虎化一虎のふゆとら 桜は、酒を飲む口実に自分の存在を使うから、人間が嫌いだ。
でも、桜は自分の存在を忘れられるのが怖くて怖くて、毎年壮麗な花を咲かせていた。
今年も都会の公園に咲く桜はピークを終え、花びらは散り地面で踏み潰され、かつて瑞々しかったその花弁は所々が茶色く変色している。やがて緑の葉が生え始めるとお世辞にも綺麗とは言えず、毛虫がマンションの住人の如く住み着き始め、また桜は存在していないかのように誰にも見向きされなくなる。
しかし、そのみすぼらしい桜をじっと見つめる青年が、いた。
松野千冬の経営しているペットショップは展示している子犬、子猫のため19時ごろには閉店する。だが必ずしも閉店時間と退勤時間は同じとは限らないのだ。
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