……【沖土】界
屯所の夜は、淀み、粘り気を帯びていた。灯りは片隅だけを照らし、畳を明暗が交錯する将棋盤のように切り分けていた。竹刀が空気を切る音は短く、鋭く、どこか上の空の切れ味を伴い、広い空間に一瞬反響すると、すぐに更に深い静寂に飲み込まれた。
沖田総悟は明るみに独り立ち、最も基本的な素振りを繰り返していた。動作は申し分なく、力は完璧な軌道に収まっている。汗が鬢を伝わり、濃い色の隊服の襟元へと消えた。彼の顔には表情がなく、いつもの戯れや冷たさは消え、ただ無関心とも言えるほどの集中だけが残っていた。紅い瞳は伏せられ、その視線は一振りごとに、竹刀の先が空気に残した、瞬く間に消える残像へと落ちていた。
土方十四郎は道場の入口の影に寄りかかり、指の間に挟まれた煙草の火が薄暗がりで明滅していた。それはまるで疲れた一つ目のように。煙は音もなく立ち上り、彼の深く刻まれた眉間と、眼底に沈んだ重い疲労感をぼやけさせた。彼は中に入らず、ただ見ていた。沖田の、没頭しているようでいて実は虚ろな練習を。張り詰めた、今にも折れそうな背筋のラインを。二人の間に漂う無言の緊張は、どんな喧噪の対峙よりも息苦しいものだった。
土方は煙草を消した。かすかな火の粉が闇へ落ち、音もなく消えた。彼は足を踏み入れ、その足音が静寂の中に特に鮮明に響いた。沖田の方へは向かわず、刀架の傍で立ち止まった。指が冷たい木の架を撫で、ついには沖田のもの――加賀清光の鞘尻へと留まった。指先が冷たい鮫皮の鞘に一瞬触れ、馴染み深い、武器特有の静謐で殺伐とした気配を感じ取っている。
沖田の素振りが止まった。振り返りはしなかったが、背筋のラインは更に張り詰めたように見えた。満月の弓のように。空気が凝り固まったかのようで、塵の舞い落ちる音さえもはっきりと聞こえるほどだった。
「鍔が緩んでいる。」土方の声が響いた。低く落ち着いて、どうでもいい事実を述べるかのように。彼は沖田の横に歩み寄り、一歩の距離を保ち、視線は沖田本人ではなく、持ち主が無造作に床に置いた練習用竹刀へと落ちた。「振ると軋む。」
沖田は相変わらず動かず、応えもしなかった。ただ、竹刀を握る指の関節がわずかに白むだけだった。
土方は腰を下ろした。彼はその竹刀を手に取った。動作は自然でごく普通、何の変哲もない隊務を処理するかのように。薄暗い灯りが、彼の俯いた横顔と集中した眼差しを浮かび上がらせた。彼の荒れた指が、柄巻きと鍔の固定部分を注意深く点検する。まるで慎重に扱わねばならぬ精密機械を調べているかのように。しばらくして竹刀を置くと、今度は自身の腰から小さな革袋を外した。中には簡素な工具と予備の柄巻き紐が入っている。
彼は何も言わなかった。道場に残る音は、彼が竹刀を分解し、巻き直し、補強する時に出す微かなこすれ音だけだった。この音は巨大な静寂の中で無限に増幅され、奇妙で、胸を締めつけるようなリズムを帯びていた。
沖田の視線がようやく動いた。虚空から、土方の俯いた、手元の刀の柄に集中する頭へと落ちた。その紺色の髪の中に、幾筋か目立つ白髪が混じっているように見えた。土方の指の動きはとても安定していて、長年刀を握ってできた分厚い胼胝(たこ)がついていたが、今は異常に…丁寧だった。「鬼の副長」のイメージとは相容れない丁寧さ。
なぜ彼はここにいる?
なぜ彼はこんなことを?
その二つの疑問が沖田の脳裏をかすめたが、すぐに更に深い沈黙に飲み込まれた。答えはない。必要もない。詰問も挑発も、今この時は色褪せて余計に思えた。土方十四郎の存在そのものが、この重い夜のように、音もなく、しかし至る所に存在し、彼の呼吸の間に重くのしかかっている。
土方はようやく直し終えた。立ち上がると、補強された竹刀を沖田に返した。動作は落ち着いて、余計な意味は一切なく、貸した物を返すかのようだった。
沖田は無意識に手を伸ばして受け取った。指先が、避けられずに、土方が差し出した刀の柄元に触れた。同時に、相手のまだ完全には離れていない、薄い胼胝(たこ)のある指の腹にも。
その一瞬の接触は、錯覚かと思うほど短かった。
冷たさと温もり。
硬さと粗さ。
言い表せない電流、あるいはもっと深い痺れが、指先から一瞬で沖田の腕を駆け上がり、心臓へと達した。彼は柄を握る手を思わず強く締め、巻き直したばかりの紐を再び切りそうになるほどだった。
土方は全く気づいていないようだった。彼は既に手を引き、再び一歩の距離の外へ戻っていた。彼の落ち着いた視線が、沖田の瞬間的にこわばった顔を掠め、最終的に刀を握る彼の手へと落ちた。
「握りが硬すぎる。」土方が再び口を開いた。声は相変わらず抑揚がなかったが、深い淵に投げ込まれた小石のように、沖田の心の奥底で幾重もの無言の波紋を広げた。「力は筋に収めるものだ。指の骨にじゃない。手を傷める。」
そう言い終えると、彼は何の返答も待たず、沖田をもう一度見ることもなかった。あたかも来た目的は果たしたかのように。彼は背を向け、紺色の後姿が再び道場入口の影へと溶け込み、足音は次第に遠ざかり、ついには屯所の深い夜の奥底へと消えた。
道場には、再び沖田独りが残された。
彼は立ち尽くしたまま、長い間動かなかった。手にした、土方が補強し調整した竹刀は重く、見知らぬ、自分以外の誰かの温もりを帯びていた。指先にほんの一瞬触れたあの場所には、今も消えかけたあの粗い感触が残っているようで、まるで目に見えない烙印のようだった。
彼はゆっくりと、非常にゆっくりと手を上げ、再び素振りの構えを取ろうとした。しかし、切っ先が虚空を指した時、これまでにないほどの渋滞感が彼を捉えた。土方の言葉が耳朶に響く――「握りが硬すぎる」、「力は筋に収めるものだ。指の骨にじゃない」。
彼は無意識に指を緩め、調整しようとした。しかし、体はまるで彼を裏切ったかのように、微細な調整一つ一つが、ある秘められた、言葉にできない痛みを引きずり出した。その痛みは筋骨から来るものではなく、もっと深い、もっと混沌とした場所から来ていた。
灯りの下、彼の影は長く引き伸ばされ、冷たい床に斜めに映り、孤独で歪んでいた。彼は俯いて、刀を握る自分の手を見た。その手は、かつて無数の致命の軌跡を正確に繰り出してきたが、今は微かに震えていた。
何を指すのか?
土方の先ほどの問いが、死んだように静まった空気に無音で浮かび上がった。
答えはなかった。あるのは道場の空虚な反響と、手の中の、他人に触れられ調整された竹刀が冷たく重く彼に思い知らせるものだけだった――二人の間に横たわる、音もなく、しかし山のように重い「界(さかい)」が、決して消えたことはなかったということを。
それは確かにそこにある。
一歩の距離の向こうに。
無言で交錯する度に。
指先の一瞬の、熱くも冷たい感触の中に。
絡み合い、逃れられない宿命の深奥に。
――終わり。
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