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    2018年辺りに書いていたリュウラシさんの掌編です。
    スト5のB-Boyコスチュームのリュウさんとアレコスのラシード君、お揃いみたいで可愛い!

    #リュウラシ
    ##ラシード

    on fire / リュウラシ「その格好、あんたらしくないよなぁ」

    初めて見た訳でもないのに、ラシードはリュウの出で立ちに視線をめぐらせて小さく笑う。

    鉢巻の代わりに目深に被った赤いバケットハット。
    白いブルゾンと揃いのデニムを纏って、胸に大袈裟な時計を下げ、足元には眩しいほど真っ赤なスニーカー。
    拳にはグローブの代わりに「風林火山」を一文字ずつ刻んだ指輪が輝いている。
    サングラスから覗く瞳だけはいつもと何ら変わりない。

    質実剛健を絵に描いたような、普段の胴着姿とは正反対だ。

    そうしてまじまじと見ていると、リュウは慣れない手付きでサングラスを外し、困ったように口を開いた。

    「やっぱりおかしいか?」

    「あぁ、いや、見馴れるとなかなか似合ってるよ。
    何か、あんたとオレで服を揃えたみたいで面白くて」

    リュウが瞬きするのを横目に、ラシードは口を動かす。

    “そういう気持ち”を伝えようとしても、リュウには半分も届かない。
    そっちの方が照れずに済むから、好き勝手言ってやろうという気になってくる。
    一度、二度、伝える度半分も伝わらなくても、繰り返すうち少しずつ伝わって、想いが届いていく。

    そうでなければ、リュウと“そういう仲”にもなっていなかっただろう。

    「自分の服を選ぶのに あんまり派手なのはどうかと思ったけど、あんたの格好を見てると指輪も良いな」

    「これか」

    握っていた拳をほどき、指輪を煌めかすその指は、やっぱり格闘家の厳つい指だ。

    リュウと最初に握手した時と今とでは、その声に、姿に、抱く思いが違っている。
    胸がいっぱいになって、きゅっと締め付けられるような気がした。

    こうして仕草に焦がれていても、リュウには伝わらない。
    触れることは簡単に出来ても、ふたりが同じ思いで触れ合うことが何度あるだろう。
    何度も何度も、焦れる程に伝えてやっと思いが返ってくるかどうか。

    もう慣れているはずなのに、何だか急に自分だけがそわそわと浮き立っているのが悔しくなってきて、精一杯澄ましこむといつものように続ける。


    「……ちょっと着けてみてもいい?」

    「ああ」

    指輪を外そうとするリュウの動きを遮るように手を握る。
    触れた手がじんと熱くて、指先から鼓動が伝わってしまいそうな気さえした。

    人差し指と、薬指。
    ふたつの指輪をゆっくりとはずして行く。
    サイズも確認せずに、リュウの体温を残したままの指輪を自分の左手の指へ滑らせ、胸を弾ませる。

    そうしてあつらえたように嵌まった指輪が、一層輝いて見えて掌をかざす。
    何だかくすぐったいような気持ちだ。


    「ふたつで良いのか?」

    本当なら「ひとつでいいよ」と言っても良かったが、流石にそのまま意味が伝わったらと思うとなんだか躊躇われて飲み込んだ。
    それでも少し、日本ではどっちの手のどの指に嵌めるものだったか考えてしまったけれど。

    「あー、いいのいいの。これって4文字でひとつの言葉だろ?それならさ」


    指輪の減ったリュウの手を引き寄せて、自分の指を絡ませた。
    交差する指が、互い違いに指輪を煌めかせている。

    「こうすると、ちゃんと“風林火山”になるだろ?
    なーんて……」

    笑って見せるつもりで顔を上げた先。
    いつもと変わらないと思っていたリュウの顔は少しぎこちない表情で、視線が泳いでいるように見える。

    ここまで、“伝わった”瞬間が解りやすい人も居ないだろう。
    その顔を見たら、喜ぶ間もなく恥ずかしさが込み上げてきて、一緒になって落ち着きなく視線をさまよわせてしまう。
    ラシードは思わず指をほどいてぎこちないポーズのまま固まる。

    「あー、その……えーっと……」

    「……………」

    「ど、どうかな、オレにも似合うかなー……とか」

    「…………」

    「……な、何か言ってくれよ!」

    「…………に、似合うんじゃないか?
    俺には、その、服装のことは よく解らないが……」

    お互いにしどろもどろになりながら、なんとか会話を続ける。
    どうしてもこうも、伝わらないつもりで調子に乗ってしまうのだろう。そして、どうしてこういう時ばかり察するのだろう。
    半分八つ当たりのようなことを心の中でもらしながら考えを巡らす。

    前に、とても恥ずかしくて顔が真っ赤になることを日本では“顔から火が出る”と表現するのだと、何かの折りにリュウが言っていた。大袈裟だなと笑ったが、なるほど確かに燃えるように顔が熱い。今なら本当に顔から火が出ても納得してしまうかもしれない。

    そんなとりとめのない話を考えているうちに気が紛れるかと思ったが、相変わらずうろうろと足元に視線を泳がせたまま、伏せた顔を上げられない。

    ━━オレもあんたも、今どんな顔をしてる?

    「ラシード」

    急に手首を引かれ、人差し指に嵌まった指輪をするりと外されて、反射的に顔を上げるラシード。
    リュウは照れくさそうに、でも少し得意気な表情で笑って、いつの間にか薬指にだけ指輪を嵌めた左手を掲げて見せた。

    「俺も、お前も、指輪はふたつも要らないな?」

    「っ、……あんたホントさぁ……!急にそういう事言うの、ずるいよ……そんなの言われたらさ」

    ━━最初の印象は、あまり喋らない男だと。
    拳を合わせた後は、変わっていて面白いと。
    そうして少しずつ色々な顔を知る。
    こんな風に悪戯っぽく笑うこともあるのだと、
    色恋沙汰に鈍いようでいて、ふいに甘い言葉を囁くときもあるのだと。

    その度にたまらなく胸が締め付けられる。

    「……あんたの事、もっと好きになるだろ!」

    顔から本当に火が出るのなら、今ごろ丸焦げになっているだろう。それでももう胸が一杯になって吐き出さずにいられない。
    もう顔だけの熱さが気にならない程に、胸が、体が熱を持って、どうしようもなく好きだと伝えずにいられない。

    自分は今、どんな顔をしているんだろう。

    「それは、願ったり叶ったりだな」

    リュウの指が頬を撫でる。同じ思いでいるのだとすぐに解るほど優しく、柔らかい触れかた。穏やかな声音。
    どこか熱っぽい眼差し。瞳に映る自分の顔を見る余裕なんてない。
    いつものずれた返事はどこへ行ったのか。

    頬に触れていた指が、そのうちゆっくりと眉尻を撫でる。
    ああ、知ってる。
    これは、目を閉じてほしいって事。


    ━━オレだけが知ってる、リュウの癖。


    ゆっくりとリュウの腰へ腕を回し、蕩けそうなほどの熱に身を委ねた。
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    Replies from the creator

    ereply

    DONE初代ブロ音です。
    三部作ですが、ぽいぴくではまとめました。

    ※前後のシーンしかありませんが、合意のない接続を含む内容ですのでご注意ください。

    ※また、今作では機械生命体の接続と、有機生命体の生殖行動を全く別のものとして描いており、全体を通して立場やキャラクターによって倫理観・価値観が違うことを強調している話のため、読む方によっては一部不快に感じる可能性があります。
    ブロードキャスト・エレジー / 初代ブロ音*前後のシーンしかありませんが、合意のない接続(合意のない性行為を思わせる描写)を含む内容ですのでご注意ください。

    *この作品では、機械生命体の接続と有機生命体の生殖行動を、“見た目の類似した別のもの”として書いており、人間と機械生命体との倫理観・価値観は違うという描写をしています。
    また、立場やキャラクターによって倫理観・価値観などが違うことを強調するような話になっておりますので、読む方によっては一部不快に感じる可能性があります。

    ブロードキャスト・エレジー part1
    ――ディスコ、ダンシトロン。華々しい社交の場かと思われたその実態は、労働力や兵士として人間達を意のままに操ろうと企む、デストロンの仕組んだ罠であった。
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    ereply

    DONE初代ボンブシェル→サウンドウェーブ。
    他機の心を弄ぶことを好むボンブシェルが、サウンドウェーブに執着するまでの話。

    前作とはまた別の世界線です。
    退屈を終わらせろ! / 初代虫音 インセクトロンは[[rb:窮 > きゅう]]していた。
    なにも今、突然に起こったことではない。彼らはいつも腹を空かせている。独自に遂げた進化によって、森を食らい、田畑を食らい、どうにかこうにか食い繋いでいるが、腹が膨れたと思い少し動くとまた腹が減るのだからどうしようもなかった。
    インセクトロンに遅れてこの星へやって来たデストロン。そのトップであるメガトロンは、明らかに報酬に見合わない労働をインセクトロンに要求してくる。しかし、いつも腹を空かせているインセクトロンは、頭ではその不義理な同盟者から満足な報酬は望めないことを理解していながら、ご馳走を期待してその依頼に飛び付いてしまうのだ。

    インセクトロン達は、その同盟者から提供された、ノヴァ発電所で食らったエネルギーの事が忘れられなかった。結果的には消化不良を起こしてしまったが、十二分にエネルギーを蓄えて力に満ちた機体は[[rb:溌剌 > はつらつ]]として、本来の力以上のものを発揮することが出来た。インセクトロンの機体は他の機械生命体とは違い、エネルギー残量で身体の大きさが変化する。常に腹が減っているものだから、普段の彼らは小さな[[rb:体躯 > たいく]]をしているのだ。腹が減れば力も出ない。頭も本来ほどは回らない。あの時のように腹を満たした状態でいられたら、その力でもって食べきれない程のエネルギーをかき集めることも、その頭でもって策を巡らすことも出来るはずだ。
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