「巣」で営む夜、シチロウはベッドでするよりもほんの少し奔放というか、サービス旺盛になる気がする。カルエゴはかなり以前からこのことに気づいていたが、慎重に言明を避けていた。もし口に出せば、おかしなところで恥ずかしがり屋の恋人がピャッと真っ赤になって「バカっカルエゴくんのえっち、もうしらないっ」と臍を曲げてしまい、月にたった二度のお泊り日でさえ閨に招いてもらえなくなる恐れがある。それにカルエゴはもう少し深く分析してみたかった。一体「巣」の何がシチロウを興奮させるのか。
「巣」というのは、シチロウが自宅の樫の木にしつらえたお手製の巣である。藤の太い蔓をとぐろ状に幾重にも巻き、すきまをかずらで編みあげて作ったそれは、猛禽類の巣に似ている。シチロウが魔歴準備室の天井にこっそり作った巣も同じだ。
準備室を訪れる者は、藤やかずらが這いまわる天井のありさまに驚いたことがあるだろう。うっそうとした天井に、もう少し目を凝らすと、シチロウの「巣」が見えるはずだが……今のところ、あっあんなところに何かありますね、鳥の巣みたい?と指摘した者はいない。
魔歴準備室の「巣」はシチロウの秘密の寝床で、カルエゴの仮眠用、そして今までたった二度だけ、ふたりのせわしなく息を殺した愛の行為に役立てられたことがあった。
(…がっこう、なのに…だめっ…かるえご、くぅん…)
シチロウの悲痛な、けれど隠しようもなく愉悦をにじませた声を、カルエゴはずっと憶えている。巣にふたりで同じ向きで横たわり、スプーンハグで抱きしめて挿入した。着衣のまま慌ただしく、カルエゴは前だけをはだけて行ったセックスで、ボトムを膝までずり降ろして貫かれたシチロウは、律動に合わせて腰を振りながら、はーっはーっと乱れる息を押し殺して、背後から与えられる胸への愛撫が布越しなのがもどかしいと訴えた。
(すまん、な、次は、はだかに、してやるから…)
耳に声を流し込むと下がきゅううっと可愛らしく締まる。もう少しだけ甘やかして、そろそろ達かせてやろう。頭の中で休み時間の残りを逆算している間も、巣の揺れに従ってギシギシと蔓が低く呻き続けていた。
ひょっとするとシチロウはあのスリルに興奮しているのではないか、とカルエゴは考えてみる。蔓が軋むような音を絶えず立てるあの状況に。