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    三重@ポイピク

    好き勝手に書いてる文字書き。ツイステのイドアズにはまってます。Twitterはこちら→@mie053

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    POIPOI 24

    三重@ポイピク

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    イドアズで勝手に子供作って育ててたアズくん話。今回は子供3人とシュラウド兄弟とアズくんのみ出てます。双子は次出す。

    #イドアズ
    idoas

    「ヴェール、ジェフリー、はやくしまって!」
    「アラーナ、入んないからそっち入れてー」
    「僕のもお願いしますアラーナ」
    「いらないものが入ってるからでしょう! こっちに入れるな! いらないものを持っていくな!」

    幼さゆえの甲高さが抜けない声を荒げるアラーナと呼ばれた少女を前に、怒られた2人の少年達は平然とした顔でスーツケースの中に手を突っ込んだ。少年2人のスーツケースは、彼らが言った通り荷物で溢れ返っている。洋服は行きと帰りの分で2着あれば十分足りるので、それ以外のものは殆ど玩具だ。すでにしっかり閉じられたスーツケースを横に置く少女は中身を見て、金色の大きな瞳をきっと鋭くしても愛らしさが目立つ顔を歪ませ、2つに結わえた銀色の髪を揺らす。その動きに、右耳にのみつけられた真珠のピアスが白く輝いた。セーラー服イメージのワンピースを着た彼女は、仁王立ちして少年達を見下ろす。

    「なんでそんなにおもちゃを持っていくんですか、減らしなさい」
    「どれ持っていこうかなぁって思ったら全部持っていきたくなった。んーでもなんかこれいらないかも……」
    「ジェフリー、海に行く頃にはあきちゃうんじゃないですか?」
    「あきちゃうかな、そうかも。でも今は持っていきたい気分」

    ジェフリーと呼ばれた少年は、子ども特有の柔らかさを持ちつつ、既に整いつつある顔で困ったと言いたげな表情を作る。動きに合わせて、左耳の真珠のピアスがちらりと見えた。切れ長の海松色の目は冷たさを感じさせる時もあるが、眉が下がった今はただ困った子供の様子でしかない。身に纏っているのは白に蛍光色の緑が入ったパーカーとジーンズ。
    少し困った様子を、よく顔立ちは似ているが垂れた青い瞳によってはっきり区別できる子供が覗きこんでいる。ヴェールと呼ばれた子供である。こちらもパーカーにジーンズだが、少し大きめで柔らかなシルエットになったパーカーを着ているジェフリーと違い、細身の青いパーカーだ。すっきりとして、ジェフリーとは随分印象が異なる。また、ピアスも右耳につけており逆だった。
    青緑色の中に一房だけ黒の混ざった髪を切り揃えた子供たちは、自分達のスーツケースを見下ろして首を傾げている。ヴェールのスーツケースはジェフリーに比べて玩具こそ入っていないものの、それ以外の物がたっぷり詰まっていた。ほとんどはガラス瓶で、瓶の中には少量の土と植物が入っている。器用に立てた状態でスーツケースに詰め込もうとしているヴェールに、アラーナはきっと眉を吊りあげた。一番自分に似ていると言われる子だが、自分も怒る時にこんな顔をするのだろうか。

    「ヴェール、その瓶はイデアおじ様にあずけるんでしょう!」
    「でもアラーナ、おじ様は植物にあまりお詳しくないと言っていました」
    「オルトおじ様がお世話してくれるって言ってたし、イデアおじ様がお詳しくなくてもへいきでしょう。海に持っていったら全部枯れてしまうのに」
    「水中でも植物をたもつ魔法があるんですよ。それを使うために、あなたとジェフリーの魔法石をお借りしますね」
    「絶対貸さない」
    「オレもかさないー」
    「なぜですか? 貸してください」
    「いやです、対価をもらってもいや」
    「ヴェール絶対海にいる間返す気ないじゃん、やだ」

    当然のように魔法石の貸与を頼み、断られたヴェールが眉を更に下げて言っても、他の2人は容赦がない。そんな風にじゃれている間にも時間は刻一刻と迫っている。結局3人の我が子に向かって、やり取りを見守っていたアズール・アーシェングロットは声をかけることになった。

    「ヴェール。瓶についてはアラーナが言った通り、イデアさんに全て預けるように」
    「でもお父さん」
    「心配ならオルトさんに映像を送ってもらえるよう頼みますから。それなら植物の様子を見られるでしょう?」
    「……はい」
    「よし、いい子です。アラーナ、鏡の使い方は覚えていますね?」
    「はいお父さん、おぼえてます!」
    「イデアさんに連絡してもらえますか。ヴェール、あなたも一緒に」
    「分かりました、ほらヴェール行こう!」
    「そんなに急かさないでアラーナ」
    「次にジェフリー」
    「はぁい」
    「玩具は減らしなさい。海に行けば面白いものが沢山ありますから、邪魔になりますよ」
    「でも今は持っていきたい気分」
    「それなら、せめて半分にすることはできます?」
    「んー……うん、がんばる」
    「よろしい」
     
    スーツケースからはみ出ている私物を見下ろし、唸るように返事をした我が子の髪を撫でる。癖があるアズールの髪とは違い、真っすぐに伸びた髪は子ども特有の細さもあって指に少し絡みつく。あまり子供扱いするなと最近言われるようになったことを思い出しジェフリーを見たものの、当人は吊り目がちの海松色の瞳を瞬きで数回隠して、すぐに笑みを浮かべた。黙っていれば、同い年である3人の中で一番背が高いのもあり大人びて見えるのだが、すぐ和らぐ表情により年相応に見られる子だ。

    「10分がんばる!」
    「良い心意気です。鏡の部屋に居ます、終わったら来てください」
    「はーい」
     
    今のところ上機嫌なジェフリーの声を背に受けながら、アズールは先に2人を向かわせた部屋に向かう。最近は自立精神が芽生えたらしく、あまり見ていると怒りだすのだ。これに関しては3人全員に見られて、成長を感じるとともに子供らしさも覚える。つい漏れてしまった笑いをそのままに、アラーナとヴェールが待っている鏡の部屋に向かった。
    鏡の部屋とは言葉の通り、かつてアズールが通っていたナイトレイブンカレッジに置かれていた、遠い地と地を直接つなぐ鏡を置いた部屋だ。ただし必要とする魔力量の関係からナイトレイブンカレッジの鏡ほど選択肢はなく、アズールの家の鏡は3ヶ所にしか繋がらない。アズールの仕事場と、今年の9月から子供達が入学するエレメンタリースクールが存在する街。故郷である珊瑚の海近くの街。そして最後に、イデア・シュラウドの自宅の一角。
    アズールが部屋を訪れてみれば、鏡の向こうへ子供達が一生懸命に話しかけているところだった。話し相手である、青い炎を纏わせる髪と、白と青を基調とした鋼鉄の小柄な体躯が印象的な存在──オルト・シュラウドは、アズールを捉えて目元を緩ませる。その手には、ヴェールが渡したのだろう瓶詰の植物が持たれていた。

    「アズール・アーシェングロットさん、こんにちは」
    「こんにちはオルトさん、この度はお手数おかけします」
    「オルトおじ様、僕の植物をお願いします」
    「うん、ヴェール・アーシェングロットさん! 植物の育成方法については事前に調べておいたから、適切に管理するね」
    「すみませんオルトさん、可能なら僕のところに植物の世話をしている動画を送っていただいてもいいですか。あなたの手腕を疑うわけではないんですが、うちのヴェールがどうしても気にしてしまって」
    「大丈夫だよアズール・アーシェングロットさん。共有先はどこがいいかな?」
    「いつも使っている先でかまいません」
    「了解です」

    柔らかく笑うオルトは、そのまま瓶詰の植物を手に一旦その場を離れる。植物を安置しておくための用意があるのだろう。この礼は帰ってきてから必ずしなければと思いつつも、アズールはオルトが消えた方向とは別の方へ目を向けた。そこには、オルトよりも長さがあるためにさらに目を惹く青い炎を纏った髪を適当にまとめて、背を丸めながら椅子に座っているイデアと、その隣に立ってイデアを見上げるアラーナの姿がある。アズールとヴェールがオルトと話している間もずっと話していた2人は、アズールが視線を向けても気づかず会話を弾ませる。

    「イデアおじ様、帰ってきたらまたゲームのお相手してくださいね」
    「アラーナ氏、負けそうになるとすぐゲーム盤ひっくり返す癖は治ったの?」
    「そんなことしてないです! あれは事故ですもん! 今度こそ勝ちますから!」
    「ええー本当に? 拙者アラーナ氏相手でも手は抜かないでござるよ」
    「勝ちます、イデアおじ様に勝つため練習したんですから……!」
    「やっぱり一番似たよねアズール氏に。この努力家でしつこいところそっくり」
    「お褒めに預かり光栄です」

    わざと愛想のいい声で話しかけてやれば、イデアの丸まった背が大きく震えた。アラーナもアズールが聞いていた事に気づき、「約束ですよ」ともう一度イデアに声をかけてアズールの傍へ寄る。
     
    「イデアさん、植物の件ありがとうございます」
    「アズール氏に素直に礼を言われるのやっぱり慣れない……」
    「お礼に関してなんですが、深海の映像データが欲しいと言ってましたよね。そちらでいかがですか」
    「無問題、むしろ大歓迎っすわ。楽しみに待ってる」
    「ええ、期待にお応えしましょう」
    「お父さん、全部預けました」
    「ポケットにも残っていませんか? ヴェール」
    「入っていません」
    「……まぁ、小瓶1つならあなただけでも保てるでしょう」

    オルトに植物を預けてきた息子の、明らかに膨らんでいるポケットに気づきながら、アズールは黙認する。ヴェールは誰に似たのかこだわりが強く、無理に手放すことを強いるより、本人が失敗して学んだ方が早い。ヴェールもまだ幼いながら理解しつつあるのか、アズールの呟きに頷いた。さらりと嘘を吐けるのに、こういう所で詰めの甘さを見せるところは可愛げがある。
    自宅に続く鏡へ、子供達に先に戻るよう促していると、座ったままのイデアから声をかけられた。

    「なんですイデアさん」
    「いってらっしゃい、気をつけて」
    「おや、僕が帰省してヘマをするとでも?」
    「そうじゃなくって。その、久しぶりでしょ? 念のためってだけだよ」

    丸めた背もそのままに、娘のアラーナよりも黄色味の強い金の目がアズールを映す。アズールを見る目は、いつの間にやらはっきりと心配を映すようになっていて、変化に笑ってしまう。アズール自身もここ数年で変わった自覚はあるが、目の前の先輩も随分と変わった部分がある。

    「それにほら、アズール氏になんかあったら、映像データもらえなくなるし」
    「気をつけます。お礼は弾みますのでお楽しみに」

    とってつけたように我欲を見せるイデアに笑いながら返して、アズール自身も鏡をくぐる。一度閉じた鏡は、本来の機能通りにアズールと子供達の姿を映した。映し出された中には、荷物を整理するように言ったジェフリーの姿もあったので振り返る。やりきったと言わんばかりの笑みと、横に置いたぴったり閉じたスーツケースを見れば、言った通り10分で終わらせたことが伺えた。

    「ジェフリー、よくできました。これで準備万端ですね」
    「でしょ、もっと褒めて! 5分で終わったんだから!」
    「それは素晴らしい。今度は僕の前でやってみてください」
    「うん!」

    上機嫌なジェフリーにほっと息を吐いていると、ここまでもっとも手のかからなかったアラーナと目が合う。一番そつなく準備を終えて、他の兄弟の準備を急かしていた彼女も当然賞賛に値する。思ってアズールは、物言いたげなアラーナとしっかり目を合わせた。

    「アラーナは一番早く準備ができていましたね。あなたはいつもしっかりしていて助かります」
    「ふふ、当然です!」
    「アラーナは昨日の夜から準備してましたから」
    「詰めきれなくてどうしようって半泣きだったもんね」
    「ジェフリー! いわないでっていったのに!」
    「ああ、だからちょっと目が赤いんですね」

    ジェフリーの動揺に、胸を張って誇っていたアラーナが動じるのを見ながら納得した。彼女の大きな金色の虹彩を囲う白目の部分が赤かったのが気になっていたのだ。悟られたことによって白い顔を真っ赤にしたアラーナに「時間がかかったとしても、一番早く終わらせたのはあなたであることに変わりありませんよ」と声をかければ、赤味は取れないまでも機嫌は直る。
    さて、我が子3人の準備が整ったところで、アズールもまた準備していた荷物を手に寄せた。鏡の方を振り返り、繋げる先を変更すると、部屋全体を映していた鏡の中の景色が薄暗い洞窟へ変わる。故郷である珊瑚の海、その北方にある洞窟だ。魔法を使える人魚達が共用している場所であり、時折他の人魚と出会うこともあるのだが、今日は誰もいないらしい。とりあえず子供達を先に通らせたアズールは、待っているように言い含めて自宅の戸締りを確認していく。勿論ただの施錠だけではなく、魔法を使用しての施錠を施し、更に自宅警備のシステムの電源を入れると鏡をくぐった。
    洞窟側に置いた鏡に向かい呪文をかけ、鏡に映る景色が洞窟に変わったことを確認すると、大人しく待っていた子供達に向き直る。ヴェールとジェフリーはこれから不要になるとはいえ早々に服を脱ぎ、平均よりも背は高いがまだまだ成長途中の体で立っている。アラーナはそんな兄弟達を見て迷っていたようだったが、服はそのままで待っていた。いくら人魚とはいえほとんど陸育ちである少女、しかも最近は照れも覚えたのか兄弟と風呂に入らなくなった年頃なので、ある意味予想通りだ。

    「ヴェール、ジェフリー、せめて下だけ脱いで待っていなさい。アラーナは靴と靴下と下着だけ先に脱いでおきましょう」
    「お父さん早く!」
    「僕も久しぶりに泳ぎたいです、お父さん早く」
    「わかっていますよ」

    急かす子供2人に、アズールはかけていた魔法を解く合図を送る。途端、子供達の姿は変貌を始めた。元々平均より高い身長は更に伸びていき、2本の足が1つの尾鰭に変わる。乳白色の柔らかそうな肌は、青緑色の鱗へ。海松色と青色の瞳はそのままに、顔の肌色もまた薄い緑に変わる。切り揃った髪の間から覗いていた耳が、数本の骨と間に薄く生えた皮膚を持つ鰭に変わった頃には、生まれながらの種族に姿は完全に変わっていた。2人の人間の子供は消え、ウツボの人魚達だけがいる。洞窟の中に身を置き、前回見た時よりも長くなった尾で音を立てた我が子達に、アズールは浮遊魔法をかけてすぐ傍の海へ入れる。上機嫌だったヴェールとジェフリーだが、入れられた海の中で派手に跳ねた。

    「さむい!」
    「つめたいです!」
    「いつも連れていく海に比べれば冷たいでしょうね、北方ですから。アラーナ、あなたも」
    「はいお父さん」

    アズールの声掛けに、言いつけ通り一部の衣服を脱ぎ終わっていたアラーナが頷く。彼女にかけていた魔法を解けば、ヴェールとジェフリーとは異なる変化が始まった。柔らかな白い肌は黒く染まっていき、顔は首元は灰紫色に塗り替わる。華奢な足はふくふくと膨れるようにボリュームを増したかと思うと、そのまま8本の黒い触腕へ姿を変えた。久しぶりの変化に驚いたのか触腕の先が跳ね、濃紫色の吸盤が少し顔を出す。じっとアズールを見上げてくる金色の瞳の瞳孔が横長へ形を変えた時には、まだ幼いタコが、ワンピースを纏って立っている。陸で育てている為か、触腕での陸上歩行が得意のアラーナは、するするとワンピースを自分で脱いでスーツケースにしまい、アズールの魔法による誘導も使わず海に入った。
    子供達の準備が整えば、アズール自身の番である。魔法を使って洋服を全て脱ぐのと同時に、自身にかけていた魔法を解く。すっかり慣れた2本の足が、アラーナが姿を変えた時と同じく膨れ、数を増やし、色を変えていく。8本の触腕が長く身を伸ばした頃には、上半身の肌も黒と灰紫に代わり、薄暗い洞窟の僅かな光を黒々とした鱗が反射した。姿を戻していないわけではなかったが、この海でこの姿を晒したのはもう7年も前。アズールを待ってる子供達を産んだ時なのだから、時の流れはあまりに早い。

    「3人とも、発光体は光らせないよう気をつけてください。深海では特に目立ちますから」
    「はい」
    「はい」
    「はーい」

    ずるりと触腕を動かし、海に向かいながら忠告する。産まれてすぐにしか過ごしたことのない海に、初めて向かう子供達の表情は期待に満ちていて、アズールはつい笑ってしまった。
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