俺の前からひらりと去っていった「秋斗!晩ご飯には帰ってくるんでしょ。七時だからね」
「あー、たぶん、大丈夫」
「多分やなくて、ちゃんと帰ってくるんやで!正月くらいウチでご飯食べや!すき焼きやで!」
へいへい、と適当に返事をしながら、秋斗は靴の爪先をならした。とんとん。
「出かけるんか」
「お前には関係ないやろ」
「質問したらあかんのか」
苛立った夏彦が壁を叩いた。面倒くさそうにしていた秋斗は、糸目の笑顔に切り替わった。言い争うつもりはないらしい。
「シニア時代の奴らとマクド行くだけや」
「東京やったらお前もマックって言っとるんやろ。ウザ」
夏彦はなにやら嬉しそうなニヤけた声で煽った。
「マックなんて言うてへんわ。そもそも、寮以外で飯なんか食わんやろ」
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