両手で数えられないほど身体重ねてきたあたりで、桐はいまだに若干抵抗がある様子なんで
「…まだ生娘ぶっとるんか?」と煽る真
「あんたが悪いんだろ…」
「何がや」
「……」
それきり黙りこくった桐をいつも通り、丁寧な前戯と愛撫でめちゃくちゃ甘々にでろでろに抱き潰す真。それとは裏腹に、恋人のような囁き合いが紡がれることはなく、荒い息遣いと水音のみが響くのが常。
いつもはヤった後落ち着いたらピロートークも馬鹿らしく、お互いそそくさとすぐ解散する。でも今回は気まぐれに、聞こえてるかも怪しいほど蕩け切った桐に問いかける真。
「…わしのどこが悪かったんや、桐生チャン」
「……。…だ」
「なんや、トんでなかったんか」
「ぜんぶ…全部だ。全部あんたがわるい…」
「はぁ?」
子供じみた言い返しをする桐生に拍子抜けして、つい間の抜けた声が出る。次いで、ふつふつと苛立ってくる。好かれなくても良いが、嫌われるのは嫌だった。むしろ、行くあてを失った最後に、…
「ほうか、わしの悪いとこ、ひとつひとつ言うてみぃ」
調子のいい煽り文句にすら、桐生は噛み付く余裕もないようで。息を整えて、独り言のように呟き始める。
「…そうだな、キスが乱暴だ。そのくせ…女みたいに抱きやがる」
「嫌なんか」
「…いや…だが…」
「……」
「…勘違いしそうになる」
それが目的やろが!!!居場所はここや、勘違いすればええんや!!
身体を焼くような熱を覚える。怒りか、愛か、わからなかった。声にならない熱を、再び龍に埋め込んだ。
一晩を過ごしたくせに、言葉を交わしたのは何時間前だったか。やることやった後は朝日が昇る前に、いつも通り淡々と部屋を出る準備をするはずだった。身体の熱はとうに覚めていたが、頭の中は絡み合い、腑に落ちない。この龍は、がんじがらめに縛りつけても、するりと抜け出てしまうのだ。それが今日は、いや…ずっと前から、最初から、許せなかった。
起き上がりシャワーに向かおうとする桐生に、背を向けたまま言う真。龍を睨め付け、逃さんとする般若がいる。
「…桐生チャン、その…」
「後は、言いたいことが山ほどあるくせに、言わねえところだ」
「っ!?…な……」
さっきの話が続いていたのは、己の中だけでなかった。驚いて振り返ると、思ったよりもずっと近くにその顔がある。
「ヤってる時のあんたの目は“悪くない”ぜ」
桐生なりの意趣返しだ。
「だが、たまには口からも聞きてえもんだな」
「…いくらでも聞かせたるわ」
いつもよりずっと甘く、恋人同士のように唇を重ねる。
龍と般若は、睨み合いをやめた。