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    kokedama_midori

    @kokedama_midori

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    kokedama_midori

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    弊教団ホワイトデー小説の再掲です

    「……あのさぁ、これ」
    「言わんとすることはわかる」
    甘い空気の中、隅の方で飯をつつくヴァレファールと他数人。
    子羊の教団で開かれた祝宴の儀式。腹一杯食えるので樹林の蛙達が大はしゃぎする様を見るのが恒例行事となっているこの儀式に、もう一つ既視感にまみれた光景が。
    皿ごとに分けられたさまざまなお菓子、ウェディングケーキを彷彿とさせる誰が食えるんだと言うほど大きなショートケーキ。極めつけには目の前にある現在進行形で火にかけられたチョコレートの鍋と、その脇に積み上げられた大量のマシュマロや果物。俗に言うチョコレートフォンデュというやつだ。

    一ヶ月前にも見たぞこの光景。なんなら量増えてんぞ。
    なんだこれ二次会か?

    言いたいことは腐るほどあるが一応空気を読んでグッと堪える俺に、横にいたサレオスが苦笑いで返す。
    「いやめっちゃ美味いんだよ?めっちゃ嬉しいよ?でもさ限度ってもんがあるだろうよ!?量多すぎなんだって!」
    「今日はホワイトデーというやつらしいからな、本来であればバレンタインのお返しをするのが一般的だが……考えてもみろ、バレンタインの時男女関係なくほぼ全員が渡しまくっていただろう」
    まあこうなるわな、と思いっきり他人事のアガレスが説明する。テメェも渡してただろうがよ。
    バレンタインの時のように大盛況ではあるのだが、甘味が苦手なやつからしたらこの甘ったるい空気すら反吐が出る。そんなわけで普段の祝宴用の飯もあるからそれだけ貰って、隅の方で野郎共がぼやいていた。
    甘味は食えるがこの歳になると量がキツい、と諦めきった顔でフォンデュ用のベリーを単体で食っているハウラス。甘いの大好きなやつでもない限りこんなアホみたいな量年齢関係なく全員キツイわ。
    「なんでドゥシアとバトスはウッキウキなんだよ、よく甘いのばっかで飽きねえな」
    「グシオン達もすごいよな、いつもより皿に乗ったやつ消えるの早くないか?アイツらの胃袋どうなってんだ」
    「教祖様が作ってくださったから一応人並みには頂いたが美味しかったからなぁ、甘いの好きなやつは片っ端から食うだろうな多分」
    「……俺も教祖様と、フォカロルとウェパルが作ったのはもらった」
    ただただ疑問しかない俺とアロケル。教祖様の話になるとやったらデレデレしてるサレオスともう親目線でしかないハウラス。で黙ってるアガレスとどっちかって言うとつまみと酒持ってきて晩酌始めそうなメンツだ。
    この甘ったるい空気にただただ浮いている。これ終わったら教祖様に申告するだけして酒盛りやるか。せっかくならゼパルやバティンも誘いたいけど今日はちょっと厳しいか……あんなブラックホールみたいな食い方してて二次会来る方が怖いわ。腹どうなってんだよ。
    「俺らより司教様達の方が馴染んでるよな完全に、あのクソデカケーキ確かレーシィ様とヘケト様も一緒にだろ?凄いわ」
    「言われてみればカラマール様からもお返しにやけに高そうなチョコ頂いてしまったな……美味しかったしハボリュムとバアルゼブブは喜んでたけどもちょっと申し訳なさが……」
    「あの方は好意で貰ったものの値段とか気にしてなかろう、あまり気に病む必要は無い」
    「……シャムラもなんだかんだ楽しそうだな。」
    皆がはしゃぐを見ながらまったりと駄弁る。そういえば、とアガレスが急に俺の名前を呼んだ。
    「ヴァレファール、お前あちらにあるクッキーは食べたか?」
    「へ?食ってねえけど、何?美味いの?」
    「………………」
    にや、と静かにアガレスの口が三日月の形になる。うっわ聞きたくねぇ絶対碌な事言わねえぞコイツ。
    「んだよその顔!!!!もう喋んなお前!!!!」
    「え、俺らが気になるわ喋れ喋れ」
    「あれがどうした」
    黙らせようとするも逆に興味を持ってしまったアロケル達に促される。ちくしょうコイツこうなるの解ってて今言いやがったな。
    「其方がバレンタインの時にレーシィ殿に一生懸命クッキーを焼いて渡しただろう?健気にラッピングまでして」
    「捨てる気だったのをテメェがハメやがったんだろうが!!!!!ラッピングはテメェだろ殺すぞ!!!!」
    ぶん殴ってやろうと詰め寄るもアロケルに羽交い締めにされる。ほんっととことん想定内っぽくてムカつくコイツ。
    「皆で渡したあのクッキーが嬉しかったらしくてなぁ、そのお返しとしてレーシィ殿が焼いたそうだ。」
    「「「……へぇ」」」
    ……おい、なんだお前らその顔。こっち見んな全員殴るぞ。
    明らかに微笑ましい視線が耐えきれねえ。そう思いながらジタバタ暴れてるとアロケルがそのまま方向転換して変な角度で俺を放した。急に放されつんのめり、疑問符まみれの俺。前方には結構離れたとこに祝宴の中心、後方はやったらニヤついたコイツら。
    「せっかくのレーシィ殿の好意だ。一つぐらいは頂いておきなさい、ヴァレファール」
    「……行ってこい」
    「空になるまで食ってきていいからなー」
    「味の感想聞かせろよ後で」

    「……テメェらまじ後で覚えてろよ!!!!!」
    顔が凄く熱い、まじでふざけんな。
    自分でも笑えるぐらいの捨て台詞を吐きながらもうヤケクソでズカズカ進んでいく俺。
    その姿がどう映ったのか……背後から、けらけらと笑う野郎共の声が聞こえた。
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