君はペテン師④ 地上のタイルから接する水上の小島に、危なげない足取りでビリーは渡る。シュロの木と南国風の植物が植えられており、星空を眺める為の赤いソファーの左右には白い花が揺れている。おそらく、蘭の一種だろうが、それ以上のことはビリーにはわからない。彼が理解しているのは、満点の星空を見上げているカインの心を、冥界から現世へと引き戻す扉を作らねばならない——そのことだった。
わざと音を立てて、乱暴にソファーに腰かける。音も衝撃も伝わっているはずなのに、カインは何の反応も示さなかった。晴れ渡る夜空には無数の星が輝き、月は柔らかな光を地上へと投げかけている。銀色の光を浴びるカインの姿に、ビリーはかつてギースと共に鑑賞した『ジゼル』というクラシックバレエの演目を思い出していた。
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