初めてのパーティーは二人きりで「さ、マジュニア様。早くしないとせっかくのパーティに遅れてしまわれますよ。」
「知るか!俺様は貴様以外のやつと触れ合うのなんかキライだっ!」
ここはとある有名な一族・・・ピッコロ家の屋敷である。
次期当主のマジュニアは今日、パーティに初参加となる。のだが・・・
「こら。マジュニア様がパーティに行かれることは私にとってもとても嫌なことであるのですが・・・こういう場も慣れておかないとほかのやつらに舐められてしまいます。ただでさえ、私にべったりなことは周知の事実であるのはまだしも、私と離れるのが嫌で社交の場に行かないとなると・・・大魔王様も何とおっしゃるか・・・」
「父上の意見なんか知るものか。俺は悟飯のみいればそれでいいんだ。今回のパーティだって最初は行く気だったさ。だがな・・・お前の仕事が急に入っただとかなんとかで俺のそばから離れるというのが我慢ならんのだ!どうにかならんのか!「それは・・・さすがに不可能でございます。何せ、大魔王様直々のご命令です。まだマジュニア様よりは立場が上なので断れないんですよ。」・・・うう。こういうところが父上の苦手なところだ。」
次期当主とは言え今の当主はピッコロ大魔王、マジュニアの父親で厳密には悟飯はまだピッコロ大魔王の部下扱いだ。
いくらマジュニアの権力やパワーがあってもピッコロ大魔王には手も足も出ない。
今回はあきらめるしかないのか・・・。マジュニアがしょんぼりとうなだれると、悟飯はマジュニアを優しく諭す
「大丈夫です。マジュニア様は一人でもパーティなどの社交の場に行くことができる年齢になったのですから。もっとしゃっきっとしたほうが僕の好みです。それに、できるだけ早めに仕事は上がるので、それまで我慢できますね?」
悟飯の笑顔に励まされて、マジュニアは顔を上げて言った。
「うん。悟飯が来るまで俺様、頑張ってみる。なんたって俺様はピッコロ家が長男、マジュニア様だからな!世界征服達成のためにこんなつまらんことで躓いてちゃ、話にならんわ!」
そういって、マジュニアがいつものように高笑いする。そのさまを悟飯は優しくそばで見守る。
そうして数分後、すっかりタキシードをまとってばっちり決めたマジュニアが馬車に乗ると、悟飯は何も言わずに笑顔で手を振りマジュニアを会場に送り出した。
後ろから迫ってくる反逆者や魔王を討伐しようとやってきた人間たちを隠していた悪魔の尻尾で蹂躙しながら。
「さて、マジュニア様にこんな汚らしいものを見せるわけにはいきませんからね。さっさと片付けてあの愛しいピッコロさんの生まれ変わりのもとに行かなければ・・・」
悟飯はいたぶりすぎて人間だったものとかつての部下たちだったものを尻目に、屋敷の中へと入っていく。
もちろん、もう忠誠を誓う必要もない大魔王を殺し、自身の最愛のあの人に新たな魔王となってもらうために。
会場に着いたマジュニアは、さっそくドリンクバーのあたりを占拠し、コップに水をくみ、飲んでみていた。
「・・・微妙な味だな」
ならばとほかのコーラやらメロンソーダといったほかのフレーバーも入れては飲んでを繰り返してみるもののすべて微妙で、大人からかすめ取ったグラスの中のしゅわしゅわしたやつも苦く、とても味わえるものではなかった。
「やはり悟飯とともにいないと楽しくないし、つまらん・・・美味しいはずの水も飲み物も何もかもすべてが味気ない。」
ああ・・・悟飯。早く来てくれ・・・! マジュニアは心の中で祈りにも似たような願いをポツリと零す。
がっしゃあああああああん!!!
「すみません!遅れてしまって。今からでも大丈夫でしょうか?」
突然、ガラスを割って、紳士服を着てモノクルをつけた執事風の男が姿を現す。
「ごは・・・ん?」
マジュニアは音の大きさと現れた人物の姿を見て、手に持っていたコップを思わず床に落としてしまう。
「あ、マジュニアさん!よかった!怪しい人とかに捕まりませんでしたよね!?服も貞操も無事で?」
悟飯は、マジュニア以外の人間のことを気にも留めず、マジュニアのことだけを見つめて心配の言葉を口にする。
マジュニアは本当に自分の目の前にいる人物が悟飯なのか疑問に思った。
だって、悟飯の姿は神話で語られるような悪魔のような羽に角、長い龍のような尻尾で突き抜けるように長い銀髪が逆立っている姿なのだ。
だが、同時に美しいとも思っていた。背後の大きな満月と割れた際に飛び散ったガラスがきらきらと反射し、悟飯の神々しい姿も相まってまるで・・・
「神様・・・みたいだな。」
マジュニアがつぶやいた一言に悟飯は、
「え?」
ときょとん顔だ。マジュニアは夢中で悟飯に駆け寄る。悟飯はガラスの破片を払ってから、駆け寄ってきたマジュニアを抱きしめる。
「ふふ・・・ボクが神様みたいとは・・・マジュニアさんも見る目があるんですねえ。僕からしたらマジュニアさんのほうが神様みたいだと思いますよ。ずっとずっと昔から・・・僕だけの・・・」
そういって大きな黒い羽根と暖かなぬくもりを持つ腕でマジュニアをやさしく包み込む。マジュニアはここが天国なのかと錯覚するほどの幸福感に酔いしれていた。
「すみません。この子体調が悪いようなので僕らはこれでお暇させていただきますね。あ、割れたガラスはこちらで処理しておきますのでおかまいなく。」
悟飯はすっかり眠ってしまった(悟飯が眠らせた)マジュニアをやさしく抱きかかえ、フィンガースナップをして割れたガラスを直してから会場を後にする。
「今度は人のいるパーティではなく、僕ら二人だけの二次会でもやりましょう!ふふ。大丈夫です。会場もあなたの好きなお水も休める部屋もしっかり用意してありますので・・・しばらくはそこで過ごしましょうね♡僕のだいだいだいだいだーい好きなピッコロさん♡」