赤い糸で絡めとる手筈2月14日。私は特別な想いを抱えていた。平等院くんに告白するのは卒業式の日にしようと考えていた私だけれど、バレンタインというイベントは逃せなかった。チョコを用意してもいい?と聞くと、好きにしろと言われたので、一応受け取ってはくれるみたいだった。
学校へのお菓子の持ち込みは禁止だったため、一度帰宅してから彼の最寄り駅で待ち合わせることにした。
駅に着くと、少しの緊張感が心をざわめかせる。しばらく待っていると、平等院くんが近づいてくるのが見えた。学校以外で会うのは初めてだ。いつもと変わらない姿なのに、すごくドキドキする。
「わざわざ来てもらっちゃってごめんね。頑張って作ったから食べてほしくて」と箱を差し出す。
告白はしないにしても、この状況に緊張している私の口は止まらなかった。
作るのは小学生以来、友達に配るためにお母さんと一緒に大量に作った、1人で作るの初めてであんまり上手にできてないかも、オーブンの前で見張ってたからちゃんと焼けてるはず、味見もしたから大丈夫だとは思うんだけど、なんて言い訳のような言葉をたくさん並べた。
「お返しはいらないから、私もう卒業しちゃうし」
チョコを受け取っても、いつも通り私の話を聞いてるんだか聞いてないんだかわからない態度だった彼は、私の発した「卒業」という単語に少し反応したように見えた。
無事にチョコも渡せたし、寒い中拘束するのも悪いなと思い帰ろうとした。ところが、彼が急に私の腕を掴んだのだ。
振り向いて、彼と目が合う。
降ってきた言葉は、
「俺と付き合え」
耳を疑った。告白というより命令だった。あまりにも突然だったため、練習に付き合えとか出かけるのに付き合えとかそういう話かな〜などという考えが頭をよぎった。でも、そうではないと彼の真剣な目が物語っていた。『目は口ほどに物を言う』ということわざの意味を私はこの時理解した。
チョコを渡したのは私の方なのに。
動揺し、「えっと……私の事好きだったんだ……!?」と聞くも、彼は答えない。私と違って素直に言葉で表現するのが苦手な人だってことは、今まで一緒に過ごした時間の中で私はもう知っている。そらした顔がいつもと変わらなくても、耳が少し赤くなっていることにも気づいている。
愛しさが溢れ、笑顔で「私〝も〟平等院くんのことが好き!」と答えた。
そう、これは私達が付き合いはじめた日の話。