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    konkon12165

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    konkon12165

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    白雄と白蓮と紅炎の話。カップリングなし

    一蓮托生「ねぇ、兄上。なぜ俺の名前が白蓮なのか知っていますか?」
    「なんだ唐突に。母上辺りから理由でも聞いたか」
     唐突に、それも脈絡なくそんな事を言い出した二つ年下の弟に、白雄は何か不味いものでも食べたのではあるまいなとばかりに胡乱な眼差しで見やった。見た目通りやんちゃで歳より幼く思える弟が、突然そんな意味深な話を始めたら大抵の兄はそんな反応になるだろう。そんな白雄の視線をものともせず、快活で明るい白蓮は目を輝かせて話を続ける。同じ長椅子に座っているので、身を乗り出されると距離が近く、白雄は若干仰け反りつつも聞いてやる事にした。
    「聞いてないですけど」
    「ではなんでこの話は始まったんだ?」
    「まぁまぁ。とりあえず聞いてくださいよ。俺の名前には蓮って入っているじゃないですか」
    「……そうだな。蓮は極楽浄土に咲くと言われる典雅な花だ。名は体を表すと言うけれど、お前は典雅どころか今日も壺をひとつ駄目にしたばかりだなぁ」
     とりあえず話を聞く体は取ったものの、思う所がありすぎて思わず口を挟んでしまう。白蓮がはしゃいでぶつかった結果、割れてしまった壺の価値の高さを思い出すと頭が痛くなった。蓮の花のように雅やかな立ち居振る舞いができれば、皇子という身分の者としてはこの上ないだろうにと白雄は思ってやまないのだ。
     だが、白蓮はそういう事じゃないんですよ!と白雄の言葉を力強く否定した。じゃあ何が言いたいんだと白雄はやっと口を閉じて聞いてやる。
    「典雅とかそんなのはどうでもいいんです。要は、俺は兄上が持っている重たいものをいつも半分持てるって事なんです」
    「いつも半分持てる……?」
    「はい。父上が兄上にはこれから重たいものがどんどん増えるって言ってました。でも、俺が一蓮托生の蓮になって、兄上とずっと一緒に居たら、どんな重いものでも半分の重さになるでしょう。俺の蓮はそういう意味だって俺決めたんです」
     思いがけない言葉に白雄は目を丸くした。この弟がそんな事を考えているなんて、思いにもよらなかった事だ。あまりじっとしている事を好まない白蓮は、書を読むのも左程好きではないようだったから、気紛れに読んだものにでもその言葉が書いてあったのだろう。自分の名前の意味を、親でなく自分で決めるなんて聞いたこともないが、そんな事は今どうでもよかった。
     一蓮托生とは行動や運命を共にする事。この煌の皇太子として生まれた白雄はいずれ玉座につく運命だ。それは、いくら嫌でも重くても逃げ出したくても、必ず背負わねばならぬものだった。父上の言う通り白雄には重たいものが増える。そういう運命だ。それをこの弟は共に背負うというのか。まだまだ幼いとばかり思っていたのに、白蓮の眼差しは真っ直ぐで、迷いなく白雄を見ていた。
    「白蓮……お前……、」
    「だから兄上。その膝の上の紅炎重たいでしょう。俺も抱っこしますから。なんせ一蓮托生ですからね」
     数秒前までの感動は一気に吹き飛んでいった。感動を返せと言ってやりたい。白蓮は今や瞳をきらきらとさせて、白雄の膝の上に抱かれてすやすや眠っている紅炎を見ている。この従弟は最近やっと触れる事を許してくれて、ようやっとここまで懐いてくれたのだ。初めて会った時から仲良くしたいとは思ったものの、紅炎は年齢以上に思慮深く、皇太子と第二皇子に対して恐れ多いとなかなか距離を縮めさせてはくれなかった。
     膝の上に抱いた5つ年下の紅炎の身体は暖かく、幼くまろい頬はふにふにとして柔らかい。幼くても秀麗な顔立ちは可愛らしく、稚い寝顔を見るとなんとも癒されるものだ。まだまだ小さな体はそこまで重たいということもない。
    「お前がただ抱っこしたいだけだろう。紅炎は譲らないぞ」
    「えー!?兄上には俺という弟が既にいるじゃないですか!でも、俺は紅炎が初めての弟なんですよ。少しは譲ってくれてもいいでしょう」
    「煩くするな。紅炎が起きるだろう。お前は騒がしいからあまりこういう事は向かないんじゃないか」
    「そんなことないです!」
    「んぅ……」
     紅炎が身を捩って声を漏らすと、二人ともぴたりと会話を止め、息を殺して眠っている紅炎を見た。どうやら目覚めるまでには至らなかったようで、小さな手で白雄の着物をきゅっと握ると、胸にぐりぐりと額を摺り寄せまたすぅすぅと眠り始める。本当に可愛い。ほっと安堵の息をついて白雄は紅炎を抱き直した。燃えるような赤毛を撫で、お前に預けるのはまだ早いなと言ってやると、白蓮は膨れっ面をして不満げに白雄を見たのだった。
     これが走馬灯とかいうやつだろうか。そんな場合では無いのに、平和で遠い昔の事を思い出して白雄は荒い呼吸を繰り返しながらふと笑う。結局、白雄はまだ玉座にはついていないものの、初志貫徹してこの弟はずっと白雄の隣に居るなと思った。燃え盛る炎は勢いを増すばかりで、刺客も絶え間なく湧き出てくる。熱風を孕んだ空気は吸い込むだけで喉が焼け爛れそうだった。伝う汗を拭って剣を握り直す弟を見て、白雄は声をかける。
    「白蓮、」
    「兄上、俺が囮になるから逃げろとか言わないでくださいよ。言ったでしょう。俺は一蓮托生の蓮なんですよ」
     俺は有言実行の男なんです、と場に似合わず白蓮は笑って見せた。




    END





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