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    三重@ポイピク

    好き勝手に書いてる文字書き。ツイステのイドアズにはまってます。Twitterはこちら→@mie053

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    POIPOI 24

    三重@ポイピク

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    女性もののアクセサリーや洋服やメイクが好きで、陸に上がってから自室で身につけるようになったアズくんが、双子にその姿を見られる話。
    以下を含みます
    ・人魚の生態捏造
    ・アズくんの家族に関する捏造
    ・女装描写

    #イドアズ
    idoas

    アンダー・ザ・ローズとはいかなくて沈没船の中で見つけたベールの美しさに魅せられた。その経験が自分の好みに多大な影響を与えたことを、アズール・アーシェングロットは覚えている。沈没船の一室で漂っていたベールは、海水によって本来の美しさを損ねていると思えないほど目を惹いた。海中の青に広がる、白く繊細な模様。そっと手に取り、触腕を用いて傷つけないよう広げて、夢中になって見つめたものだ。ベールは蛸壺へ持ち帰り、次第に損なわれていく美しさを、アズールは日々見つめていた。
    きらびやかな鉱物も、繊細なレースも、暗さが勝る深海では滅多に見られないものだが、だからこそ時折目にすると心が躍った。アズールの母が営むリストランテは、ドレスコードを設けている。人魚は人間のように衣服を着ることはないが、女性の人魚は尾鰭を飾り立て、男性の人魚は腰に飾り紐を結ぶという装いはあった。アズールが目で追ったのは、女性の人魚が尾鰭を飾るのに使う華やかな品々の方だ。貝や鉱物を存分に使って自らを飾りたてる姿は美しく、アズールは彼女達の装いに憧れた。自分も身につけてみたい、そう思った。誰も来ない蛸壺の中、学ぶために手と頭と触腕を使いながら、いつか自分の身を飾ることができたらと思ったことは数えきれない。海の魔女への憧れも持っていた彼にとって、彼女達の装いへの憧れは自然と芽生えたものだった。
    けれど当時のアズールは、自分の外見にまるで自信がなかった。きらびやかに飾る尾鰭を持たず、肉付きもよい体。こんな姿に、あんなに綺麗なものを身につけたところで似合わない。アズールの身内の女性──母と祖母──達は、アズールとは原種が異なる人魚だ。先祖にタコの人魚が居り、その先祖返りとして生まれたのがアズールだ。原種の違いに加えて性別も異なるとなれば、相談などできはしない。義父に相談を持ちかける勇気もなかった。
    体型については後ほど自力で減量し整えたものの、それでも飾る気にはならなかった。海の中で蠢く触腕に、あの華々しさが似合うとは思えない。結局、身につける勇気は出ず、手元に置いておきたい宝飾品が、アズールの蛸壺の中に集められていくばかり。そのうちジェイドとフロイドと共に居るようになったので、蛸壺の中でも特に厳重に守っている金庫へ移した。
    そんな日々の中、アズールの元にナイトレイブンカレッジへの入学許可の知らせが届く。断るはずもなく、陸へ上がることを決意した。ジェイドとフロイドも入学許可を得ており、共に陸に上がることを選んだ。そうして陸に上がり、訓練学校で陸の文化や立ち振舞いを学んでいく中でアズールは学ぶ。陸も性別によって装いが異なり、アズールの好みはどちらかといえば女性的であること。女性的な好みを持つ男性について、あるいはその逆について、近年では寛容になってきているとは言え、眉を顰める者もいるということ。
    アズールは商人を志している。商売において、外見の印象が与える影響は大きい。アズールの趣味が女性的であることが、アズールの商売に良い影響を与える可能性は限りなく少ない。これが創造性の高い芸術家などであれば、個性として認められたかもしれないが、彼はあくまで商人として生きるつもりだ。しかし幼い頃からの趣味を簡単に捨てることも出来なかった。蛸壺から魔法をかけたトランクへ、そして陸に上がってから買った金庫へ場所を移した宝飾品を手放せない。何より、陸に上がって学んだ人間の装いは、かつて見たレースのベールに勝るとも劣らないものに溢れていた。人間の姿を取ったことで、人魚の頃よりも装うことへの希望を持った。幼い頃から持っていた願いを、アズールは叶えたかった。
    だから徹底して、自分の趣味を隠れて楽しむことを選んだのだ。入学してすぐの頃は寮生活であるため同室の生徒が居り、趣味を楽しむことは難しかった。しかしそれも、モストロ・ラウンジという自分の店を、寮長と言う新たな立場を手に入れて、アズール1人だけの場所ができれば別である。寮長室のデザインが、どちらかといえば可愛らしいと分類されるデザインであって、アズールは上機嫌だった。金庫の中に隠した宝飾品だけでなく、インターネットを通じて買った衣服を身につけ楽しんでも、服に合う化粧を施しても、部屋に人を入れない限り咎められない。寝る前の1時間、自分好みの物を身につけ楽しむ時間を設けるようになるのは自然の流れだった。
    自分の趣味を公言するつもりはなく、他人に見せるつもりもない。手に入れた衣服や装飾品を身につけて、鏡に自身の姿を映して満足感を得る。多忙である日々の中、モチベーションを保つ息抜きができればそれでいい。それだけでいい。
    故にアズールは、1日で最も充足感を得る趣味の時間に乱入してきた2匹のウツボを、手早く処理しなくてはならない。

    ■□■□■□■

    淡い水色の生地の上で、白いレースが踊っている。肩回りと裾を飾り立てるそれは花を模した意匠で形作られており、見るからに柔らかそうである。よく見るワンピースと比べると眠る際に邪魔にならない作りをしているので、もしかしたらネグリジェかもしれない。柔らかく、華やかな、けれど派手過ぎない服。身に纏っている本人の、陸に上がって白く変わった肌にはよく映える。
    よく映えているのだが、身に纏った当人ことアズールは、そんな可愛らしい服を着ているのに、おどろおどろしい表情でもってフロイド・リーチとジェイド・リーチを見下ろしていた。なお、ジェイドとフロイドは彼が瞬時に実践魔法で出した縄により縛り上げられ、床に転がされた状態である。逃げられなくもないが、そうすれば今度は攻撃魔法を用いて制圧されそうな予感があった。
    縄で縛られたままのフロイドは、アズールの顔を見上げる。寮服の紫を基調としたメイクや式典服の黒を基調としたメイクとは違う、服の色合いに合わせたブルーを基調としたメイク。ラメの入った化粧は普段凛々しさを強調しがちなアズールの顔立ちを甘く見せて、よく似合っていた。

    「アズール顔ちょー怖いんだけど。返事待たないで入ったのそんな駄目だった?」
    「そうですね。お前達が時折非常に無礼だというのは知っていましたが、正直最悪の行動でした。でも大丈夫です、どうせお前達はこれから忘れますから。今夜見たものは全部綺麗に消えますよ、安心しなさい」
    「アズール、まさかその手に持っているのは記憶消去の魔法薬ですか? 僕とフロイドの記憶を消されるおつもりで?」
    「ええ消します、お前達の秘密保持契約の範疇に入ってない情報をお前達がぼろぼろ他人に話すことは分かっているんですから。僕は弱味を他人へ晒すつもりはない。知ったからには忘れてもらう」
    「目がタコちゃんじゃん。てか、え、弱味って何?」
    「何? この格好を見て惚けるとは大したものだ」

    普段より甘い顔立ちになっているのに、アズールの浮かべた表情はどんどん荒んだものになる。マスカラを塗ったことで普段より長く伸びた睫毛に縁どられた青い瞳の瞳孔は丸型から水平型に変わっていた。臨戦態勢、そんな言葉が似合うアズールの様子に、フロイドは首を傾げる。ジェイドも隣で動いたので、同じように首を傾げたのかもしれない。
    今のアズールのどこに、弱味を晒した部分があるだろう。

    「アズールの今の服が弱味になんの? なんで?」
    「だってこの服は、その、女性が身につけるものです。男が着るものではないんですよ」
    「別によくね? オレもジェイドも、アズールがそういうの好きだって知ってるし、気にしねーけど」
    「は」
    「ねぇジェイド、別に弱味になんなくね?」
    「ええ。今のアズールは肌が白いですから、淡い色が似合うなとは思いますが。お化粧も似合っていますよ、口を閉じていれば深窓の令嬢も名乗れそうです」
    「は、あの、待った、待ってください、待って」
    「なに?」
    「なにか?」

    転がったまま問いかければ、慌てたアズールが口を開こうとして、そうかと思えば口を閉じ、そして再びゆっくり開くと。

    「…………お前達、僕の趣味を知ってたんですか」
    「蛸壺に雌が着けるアクセサリーとか集めてんの見たことあるし」
    「以前リストランテへお邪魔した時も、女性客の装いをよく目で追ってるなと思ってました」
    「訓練学校入ってから出掛けた時も、今着てる服みたいなの揃った店眺めてたじゃん」
    「インターネットで女性ものの洋服を眺めてるのを何度か見ましたし」
    「ベタちゃん先輩達の寮の奴らとかも見てるし。フリルとかレースとか好きなんでしょ? これ弱味になんの? ただの好みじゃん」

    心底意味が分からなくて問いかければ、見上げた先のアズールが戸惑いを返してくる。どうしてそんな事を言うのか、そう言わんばかりの表情である。アズールにとって、自分の好みは弱点であり、隠すべきだと思ったらしい。フロイドにしてみれば、アズールの好みは弱点などと言えないと思うが。

    「アズール休みの時に着ねーのかなと思ってたけど、部屋の中で着てたんだね」
    「……他人になんて見せられません」
    「自室で楽しむのも良いと思いますよ。それにしたって、僕達に見られたくらいで気にする必要がありますか? あなたのご趣味でしょう、誹りを受けるほどの倒錯めいた趣味でもあるまいし……違いますよね?」
    「違う! ただ可愛い服を着て、服に合わせて化粧をするのが楽しいだけです!」
    「じゃあいいじゃん。ジェイドがキノコ押しつけてくるみたいに、オレらにも同じ服着ろって言うならヤダっていうけど、アズールは自分で着て楽しむだけでしょ」

    縛られた状態で転がりつつ言えば、アズールは少しだけ息を吐く。水平型になった瞳孔は丸に再び形を変えていた。どうやら、落ち着いてきたらしい。落ち着いてきたついでに縄をほどいてくれないかと思っていたら、体を締めつける感触が消えた。
    転がされていた体を起こすと、仁王立ちしていたアズールが反対にしゃがみ込んでくる。しゃがんだアズールの動きに合わせて、淡い水色と白いレースが床に広がる。アズールの部屋は床も磨き上げられて綺麗なものだが、汚れてしまわないのだろうか。思ってつい、床に触れた裾を手でつまんだ。
    つまんだ動きに驚いたアズールが見てきたので、いつも通りに笑い返した。隣で同じく起き上がったジェイドが「アズール」と声をかける。

    「裾が汚れてしまいますよ、ベッドに座った方がいいかと思います」
    「さんせー。アズールの部屋いっつも綺麗だけど、こういう服だと汚れちゃわない?」
    「…………」
    「座んねーの? 持ち上げよっか」
    「いいえ、いいです。座ります」

    ジェイドもフロイドも、いつも通りに話しかけるのが随分と驚くべきことだったのか。暫く青い瞳で2人を見て、無言でいたアズールだったが、やがて返事と共に立ち上がる。床に広がった裾が持ち上がって、そのままベッドに向かう。アルコーブベッドが軋む音がしたところで、頭上から声が続いた。

    「……何か、用があったんでしょう。どうしたんですか」
    「そうでした、少しご用件が」
    「オレはねー、シフトちょっと変えてほしくて」

    努めていつも通りといった調子で彼が言うものだから、フロイドとジェイドもまた立ち上がり、いつも通りに話を続ける。普段身につけない淡い色、繊細な意匠の服のままのアズールが、次第に調子を取り戻していくのを両脇から見ながら、フロイドは片割れとアズールの頭越しに視線を合わせた。
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