死角に隠したバースデーケーキえすり 丞紬SSです
丞お誕生日おめでとう🎉
紬は隠し事がうまい。いつからだったかはっきりと覚えてはいないが、大学に入った頃には演技力とかいう話ではなく、こいつが本気で嘘をついたら見抜けないと思った。人の事もよく見ていてジャンケンではもうほぼ勝てない。相手を見て出方を変えてくるので、死角にうまくしまいこむように嘘をつかれると嘘自体に気付かないように巧妙に隠してくる。
MANKAIカンパニーに入団してから初めての誕生日は飲みに飲んで大いに笑った和やかな会になった。未成年もいるせいか大学のサークルよりは荒れなかったし、GOD座よりはアットホームな雰囲気だった。大人になってからこういう集まりが持てるのはとても貴重だと思う。
日付をまわって部屋に帰ると、紬が何やら小さな箱を持ってきた。白い紙で出来たなんの変哲もない洋菓子店の箱だ。
「誕生日当日になった事だし、ケーキ食べようよ」
「ケーキならもう食っただろうが」
大きなホールケーキを買ってきてみんなで食べていたのに、誰かが頭からケーキに突っ込んで一旦説教となり、大騒ぎになったのだ。
「まあまあ、そう言わずに」
紬が強気な笑みを崩さずに、消費期限のシールを勢いよく破いて箱を開けた。中には懐かしい地元の洋菓子店のケーキが二つ入っている。
「覚えてる? 公園の向かいのケーキ屋さん」
「あそこか」
「そう、懐かしくなって買いに行ったんだ。どっちの誕生日でもあそこでケーキ買ってもらってたよね」
「ケーキ屋のおばさん、俺達の事覚えててくれたんだよ。丞の話をしたらおまけしてくれたんだ」
「よくおまけくれるんだよな、子供に。おばさんの中ではまだ子供のままなんだな、俺達」
「そうだね」
「二人だけで食べたかったから、買ってきたんだよ」
紬がじっと俺の顔をみつめてくる。最近紬はこうやって俺の事を見てくる。切なそうに憂いを帯びているようでどこか懇願するような悲壮感も滲んだ顔だった。芝居以外でこれほど必死になっているなんて。俺はこんな紬を知らなくて、真意が読めない。紬が俺の死角に置いて巧妙に隠しているもの。
ーーああ、そうか。
俺が知らない紬なんてほんの少ししかなくて。こんな単純な事もわからないまま、そばにいたんだ。
「つむ」
昔と同じように呼ぶと、驚いたのか肩を揺らした。腰を上げて距離を詰めても、紬は逃げない。手を伸ばして触れた頬は滑らかで、お互いつつき合って遊んでいた記憶とは違う感触がした。顔を近づけてもそっと瞼を閉じてくれる。とどめようもなく、惹かれるままキスをした。理由や理屈よりもつい動いてしまう身体の方を俺は信じている。
「好きだ」
「順番逆だと思うよ」
頬を赤くして、寝起きみたいにぼんやりした顔で紬は言った。
「駄目だったか」
紬がううん、とかぶりを振った。俺も、とはにかんだ顔はよく知っている。
「たーちゃんが好き」