SS「アクアと付き合うことになったよ」
そう言ってはにかむように笑ったアイツの顔を見たまま、笑顔で「おめでとう」と言えた自分のことを、俺は後世まで誇ると思う。
「わっ、えっ何、起きてたの?」
居住スペースを区切るカーテンを開けたアキは、暖炉の前で一人本を読んでいた俺を見て驚愕した声を上げた。
「……ちょっと、眠れなくて。お前こそ……」
「ぼくは、いつもよりちょっと早く起きちゃって」
「ちょっとって、早すぎね? ジジイかよ」
時計の針は朝の四時を示している。窓から見える空には、まだ夜の帷が落ちていた。
あははと朗らかに笑ったアキは、ふと思いついた顔で言った。
「ねぇ、アリス。せっかく起きているのなら、ちょっと散歩にでも行こうよ」
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