『人は、運命を避けようとしてとった道で、しばしば運命に出会う』byジャン・ド・ラ・フォンテーヌ
ざぁざぁと大粒の雨が降り注ぐ忍術学園。古い木造の建物は所々で雨漏りが発生し、用具委員会が忙しなく働いている。さすがの体育委員会も、六年ろ組体育委員会委員長の七松小平太がいないためか塹壕掘りはしていない。だが、四年い組作法委員会所属の綾部喜八郎だけはいつもと変わらず穴を掘りまくっている。六年い組作法委員会委員長の立花仙蔵という抑止力が不在の今、止められるのは四年い組体育委員会所属で喜八郎と同室の平滝夜叉丸のみだが、近くに滝夜叉丸の姿が見えないことから、滝夜叉丸は既に諦めているとみた。
五年ろ組学級委員長委員会所属の鉢屋三郎は、そんな光景には目もくれずに明日の任務に向けての準備を進めていた。記録用の紙と筆、忍具の手入れ、変装用の面。必要なものを厳選し、風呂敷に詰める。事前にわかっていた任務なので、同室である五年ろ組図書委員会所属の不破雷蔵には明日の朝早くに出ていくことは伝えている。そのため、特に置き手紙等は必要ない。
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