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    8Lady_Y

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    8Lady_Y

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    今月中に書き上げたい気持ちを鼓舞するべく導入だけ…
    濡れ場ないけど暴力表現が割とある感じになりそうなので、年齢制限が悩みどころ…

    コチコチと秒針を鳴らす時計と、低く唸るような海流の音。
     深海の虚を思わせる真っ暗な室内から、備え付けのシャワールームへと繋がる扉を潜る。灯りはつけなかったが、足元に設えてある間接照明がぼんやりと空間に薄明かりを投げていた。
     簡易的な洗面台に備え付けられている鏡に向かうと、薄暗がりに浮かび上がるように佇む片割れと目が合う。左右で色の違う瞳が、どろりとした淀みを湛えてこちらを見返していた。
     こんな濁った色は貴方には似合いませんね。そんなことを考えながら、視線を逸らす。
     ターコイズブルーの髪を手櫛で雑に整えて、右の耳に浅瀬を思わせる色のピアスを下げる。チャリッ、と小さく響いた音はいつもなら愛おしく思うものであったが、今はこの胸に満ちたどす黒い感情を徒に掻き立てるだけだった。
     右手に持つマジックペンを軽く揺らして、鏡に向き直る。淡い灯りを反射して、ぼんやりと暗がりに光を放つ鏡面。つるりとしたその向こうに佇んでいた片割れは、淀んだ目をした自分自身に変わっていた。

     数週間前から始めた夜の徘徊も、これで何度目になるだろうか。ひっそりと寮を抜け出し、刹那的な享楽に賑わう夜の街へと向かう。
     本来であればこんな夜更けに学外へ出るなど許されない学生の身であるが、「由緒正しき学舎」を謳ってはいるものの、その実、NRCに通う生徒達は一癖も二癖もある悪童ばかりだ。よって揉め事なんてものは日常茶飯事。そんな有り様であるので、その監督者たる教員達も、余程厄介なことにならない限りは基本的に放任というスタンスを貫いている。生徒達の企てる多少の悪さに関しては、見て見ぬふりをしているのだ。所謂、“若さに任せたヤンチャ”と受け取られる程度のもの。夜間の無断外出くらいは、実行しようと思えば何とでもなった。
     ── きっとあの日の片割れも、そうやって夜の学外へと赴いたのだろう。

     昼間に賑わいを見せるメインストリートから外れ、目に痛い蛍光色にギラつく歓楽街を歩いていく。
     酒瓶を片手に路上でたむろする柄の悪い男達。露出の多い派手な装いで、ねっとりとした視線を投げ掛ける女達。漂う空気は甘ったるく、それでいて何処か饐えてた気配を漂わせている。誘虫灯のように訪れる者を一夜の悦楽へと誘い、惑わせ、時に溺れさせる。典型的な夜の街だ。

     あまり道幅があるとは言えない薄汚れた石畳を踏む。行き交う人々の中をぶつかりもせずに器用に抜けながら、つう、と目には見えない糸を垂らした。
     深海の暗がりに身を潜める性質を持つウツボの人魚ゆえ、気配を薄めて人波に紛れるのは容易い。しかし、今は敢えてその目立つ風貌を隠しもせずに歩を進める。自分達の容姿が人目を惹くことは重々承知していたし、それを利用する術も既に熟知していた。
     下品なネオンに透けるような肌を晒して、ゆらり、ゆらりと、誘うように気配を振り撒く。振る舞いはいっそ、危なげなくらいに無防備な方が良い。庇護欲、嗜虐心、支配欲、そういったものを掻き立てるくらいが望ましい。
     擦れ違う男達が目を奪われたままに振り返る。街灯や壁にしなだれ掛かる女達が蠱惑的な視線を投げ掛ける。それらを涼しく受け流して、夜の街に泳ぐ胡乱な魚達の間を縫った。
     そこに垂らした透明な糸に、獲物が掛かる瞬間だけを今か今かと待ち侘びる。一房だけ色の違う黒髪を鰭の如くゆらりと靡かせて、生き餌は戯れるように蛍光色の水面を浅く波立たせた。
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    8Lady_Y

    MAIKING没になるかも知れないにょたの導入…何の変哲もない、静かな昼下がりの教室。
     ジェイド・リーチは、ペンを片手に魔法史の授業を受けていた。周りに聞こえるのはカリカリと紙面を走るペン先の音と、黒板に向かう教師の落ち着いた低い声。窓の外からは微かな鳥の囀りと、グラウンドから響く暑苦しい教師の声がほんの少し。実に穏やかな午後の授業風景だ。

     黒板の文字を目で追いながら几帳面な筆致でノートに書き付けていく。すると、背後からクラスメイトの大きな欠伸が耳に届いた。
     ── 24回目。ジェイドは頭の中に描いたタリーマークの羅列に、一本線を書き足した。最初は気にせず聞き流していたのだが余りにも繰り返し聞こえてくるので、退屈を厭う持ち前の好奇心は、彼がこの授業中に果たして何回欠伸をするのかを数え始めてしまったのだ。
     授業時間はまだ中盤に差し掛かったところ。なかなか良いペースです。さて、どこまでいくでしょうね。
     丁度、昼食を済ませた午後一の時間帯だ。心地好い満腹感と、ぽかぽかと窓から差し込む暖かな日差し。それに眠気を誘うトレインの平坦な声が重なれば、そうなってしまうのも致し方ないのだろう。必死に睡魔と戦っている彼には申し訳ないと思わな 893

    8Lady_Y

    MAIKING今月中に書き上げたい気持ちを鼓舞するべく導入だけ…
    濡れ場ないけど暴力表現が割とある感じになりそうなので、年齢制限が悩みどころ…
    コチコチと秒針を鳴らす時計と、低く唸るような海流の音。
     深海の虚を思わせる真っ暗な室内から、備え付けのシャワールームへと繋がる扉を潜る。灯りはつけなかったが、足元に設えてある間接照明がぼんやりと空間に薄明かりを投げていた。
     簡易的な洗面台に備え付けられている鏡に向かうと、薄暗がりに浮かび上がるように佇む片割れと目が合う。左右で色の違う瞳が、どろりとした淀みを湛えてこちらを見返していた。
     こんな濁った色は貴方には似合いませんね。そんなことを考えながら、視線を逸らす。
     ターコイズブルーの髪を手櫛で雑に整えて、右の耳に浅瀬を思わせる色のピアスを下げる。チャリッ、と小さく響いた音はいつもなら愛おしく思うものであったが、今はこの胸に満ちたどす黒い感情を徒に掻き立てるだけだった。
     右手に持つマジックペンを軽く揺らして、鏡に向き直る。淡い灯りを反射して、ぼんやりと暗がりに光を放つ鏡面。つるりとしたその向こうに佇んでいた片割れは、淀んだ目をした自分自身に変わっていた。

     数週間前から始めた夜の徘徊も、これで何度目になるだろうか。ひっそりと寮を抜け出し、刹那的な享楽に賑わう夜の街へと向かう。 1424