曜青海軍パロ(途中)「モゼ。船が来るぞ」
細身の男が暗闇の中に立っていた。石壁の地下室ではその低音が何重にも反響し、自分の心臓を叩いてくる。
「…………船?」
久しく出していなかった声は掠れていて、相手にしっかり聞こえたかどうか不安になった。自分と相手以外誰もいない、静かで、音が反響する地下室にいて、聞こえないはずが無いのに。
「家族の仇の船だ。あれをうち沈め、薬王の真理を得るのだ。モゼ、お前の病が完治する時も近いぞ」
病の完治。それは苦痛を意味する。しかしそれは今自分の生きるただ一つの目標だった。その言葉にふっと希望が差し込むような心地がし、
「さあ、今日の薬だ。飲み込め、吐き戻すな……」
そして、また地の底に落ちた。
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