ジャッジロボも流石にアウトを出した「何故自分を大切にしない」
「お……Qこそ自分のことを言えないだろう」
24シティの一角に響く喧噪。いつものかと耳を澄ませたメンバーは意外な二人の声を聴く。リーダーである青山カズキとただならぬ仲と噂される謎の青年Qが言い争っているのだ。原因を聞くにどちらもどっち。夫婦喧嘩は犬も食わぬというがこれを指すんだろうと言った内容だ。
「ま、まぁまぁお二人とも。とりあえず怪我の治療を……」
仲裁の為につる子が声をかけるが笑顔なのに目が笑っていないカズキと隈取られた目付きを更に鋭くしたQに見つめられてはひぃ!と怯えてしまうのも詮無きことだろう。完全に目が据わっている。
「大体、君は昔から一人で先行してあれやこれらと危ないことをしているだろう」
「カズキこそ睡眠を取らないで急に倒れるのを誰が運んでいると思っている」
平行線、止まることのない言葉の応酬。ミウ辺りはもう放って置くのが正解と呑気にお茶を飲んでいる。それに釣られるのは曜でならばとツキもお茶に交われば二人を構う者はいなくなる。二人の会話はますますエスカレートしていく。
「僕にだって心配させてくれよ」
「私はお前に無茶をさせたくはない」
話を聞いていればお互いを思っていることは一目瞭然なのに白熱した二人には暖簾に腕押し糠に釘とばかりに通り抜ける。三田は珈琲を口から漏らしている。目の前で行われる喧嘩に近い惚気がこんなに胸焼けを起こすことを知りたくなかった。角砂糖を飽和するくらいの甘さを伴った口内から漏れる珈琲が切ない。こんな日にフラクタルヴァイスに挑もうと思った己の運を嘆いていた。
どんどんと口論がヒートアップすれば面倒になったカズキが
「……もうQの馬鹿!知らないっ!」
なんて口に出せばこの世の終わりを告げられたQがそこに立ち尽くす。慌てたカズキが耳元で何かを呟けば、その後の彼らはどこかに消えていく。それを仲がいいねーとえのきが呟けば、そこにいるえのき以外の全員は息を吐き出し心は一つになる。痴話喧嘩は人のいないところでやって欲しいと。
人のいない場所へ移動してきたQとカズキは誰もいないことを確認して抱き合う。瞳を合わせてくすりと笑えば先程の喧嘩を忘れてしまう。少しの時間をじっと目を見ていれば唇を重ねる。
なんてことのない日常風景だった。