一番上の兄が結婚する。
そんな手紙を受け取ったのは、瑳雲(さくも)がクロノ学園に入学して、ひと月ほど経った頃だった。
急な話に驚きはしたが、義姉となる人の名前を見て納得したものである。柚葉という、香老舗の娘だ。瑳雲たち反物屋の三兄弟とは幼い頃から懇意にしており、特に長兄とは仲が良かった気がする。なるほど、お似合いの二人だと瑳雲は笑った。
受け取った手紙には祝言の日取りと場所、家族の近況などが長々と書き連ねられ、そして最後に、やんちゃな末弟を案じる言葉が添えてあった。
学業が大変なことは分かるけれど、たまには家に帰って両親を安心させるように、とのことだ。心配性な長兄の声が、はっきりと聞こえてくる。
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