夜中に、隣で眠る十二の寝顔を見ながら、1人考え事をする虎兄貴の頭の中です。
原作未読なので捏造部分はご容赦ください。
↓↓↓
十二、お前が俺の元に来てもう何年が経ったんだろうか。
初めて会った時は、ガリガリの体で、生きてるのか死んでんのか分かんねえような顔をしてたな。
俺が城砦に行けば、龍の後ろでジッと見つめてくるから、最初は俺の事が気に食わなくて睨んでるのかと思ってたよ。
こっちに来ても、薬の離脱症状で時折苦しむお前を見ていられなかった。
昼間はニコニコと大笑いしてるくせに、夜になるとたまに大量の冷や汗をかいて俺のところに来てたな。
こんなこと言ったらお前は怒るかもしれないけど、「苦しくなったら俺のところに来い」って命令をちゃんと覚えてたのが、少し嬉しかった。
ガキにできる仕事なんて大して無いからって、俺の身の回りの事をやり始めたけど、そんな事別にしなくて良かったんだぞ。
お前が初めて作った飯はただの目玉焼きだったが、黄身は固まって、半分くらい焦げてたな。
あれは苦かった。
それが今では、一丁前に俺の好物は大体作れるようになって、完全に胃袋掴まれちまった。
お前が俺に好意を持ち始めた時はなんとなく感じてた。
体付きだけでなく、年齢もすっかり大人になってからだったと思う。
俺が何度断っても、お前は俺に好意をぶつけてきた。
俺は、ガキの頃から見てきたお前をなかなかそういう目では見れなくて、本気で断ったんだぞ。
それが数回、数十回、1ヶ月、半年、1年と…あまりに続くもんだから、流石の俺も押し負けちまって…。
泣く子も黙る虎兄貴とか言われてんのによ。
てめえの小虎に絆されちまった。
俺のいる世界は黒社会という名前の通り、一寸先は闇だ。
寿命を全うできるかも分からねえ。
恨みなんてそこらじゅうで買っちまってる。外面はいいかもしれねえが、本当は敵だらけだ。
欲を言えばこんな世界にお前を置いておきたくない。
お前の幸せだけを考えたら、すぐに黒社会から足を洗わせるべきだ。
十二少。お前は自分の意思でここにいる、と思ってる。
もちろんそれも本当だが、お前をここに置き続けてるのは、俺の我儘だ。
闇を見て、血を見て、絶望を味わって、まるで人間ではなく、猛獣の虎のように振舞って。
そんなことが繰り返されるこの場所で、お前は俺にとっての光だ。
朝目覚めたとき、夜眠る時、お前が隣にいると感じることで俺は人間でいられる。
夜にはお前が俺の横で寝言を言ったり、朝にはでけぇ欠伸をしながら、朝飯食ったり、普通のことをお前とすることが俺の幸せなんだ。
十二少、十二。
どうか、どうか俺より先に死んでくれるな。
誰よりも強くなって、その寿命を全うするんだ。
俺もきっと、お前の美味い飯のおかげで少しは長生き出来るだろうよ。