スーパースターにも人恋しい夜はある。
「アンディ、ただいま」
帰宅してすぐ通る声で呼びかける。AI音声認識スピーカーが反応して照明が点灯しエアコンが稼働した。天井の吊り下げ照明のほかにきのこの傘のようなフロアランプや星形のテーブルランプが一斉にやわらかな明かりを広げる。この家に間接照明を取り入れたのは自分だ。上品でふんわりと優しい光がゆったりリラックスできる空間を作る。反射する面の質感や凸凹により光の映え方も変わるので天井材や壁材にもこだわった。けれど広々した部屋の中に一人きりだと寂しい影を生むだけだと知る。
ほんの少し前まで華やかな場所で笑っていて、一番安心できる家に帰ってきたというのにひとりぼっちで放り出された気分になる。それもこれも家族同然の同棲相手がずっと留守にしているせいだ。仕事だと理解しているけれど電波の届きにくい場所にいるせいでなかなか声も聞けない日々が続いている。
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