つばめさる最近、つばめを見かけなくなった。
春、今年もつばめ達が舞い戻ってきた。この世で最も安全な場所のうちの一つである忍術学園の、しかも教師たちの住まいを兼ねる職員棟の軒先に巣を構えた、お目が高く肝の据わったつばめ達である。同一個体なのか子孫か何かなのかはわからないが、つばめ達は毎年学園に帰ってくる。つばめは我々にとって害虫を食べてくれる益鳥であり、また縁起がよいとも言われるので、学園では彼らの来訪を快く受け入れている。唯一人間が頭を悩ませる彼らの落とし物問題についても、巣の下に竹ざるを吊るして反故紙を敷く形の対策を用具委員会が考えてくれたため、ずいぶんと楽になった。
つばめのつがいは巣を作り、卵を産み孵し、ギャアギャアと我先にと餌を強請るひなに食べるものを与えて育てる。そうして大きくなったら、子どもたちは親に教わって飛ぶ練習をしたり、餌を獲る練習をしたりする。最初は下手くそだった飛翔がずいぶんと様になるところは見ていると嬉しい。おそらく教師という生きものは、ひとが成長し、育っていく様を見守るのが好きなのだと思う。一番最後まで巣に留まっていた幼鳥が、そのうちに他の兄弟と見分けがつかないほど上手く飛ぶようになった。姿も大人のつばめとそう変わらないように見える。そんな彼らの姿が近頃ぱたりと見えなくなったのだ。
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