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    siba_nin

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    siba_nin

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    雑高喫茶店現パロ②

    無題高坂が雑渡の店を訪れてから約2週間。
    たまたま大雨に降られた高坂が雨宿りをしていると傘を持った雑渡に会う。
    7月の夏真っ盛りの午後5時だが、分厚い雨雲のせいであたりは薄暗い。
    雑:こんにちは。久しぶりだね。傘ないの?
    高:え…あ…お久しぶりです。
     コンビニで置いた時に取られてしまったみたいで…
    雑:この傘、貸そうか?
    高:えっ、でもあなたのが…
    雑:まぁ店はすぐそこだし。走ればなんとか。
    高:いえ、私は大丈夫です。
    雑:…お前はいつも大丈夫って言うね。
    高:えっ…?
    雑:明日まで大雨予報だから
     店まで一緒に傘に入って。 店に傘もレインコートもあるから貸してあげる。
     そんなに大きなリュック背負ってたら、傘があっても濡れてしまうよ。
    高:でも…
    雑:早く。もっと雨がひどくなる。

    ためらいつつも足を少し踏み出そうとしたら、それを待っていたかのように雑に手を掴まれて傘に入れられる。
    雑:ちょっと走るよ。
    雑渡の大きな手に左肩を抱かれ、大の男二人が肩を寄せ合い、激しい雨の中小走りで店に向かう。
    2分ほどで雑渡の店に着く。
    いくら傘が大きくてもそれなりに身長の高い男二人が入るには小さすぎた。
    店内のダウンライトに照らされた雑渡の服は、右肩から右足にかけてぐっしょり濡れていた。
    そんな自分の服には気を留めず、高坂に体を拭くようタオルを渡す。
    「レインコート取ってくる」と店の奥に消える雑渡。

    しっとり濡れた服をタオルでそっと拭いていく。
    その瞬間窓から光が差し、ズドドドドンと激しい音と軽い地鳴りが起こる。
    フッ。
    と店内のダウンライトが消える。
    さっきまでブーンとなっていた冷蔵庫の音も消えてしまう。
    驚きつつも、停電かと思った瞬間、レインコートを手に雑渡が薄暗い店内へ戻ってくる。
    雑:あれ、今の雷?停電?
    高:はい、恐らく。
    大雨のせいで外からの光も少なかったが、窓の外を覗くとどうやら周りの家や店の電気も消えてしまったようだった。
    スマホで停電情報を調べる雑渡。かなり広範囲で停電している。
    雑:電車も止まったって。
    高:えっ!
    使う路線を調べるとやはり運休している。
    雑:家、近いの?
    高:いえ…○○駅です。
    雑:あー結構遠いな。今日もだけどこの辺りには何か用事が?
    高:教授のお宅にお邪魔していたんです。
    「なるほど」
    少し考える雑渡。
    雑:この後予定ある?
    高:いえ、帰るだけでした。
    雑:明日は?
    高:?日曜なので特には…。
    雑:なら、泊まっていきなよ。
    高:えっ!いえ、そんな!タクシー呼んで帰ります!!
    雑:こんな雨だとタクシー呼んでもなかなか来ないと思うよ。
    この辺りは流しのタクシーもあまり通らないし。

    高:でも
    雑:まぁ泊まるかはすぐ決めなくてもいいけど、冷蔵庫の食べ物がダメになっちゃうから、食べるの手伝ってくれない?何か軽く作るよ。
    高坂がどう返事をすべきか悩んでいる内に、雑渡は店の奥からろうそくや懐中電灯、カセットコンロを取り出してきて、料理の準備を始める。
    雑:何か苦手なものある?
    高:えっ、いえ特には…。
    そう。ならコーヒーでも飲んでゆっくりしてて。
    差し出された水だしコーヒーは、以前のものとは違った香りがした。
    ――――――――――――――――――――――――

    レトロな喫茶店には似つかわしくない塩焼きそばは、とてもおいしかった。
    ろうそくとアルコールランプの明かりだけの薄暗い店内でカウンターに並んで食べた。
    雑:そういえば自己紹介してなかったね。
    私は…雑渡。雑渡昆奈門。3年前からここで雇われ店長やってます。
    高:雑渡さん…。私は、高坂陣内左衛門と言います。よろしくお願いいたします。
    名前を聞いたくらいじゃあ、思い出さないか…と思いつつ
    雑:私が言うのもおかしな話だけど、なかなか渋い名前だね。高坂君、よろしく。
    高:祖父がつけてくれたみたいで。
    雑:かっこいいよ。
    目の前の高坂があの頃と全く違う名前の人間として生きていたら…と思うと、名前を聞く勇気が持てなかったが、同じ名前で生きていてくれて心底嬉しい。だがそれと同じくらい、陣左と呼べないことがもどかしくて胸が詰まる。
    雑:…この生麺、好きなんだけど二人前でしか売ってなくて、使うたびに2食続けて焼きそば食べることになるんだよね。
    高:ははっ一人暮らしではよくありますね。
    雑:君は一人暮らしなの?
    高:はい。

    そんな他愛もない会話をしながら夜が更け、結局お泊り。(手は出さない)
    翌日の昼前には雨も弱まり、電車も運転再開。
    高:またこんなにお世話になってしまって、本当にありがとうございます。
     今度はちゃんとお客として来ます。

    と言って2日後に菓子折りもってやってくる高坂。
    高:コーヒーに合うお菓子を選んでもらいました。その節はありがとうございました。
    と美しい45度の敬礼をする高坂に思わず苦笑する雑渡。
    相変わらず礼節を重んじる彼がそこにいた。
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