『夏の終わり』カカオビワンドロ『夏の終わり』
「じゃあ行ってくる。一時間で戻るから!」
「分身体残してくれて助かります。んじゃあ、お気をつけて」
自らの分身が怒涛の勢いで書類仕事をこなす中、本体のカカシはシカマルの前を通り抜けた。火影室を出て、早足で秘密通路へ向かう。火影の羽織を火影室に置いてきたのは、目立ちたくないし、なにより速く歩きたいからだった。
大戦中、うちはオビトはカカシの精神世界で別れを告げたものの、すぐに現実世界での実体を得た。六道仙人の好意だったが、その姿はカカシの精神世界での幼い姿と同じ、十代前半の身体に戻されていた。
子供の姿で現世に残されたオビトは、すぐ隣のカカシを見上げ、ナルトの前に佇むミナトを遠い目で見つめ、横たわるマダラを一瞥したのち、自らの手の平を眺めた。オビトはカカシに別れの挨拶をしてくれたときのような顔はしていなかった。この身で何ができるのか、そんなものがあるのかと、じっと考えている様子だった。
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