ある日の副官01 壁ドン督公の愛馬は、心に決めた主人にはすこぶる忠実な良い馬である。
しかし、賢過ぎる故に大変扱いにくい点においては、その主人とも相通じる所がある、と西廠の皆が密かに思っている。
しかも今日は殊の外、機嫌が悪く、朝から厩舎の寝床をガリガリ掻いては嘶き、主人を呼んでいる。
オマエハナケバキテイタダケテイイナ
それにつられてか、他の馬達も段々と騒がしくなってきてしまい、私はやむなく督公にお伺いを立てた。
「督公、申し訳ありませんが、ほんの一時で結構ですので、厩舎へお出まし願えませんか」
「何だ。また拗ねているのか」
「夕刻の哨戒にも差し支えます。その後で点心とお茶をご用意しますので、暫しお休みになっては如何でしょう」
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