ココアの甘さ 眠れない。
ゴンは横になったまま、暗闇の中で目を開けた。
しばらくじっとしていると、だんだん暗闇に目が慣れてきて、ぼんやりと室内の様子が視界に映り込んだ。ゴンは壁の時計に目を向ける。
午前三時。
一日のうちで、いちばん静かで、いちばん暗くて、いちばん寂しい時間だ。今夜は月もない。だから尚更、暗い。そのかわり、開けた窓の外には、満点の星々がきらめいていた。
ゴンは静かにベッドを抜け出して、キッチンへ忍び込んだ。
冷蔵庫から牛乳と、食器棚から若草色のマグを取り出して、なみなみと注いだ牛乳を温める。部屋の明かりを点けなかったので、暗い部屋に電子レンジの光だけが淡く光って、ゴンの頬を優しく照らしていた。こんな夜更けに、ミトさんにも内緒で、なんだか悪いことをしている気分になる。ターンテーブルを見つめながらゴンは、もしミトさんが起きてきたら、叱られるかな、なんて考えていたが、家の中はしんと静まり返っていて、電子レンジの微かな音だけが、無機質に響いていた。
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