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    dom387676

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    dom387676

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    タイトルは「10月30日」です。
    両片思い道祖

    肩の高さに上げた左腕に袖を通し。右腕にも同じようにした後で
    正面に立ち、袷からの襟の調整をすれば、いつもはさらされていない首筋の白さにどきり、とはねる俺の心臓とぎしり、と固まる指先に「道満?」と不思議そうな声で俺に着付けをされている男が稚さすらにじませるような声で呼ぶから。

    「なんでもねぇよ!俺に何でこんなことさせてんだって思っただけだ。」
    「ふふ。それは君が負けたからだし。そのうえで君が僕の提案に諾と返したからじゃないかな」
    「ウルセェ。」
    「ふふ。ふふふ」
    楽しそうに笑う男の声が癪に触り、ぶっきらぼうな言葉を返せば、それすらも面白いとばかりに笑みを深くする男に。

    (あぁ!くっそ!いっそ引っ搔いて!?)
    なんて思いながらも襟元に入れた指先は何もできないのだけれど。

    **********

    そも、なんで今、俺がこいつに対して従者のようにしているのかといえば
    昨日行った99戦目。今回はいける!と思ったのもつかの間「流石だけど。まだまだ甘いね」なんて言葉とともに一気にひっくり返された勝敗の行方。

    気づいた時には地に伏せられて土埃にまみれていて。
    その手並みの鮮やかさや、晴明が何をどうしたのかすらも理解が及ばないことが悔しくて。悔しすぎて心の汗が勝手に瞳を潤ませるのを気取られてなるものかと腕に顔を押し付けて地面に寝そべるままでいれば。

    しゃり、という玉砂利を踏みしめて近づいてくる男は、おもむろに伏せた俺の前にしゃがむと言った。

    「さあて、道満。君は今負けたわけだけど」

    いや。本当にこいつにデリカシーというものはないのか?
    無ぇんだろうけど。

    「んだよ」
    「ふふ。さすがに99戦目の僕の勝利だしさ。勝者たる僕の願いをかなえてくれてもいいと思うんだけど」

    (何言ってんだこいつ?)案件である。
    98戦目までは勝利してもさして喜びどころか頓着もしなかったじゃねえか、と思うし
    俺よりも身分も実力もあるし、俺目線で見ても容姿だって悪かねぇやつが願うことなんてあんのか?とも思う。思えども。

    (丁度いい)とも思ったんだ。
    例えばこいつが望むような食事や、こいつが好意を持つような容姿、その情報を知れる絶好のチャンスだと思ってしまったのだから。

    「…何が望みだ?」
    「その言い方だと君のほうが立場が上っぽくて複雑だなぁ」
    「茶々入れんな。ンで何がいいんだよ」
    「その前に、『承ります』と約束をしてくれるかい?」

    ぎょっとして伏せた顔を上げれば、晴明はいつもと同じたおやかな笑顔なのに。
    (なんだよ、その面は)。瞳だけは切実な色を灯していたから。

    陰陽師にとって言葉こそが力であり、祝福にもなり、呪いにもなるものであるからして。簡単に約束などできねえってことはこいつも俺も骨の髄までしみ込んでいるほどに理解ってる。だから俺が諾と応えないこともこいつにとっては予想済みなことなのだと思い知らされて。

    (ふっざけんな!)

    勝手に言うだけ言って
    無理だと決めつけられる俺の気持ちなんざてめえは思い至るどころか考えもしねえんだろ。なんて思ったら。

    「わかった。いいぜ」

    諾を返せば。ちょっとだけ見開く血のように濡れた赤い瞳をきょとりとさせて。
    教師然として「陰陽師としてはそんなに簡単に言質を取られるのはよろしくないよ」
    なんて珍しくも少しだけ困ったように言うから。

    その姿があまりにも稚くて。

    だから

    「お前の願いを俺が叶えるのは気分がいいからな」なんて言ってしまったのは。
    今思えば失態だった。

    *******
    思い出が欲しかったお星さまと
    失うことになるとはつゆ知らず、口では何を言おうともお星さまのお願いである「一日従者になって」を曲解してはお星さまを目いっぱい甘やかそうとする思春期少年(ツンデレ標準装備)の話

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    dom387676

    DOODLEAI偽★と家政婦★の話。

    仮タイトルは「★、家政婦になるってよ」でした。
    …えっと烏ファンの方には謹んでお詫びするしかないな!って思ってます。
    (ちなみに後編書いてるんですがね・・・・いります??)
    人も妖も、それこそ神であっても手を取り合える未来。それを作り上げるための前段階として下ごしらえをするのが自分の存在意義だと分かっていた。
    陰陽道を極め、神と契約をし、そうして己の死をもって、妖怪側にも神側にも立たずに勝者の中立として座す人間として『もう一人の僕』を転生させる。
    別に難しいことではなかった。天はそのために僕に未来を見通せる力を与えたのだろうから。例えるなら双六。さいころを振ってあたった目に書いてあるお題をこなすのみ。まぁ、それだってどんなお題が出る升に止まろうが、結局ゴールの位置は変わらないのだから。とんだ茶番の消化試合になるはずだったんだ。

    (僕が間違えてさえなければ)

    一つをクリアするたびに、さいころを振る。振ったさいころの目がどんな升にとまっても、そのお題を淡々とこなす。楽しさも、嬉しさも、優しさも、愛しさすらすべて加味せずに。ただ与えられたものをこなす。本来であればそうしなければいけなかったのに。
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