黎明のポラリス『────、────』
『────! ────!』
ブラックアウトした意識の静寂(しじま)が、端の方から徐々に明ける。水中を縫うかのように不明瞭な音が、ぼんやりと覚醒を始めた聴覚を刺激した。
「────、…………、Xタワー…………離陸…………これより……、……搬送……」
途切れ途切れに聞こえてくる人の声には、淡々とした緊迫感漂っている。
『……了解。……、救急……待機します』
無線機越しにノイズが混じる。これもまた人の声だ。
次第に全身の感覚が鮮明になる。
体の芯を揺るがすような振動、空気がうねる音、そして浮遊感──。現状況が何であるかを、過去の体験から掘り起こした。
ここはヘリの機内だ。
消毒液の匂いが鼻を掠める。そして今、己の肉体は妙に安定した床面に横たわっている。
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