修行 僕は、ついにピッコロさんと恋人同士になれた。
明確にいつからかは覚えていないが二十年間はその恋心に蓋をしてきた。そして25歳になった僕は、ようやくピッコロさんに打ち明ける事ができた。
「ッん……! き、きさま! ぁんッ……いつま、で、こうしって、いるつもりだ!」
「んー? いつまでもこうしていたいですよ♡」
この荒野へと修行をしにきたピッコロさんと、イチャイチャしにきた僕。2人の目的はまるで違った。
「修行、しにっ……んんッ……きたんじゃ」
「まぁまぁ、少しくらい良いじゃないですか……ね?……」
「……〜〜!! どこが少しなんだ!」
たった数分キスの嵐を浴びせただけなのにピッコロさんのは相当お怒りのようだ。
「だいたいお前最近修行をさぼっているだろ!」
「そりゃ、仕事していますから……」
「いつ危険が襲ってくるかわからないんだぞ!」
「え〜、そんなことありますかねぇ?」
「それにお前っ……あ、あれから……」
ピッコロさんの顔はみるみる赤くなり、言葉が途切れ途切れになる。
「あれから?」
「だ! だから! あ、あの日から……会う度にえっちな事ばかりして!」
……ピッコロさんの口からエッチという単語が出るだけで僕の脳内は掻き混ぜられるような感覚に陥る。
「俺は修行しに此処へ来ているのに、お前はここに来てはえっちばかりだ! 思春期の男子かお前は!」
「だって男の子ですから!! そりゃ好きな子とイチャイチャしたいに決まっているじゃないですか!」
付き合って1ヶ月。修行という理由をつけてはこの荒野に誰もいないのを良いことに毎日性行為に至っていた。
正直なところ、ここ1ヶ月はピッコロさんのいうとおりまともに修行なんてした覚えはない。
しかし、思春期なんてとっくに過ぎ去ったがそんなこと関係なく、大好きなピッコロさんと恋仲になれて、そして2人きりなんて状況になれたらそりゃ襲いたくなるのは仕方のないことだろう。
「もういい……俺は決めた」
「な、なんですか?」
「お前がまともに修行するまで、えっちは禁止だ!!」
……は?
お怒りの様子のピッコロさんは驚くことを言い放つ。
「え……そんな、無理だって……」
「いいやダメだ。 俺はもう決めたんだ! 修行を理由にして俺を呼び出してはえっちえっちえっち……猿かお前は!!」
ピッコロさんがエッチって連呼してる!!!!
「そ、それは……」
「とにかく、お前がしっかりと修行してくるまでえっちはしない!」
ピッコロさんに気圧されそうになったが僕だって負けない。そう、ピッコロさんにずっと言いたいことがあった。
「な、なら……ピッコロさんだって修行してくださいよ!!!」
「は? 俺はいつだって修行しているだろ?」
「違います!」
「何が違うんだ!」
「ここの修行ですよ!」
そう言ってピッコロさんの下半身を指差した。
「ッ!? はっ!? き、きききさま……どういう意味だ……!」
顔を真っ赤にして困惑するピッコロさんも可愛いな……。
「だーかーら、"おまんこ修行"してくださいって言ってるの?」
「おま?」
「ピッコロさん、一度もイけた事ないでしょ?」
そう、ピッコロさんは僕との性行為で一度も絶頂した事がない。よって僕が果てるといつもそこで切り上げられてしまうのだ。本当は2人で気持ちよくなりたいのに……。
「そ、それは……もしかしたらナメック星人には性感帯がないのかもしれないだろう……」
「いいや、あります」
「何故断言できるんだ!」
「僕知ってますよ。ピッコロさんが良いところ触られる度に感じてるの。だから性感帯はあるんです」
「っな! かっ感じてなど」
「おまんこで感じるのはもう少し修行が必要みたいですけどねぇ?」
「うるさい!だまれ! ……ッと、とにかくまともに修行するまでえっちは禁止だ! わかったか!?」
恥ずかしがっているのか突如IQの下がったピッコロさんが可愛くて仕方がなかった。
しかし……、修行しないとエッチさせてもらえないとなると仕方がない。やるしかないか。
「はぁ……もう、わかりましたよ」
◇
そして1週間が経ち僕はまたいつもの荒野へと赴いた。
「……お前1週間もここに来ないでなにを……っう!」
僕はピッコロさんを押し倒し馬乗り状態になる。
「ここに来ないでなにをって? ……そんなの修行して来たに決まっているでしょ、ほらみて?」
早速僕は変身してピッコロさんに修行の成果を見せた。
「……!? な、何だそれは……銀髪……?!」
「あはっ……ピッコロさんとエッチするために頑張って修行していたらこんな姿になっていました♡」
「……!? す、凄いな……お前……」
「あはっ♡ これでエッチさせてくれますよね?♡」
「…………お、俺だって」
「?」
ゆっくりと身体を押される。
起き上がったらピッコロさんの声は小さすぎて僕の耳では聞き取れなかった。
「はい?」
「だから!! 俺だって"おまんこ修行"をして来たと言っているんだ〜〜〜!!!!」
「…………は? え? まって、ピッコロさんの口から、おま……え……え??」
銀髪から黒髪へと戻り変身が解けてしまうほど気を乱された。
「……悟飯?」
「〜〜〜!!! ピッコロさんが"おまんこ修行"なんて言葉使ったらダメですよ〜〜!!!! そういうのはセックスしてる時に言って僕をドキドキさせれば良いんです!!」
「は?!?! この前お前が言っていたのだろう?!」
「僕はいいんです」
「訳がわからん!」
本当にこの人は純粋というか、無知というか……。そうやって無意識に僕を煽っている事すら理解していないんだろうな……。
「ふん! お前も相当修行して強くなったようだが、成果を上げたのはお前だけではなかったようだな!」
「は? それって、イけるようになったってこと?」
ドヤ顔でピッコロさんはとんでもないことを言い放つ。
「あぁ、しっかりと修行してきたからな。 悟天にもアドバイスを貰ってきた」
「ごて!?!? は? ちょっと、どうして悟天なんですか!! 僕じゃダメだったの!?」
「悟天はそう言ったことに詳しそうだったからな。 それにお前を驚かせたいのにお前に言う訳なかろう」
「それで悟天はなんて!?」
「好きな人に触られてると思いながらすれば気持ち良くなれる、と言われたな」
うわっ……なんか急に僕の中でピッコロさんが自慰行為してる姿の解像度が上がってきたぞ……。
「えっ……じゃ、じゃあ僕のこと考えたらイけたの?」
「ああ、"兄ちゃんの指だと思ってすればきっとイけるよ"と悟天に言われたから言われたとおりにやったらイけた。 さすが兄弟だな」
またこの人は自信満々でとんでもない事を言い放った。
「いやいやいやまって、そこ兄弟関係ないですよね……ていうか…………は?? じゃあ僕にされてるのを想像したらイけたってこと?」
「そうだ」
「………………え……まじすか……」
僕の為に、中で感じれるように努力した恋人が、あまりにも健気で可愛くて胸が締め付けられる。
「おい悟飯! 鼻血がっ! …………悟飯?」
「……は、はは……じゃあ、今すぐ修行の成果……見せてくれますか?♡♡♡」
「……!? 今すぐにか!?」
「勿論です。善は急げですよ」
ピッコロさんは辺りをキョロキョロと見渡し暫くするとまた口を開いた。
「う、うむ……わかった。 しかし……やはり此処だと緊張してしまう……。 し、神殿のベッドでは、ダメか? 悟飯」
僕の道着の裾を掴み首を傾げてそんな事を言う。これがわざとじゃないんだからあざとすぎるよピッコロさん……。
「ふふっ……わかりました。じゃあ神殿でいっぱい修行の成果見てあげますね?♡」
耳元でそういうと、ピッコロさんの身体が少しだけはねた。……あぁ、キスしたいな。
「う、うむ……。うまくやれるよう、頑張る……んんっ」
「んっ……僕の為に、偉いね……ピッコロさん、すごく嬉しいよ♡」
ピッコロさんが可愛すぎるから、無意識に唇を奪っていた。
「んッ……んあっ……ま、まて、神殿に行くんじゃ」
「あはっ! すみませんそうでしたね……あ、そうだ。次からは性のことは悟天じゃなくて僕に相談してください。約束できますか?」
小指をピッコロさんの前に差し出すと、ピッコロさんも小指を絡めてくれた。
「え……、わかった……ん……」
小指を絡めたまま触れるだけのキスを落とす。
そして、お姫様抱っこをしてあげると暴れだすピッコロさんは気にも止めずに神殿へと向かう。
「ぬわっ!!! お、おい、離さんかー!」
あぁ、きっと今日は人生で最高の日になる予感がする。