けさせられ、声が出せない。北朝鮮くんの匂いがする。
    「チッ、こっちにはいないか……早く出てこいヒノモト!」
    暴君の足音が遠のいたあと、ロッカーから雑に放り出されて床に手をついた。服についた埃を払う北朝鮮くんが不機嫌そうに俺を詰め寄る。
    「なんなの?」
    「いや〜その、なんか怒らせちゃったっぽくて……」
    「はぁ〜〜。隠してあげたんだから感謝してよね」
    「(すげえデカい溜息吐かれた……)うん……ありがと……」
    「あー、ボクのタバコが……」
    「あ、ごめん」
    北朝鮮くんは俺を隠すとき、とっさにタバコを灰皿に押し付け、そのままロッカーに突っ込んだんだっけ。
    「ねえ、」
    「ハイ……」
    「ちょっとくっついていい?」
    ……??
    彼はいつもと変わらない表情でそう俺にきいた。普通に意図が分からない。どういうことだ?なんかミスったか?くっつくこと自体は別に減るもんも無いからいいけど。
    「??まあ、いいスけど……?」
    「こっち来て」
    またロッカーの中に入るよう催促され、さっきよりは優しい入れ方をされた。
    「な、なんすか……?」
    「んー」
    北朝鮮くんが俺の身体にぐりぐりと顔を押し付けてきた。今更恥ずかしくなってきたが、もう後戻りはできない。軽く了承してしまったのは悪手だったかもしれないなと後悔した。
    「石鹸の匂いする……」
    「に、匂い嗅いでるの?」
    質問に答えない北朝鮮くんの形のいい鼻がすんすんと動いている。猫みたいだ。
    「落ち着く匂いする」
    「そう?」
    「ネクタイ外していい?」
    「それは見つかったときが怖いかな」
    だめかぁ、と言いながら彼は俺の首筋から横に垂らした髪の毛に鼻先を移動させた。心臓の鼓動が激しくなる。こんなの一歩間違えたら事案だし、ちょっとくすぐったくなってきたし、あとこれ以上アメリックを放置するとヤバそうだ、という理由を咄嗟につけて彼の体を引っぺがした。彼は少し不満そうだったが、大人しく俺の言い分を聞いてくれた。周りに一緒にいたことがバレないよう別々に喫煙所から出た。

    「ヒノモト!!」
    「声でっか……うるさ……」
    耳を押さえながら西側のデスクに行くと、ご機嫌ななめの米国サマがいた。
    「お前なあ、俺が呼んだら来いよ」
    「いやあ、ちょっと取り込み中で……」
    にへらと笑うと怪訝な顔で「ったく……」と呆れられてしまった。同僚ながら、独占欲が強いなと思う。
    「とりあえずお前を裏切ることはないからな」とか言っておいたので、その場はごまかせただろう。
    「ヒノモトさーん!」
    「あ、台湾くんに呼ばれたから行くわ。そんじゃな」
    「……」
    アメリックは呆れて声も出ないようだった。

    その夜、また形だけの「残業」をし、オフィスにふたりになったあと、例の喫煙所へ足を運んだ。ふたりしか居ないなら近くの喫煙所でもいいのだけれど、なんとなくあそこの喫煙所がよかった。
    「もうこの時間は俺たちしかいないね」
    「うん、残業してた奴らも帰ったし」
    などという軽い雑談をしながら例の場所へ着くと、まずはタバコを一本吸う。
    「ライターは」
    「今日はある」
    「よし。なんかいっつもライター忘れるよね日本」
    「そんなことないよ」
    ふたりで暗くなった空を見ながら苦い煙をくゆらせる時間はけっこう好きだ。灰皿に灰を落として、煙を肺に入れ込む。身体に染み込む悪しき成分を感じる。体に蓄積した疲れが少しやわらいだ。
    一本吸いきったところでまたポケットからタバコを取り出そうとすると、北朝鮮くんの手が俺を静止させた。前髪に隠れて見えづらい二つの目が、少し上目遣いで俺をとらえる。
    「ね、」
    「どうしたの」
    「嗅がして」
    「一日働いた後だし、今タバコ吸ったけど」
    「いい」
    北朝鮮くんはそう言って、勝手に俺の簪を抜いた。頼まれたし、断る理由も無いしと自分に言い訳をしてから、手を半端に広げて「いいよ」と言う。ぽすんと俺に寄りかかり体重を乗せてきた。さらさらな黒い髪の毛が俺の首をくすぐる。
    「いい匂いする」
    「そうかな」
    「香水の匂いがしない。石鹸と畳と紙とタバコ」
    それはそれでいい匂いなのか?と疑念はあれど、彼の好みではあるのだろうか、ただ無言で俺は彼に嗅がれていた。まかり間違って不純な気持ちがわかないように必死に自分の中の何かを抑えた。
    「へえ〜……たまにこういうことしたい?」
    「したい。落ち着く」
    「……そ、そっか」
    冗談のつもりで言ったのに肯定されてしまったときはもうこちらからは何もできない。突っ走るしかないんだ。俺の声震えてないかな。
    「ネクタイ外していーい?」
    「だ、第一ボタンまでなら」
    しゅるしゅるとネクタイを外され、シャツの第一ボタンを開けられた。北朝鮮くんは鼻先をシャツの襟と首元の間に入れ、無意識なのか俺の首に頭をすりよせながら匂いを嗅いでいる。もうタバコなんて彼の眼中に無かった。
    「他の人にもこういうことするの?」
    「子どものとき韓国の匂い好きでたまにしてたけど、アイツ香水つけるようになったからやめた」
    「へえ」
    なんとなく韓国くんに対しての勝利を感じた。北朝鮮くんはまだ俺の身体に顔を押し付け、呼吸を繰り返している。
    こういう静かで言うことを聞く従順な姿を見ると、デスクに紙飛行機を飛ばすあの問題児と同一人物とは思えないほどいい子に思えてくる。母性ってこういうことなのかもしれない。
    「んー……なんかねむい」
    「え、社宅どこ?」
    「〇〇の☓☓……」
    ヤバいかも、このまま寝て朝になって他の社員にバレたらたまったもんじゃない。特にアメリックには。
    「と、とりあえず北朝鮮くんの社宅に帰ろう。歩ける?」
    「あるける」
    心なしかふわふわしている北朝鮮くんの腰を支えながら、雑に荷物を背負ってエレベーターに乗り、とりあえず会社のビルから出て社宅を目指した。
    「社宅まで歩いていくからね、がんばろ」
    「わかった、……ねえ」
    「どうしたの?」
    「支えられなくても歩けるからいい」
    「あ、ごめんね」
    ぱっと彼の脇腹に回した手を離したら、なぜか手首をがっとつかまれた。
    「……やっぱ歩けない、から……手、つないでよ」 
    少しうつむいて、目を合わせずに彼はそう言ってきた。暗くてよく見えないが、少し耳が赤い気がする。衝撃が脳に突き刺さったのを感じた。きっと彼は支えなどなくても歩けるのに、じゃあその赤面ってそういうことじゃん。そんな気持ちと鼓動の高まりを極力抑えながら、
    「うん、いいよ」
    と言って、温度をもった北朝鮮くんの手を握った。ただ同僚を介抱しているだけだから、と誰に言うわけでもないのにそう心の中で叫んだ。
    歩いている途中、北朝鮮くんの顔は見えなかったが、こちらから彼の手をきゅっと握ると、何秒か遅れて同じようにきゅっと握り返してくれた。会社から社宅までの距離はそんなに遠くないのに、なんとなくいつもより長い気がした。

    「ここの部屋?」
    「うん」
    ぽつぽつと会話しながら歩いていると、もう北朝鮮くんの社宅のドア前に着いてしまった。北朝鮮くんはプライベートを知られるのが苦手らしいので、ここでお別れだと思うと、少し寂しい。
    「それじゃあ……わっ?!」
    またね、と言いそうになったとき、北朝鮮くんに後ろから抱きしめられた。彼の声と俺の体に回した手は震えていた。
    「え、どうしっ、」
    「なんでそんなにやさしくするの」
    「な、なんでって」
    「だって、ボクいっつもちょっかいばっかかけてるのに、ふつうこんなことしないだろ」
    普段の紙飛行機やら反抗やらのことを言っているのか。ちょっかいの自覚はあったんだ。
    「いやあ……なんでだろ」
    「なんなの、そんなんだからアメリカに頼りっきりになるんだよ」
    「痛いとこつかれたなあ。まあ、」
    俺は身体を回転させ、涙ぐんだ北朝鮮くんを正面から抱きしめた。
    「これから考えればいいんじゃないかな」
    「あっそ。……もう遅いからうち入れば」
    「お言葉に甘えて」

    そのあと、北朝鮮くんの社宅に入れてもらって、料理を作ったりお酒を飲んだりして一夜を明かした。いや、ほとんどは北朝鮮くんの作ったペーパークラフトや工作に興奮していた。北朝鮮くんのペーパークラフトはすごい。紙飛行機がかわいく思えてくる。作業台は汚いからと見せてもらえなかった。北朝鮮くんと一緒にアメリックに渡された戦艦を作ってみたい。
    そんなこんなで、明日も平日なので寝ることにした。もう26時を過ぎている。
    「普通に良いお泊り会だね」
    「ずっと思ってたけどさあ、社宅に元々ついてるベッド大きくない?」
    「それはほら、うちの会社ってグローバルだから、world規格なんじゃない」
    「アジアンには大きいなあ」
    「ワンチャン北朝鮮くんと俺で一緒に寝れる」
    「いや寝れるんじゃない、ほら」
    北朝鮮くんは大きめのベッドに寝転び、両腕を広げて「来い」という合図を出してきた。自分をかわいいと自覚していなきゃできないだろこんなの。彼はあざといのか、それとも意外と天然属性なのだろうか。勇気を出し、隣に寝転んでみた。ベッドは成人男性二人ではやはり少し狭く、ギリギリまでベッド際まで攻めないと適度な距離が保てない。つまり普通に寝るとかなり近くなる。
    「まあ大人ふたりじゃ狭いよ」
    「そお?寝れるからいいじゃん」
    彼は目を細めてけだるげに笑い、警戒心0で相槌してくる。心臓がギュッとなる。ずるい。かわいい。彼は小さいあくびをした。
    「あーねむい、電気消して」
    「こ、このまま寝るの??」
    「……やだ?」
    「めっそうもございませんッ!!」
    しれっとパシられて電気を消すと、部屋の光源は窓からさす星明かりだけとなった。
    北朝鮮くんのじわりとした体温が伝わってきて眠ろうにも眠れない。俺の社宅の部屋にも同じベッドがあるはずなのに、彼と一緒だとなんとなく違うように感じる。
    正面から吐息が聞こえる。……え?北朝鮮くんもう寝ちゃった?顔が近い。……北朝鮮くんの目にクマができている。最近彼に対する経済制裁(俺もしてるけど)や、まあまあ大きいプロジェクトが重なっていたいたため、ストレスで眠れなくなっていたのだろうか。彼も彼なりに頑張っていたようだったし、今日の行動も疲れてたから気が抜けてただけかもしれない。彼のツンデレのデレの部分を見ることができただけで儲けものだ。俺も眠くなってきたし寝よう。明日からは同僚として普通に接して、湧いた不純な気持ちは無視してしまおう。
    ……北朝鮮くんのこと好きだって、バレてなきゃいいけど。
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