六、頬(親愛、厚意、満足感) 特別じゃなくていい。ただそこにあって居てくれればいい。
小竜は、マントにくるまって、南泉のように縁側に転がっていた。うとうとと庭の水やりをしている、大包平を見ている。
「サボるな。小竜。」
今日の当番は庭の水やりだ。本丸には大小さまざまな庭が多くあるので、水やりも一苦労だ。もちろん彼らが全部に水をやるわけではなく、他の当番同様、皆で手分けをしてやる。今日彼らが割り当てられた、若葉が生い茂る庭は、太刀の二振りでやるには、手狭だった。
「今日は当たりさ。がんばって、大包平。」
すっかり昼寝を決め込んだ小竜が目を閉じる。
「小竜。」
大包平は叱るように低く名前を呼んで、小竜からマントを剥ぎとる。文字通りくるまってた小竜は、くるくると回って縁側を転がっていく。
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