【鉢雷】草露信仰 最後に酒を飲んだのは床板だった。
だらりと垂れた手の中にある杯から、透明な液体が木目に沿って広がっていく。三郎は、ボンヤリとそれを見下ろしていた。
◇
事の起こりは、五年ろ組の実習が無事終わり、皆が汗や泥に汚れた体を湯で流した後のこと。三郎・雷蔵・八左ヱ門の三名は、合計六本の足で夜の廊下を歩みながら、明日は待ちに待った休日だと銘々にはしゃいでいた。
せっかくだし明日は三人で出かけようか、じゃあどこにする、あそこはどうだ、あそこはこの前行ったばかりだろ──と、弾んでいた会話が、ふとした拍子に静まって。
「……今夜、やる?」
と、八左ヱ門が言ったのだった。ニマリと口元をゆがめて、内緒話でもするような声色で。
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