猫を拾った。
雨の中、夜道の片隅でくたりと倒れていたから死んでいるのかと思った。かわいそうになあ、なんて通り過ぎようとしたら。不意に目があった。弱々しく開かれたその目は新緑の様に煌めいたが、すぐに伏せられてしまった。
まあ、生きているのなら。
雨と泥でボロボロに見えるその猫を拾い上げて、家へと連れ帰る。拭いただけでは汚れが落ちなかったので、シャワーで洗いしっかりと乾かしてやれば。
「……驚いた」
当の猫はまだ目を閉じてくったりとはしているが、その毛並みは艶やかで金糸を思わせる色合い。今まで見たことのある猫の毛色とはかなり異なる。
目を開けない猫を布団代わりのバスタオルの上に乗せる。生憎、動物など飼ったことがなかったのでペット用品などはない。スマホで色々と調べてみればいくつか初心者向けの猫の飼い方のノウハウが見つかった。
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