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    619ssom

    ぽいぽいしてく。
    主に創作BLのうちよそです(*´꒳`*)うちうちもあるよ

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    619ssom

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    うちよそで椋王と夜號のお話
    なんかテキスト上げられるぽいから試しに…。

    ただほんわりしたかわいい二人が書きたかったやつ。
    互いに信頼とかはしてるけど「好き」に気付く前かしら( ˘ω˘ )

    #創作BL
    creationOfBl

    包まれる色


    今回うちの大将が落とした盗賊の集落は、聞いていたよりも規模が小さかった割に
    高価な金品や布、玉を多く隠していたらしい。
    俺が賊達を縛り終えて大将の元に戻る頃には、部下達が戦利品を抱えて大将に報告していた。

    普段 当主…大将の母親に楯突く奴等を懲らしめるだけなら、二度と歯向かうことの出来ない程度に叩きのめすんだけど

    今日大将の代わりに巳虺が言い付けられたのは

    「当主お気に入りの根菜が採れる集落のすぐ近くに、盗賊が拠点を置いたらしいから殲滅して来い」

    っつー事だった。

    賊が村近くを彷徨いちゃあ、安心して畑仕事も出来ないし
    当主が好きな根菜を届けるのも難しいってんで俺等が対処する事になり

    「最近鬱憤溜まってたし、賊残しても村に良い事ねぇから全部掃除すんぞ」

    …大将の鬱憤は当主からの「嫁はまだか」とか「跡取りを作れ」とかの小言が大半の原因なんだろう
    それを綿密に練った完璧な戦略で目標を達成する事により、苛立ちを発散させている節がある。
    賊を逃さず全て捕まえた上に戦利品が手に入ったとなれば、部下達も嬉しいもんだ。

    大将はぴかぴかした物に興味を示さないし、俺も高価な物はよく分からないから大抵は部下達に回るんだけど

    「おい夜號」

    「なんすか」

    喜んでる部下達の隣で「色んな物があるなぁ」と覗く俺に大将が

    「お前の羽織作らせるから、好きな布選べ」

    なんて、着るもん全く持ってないみたいに言うから「うちにあるんで結構です」って断ろうと思ったんだけど、今着てる戦用の適当な胸当てと数着の袴しか思い付かない。

    羽織…?あった、かな…あったような気がする…

    「何悩んでんだ…どうせ今着てるモンしか持ってねぇだろ。どれでも良いからさっさと布決めろ」

    「ありますよ!…どっかに」

    「…良いから早くしろ」

    あ、これ絶対持って無いと思われてる…!
    …スッと脳内に出てこない時点で着れる羽織が無い可能性が高いんだが…
    ここで遠慮してもどうせ断り切れないし、多分俺が羽織持ってない疑惑は晴れないだろうから素直に布を選ぶ為に一歩前へ出る。

    いくつかの布を手に取り、手触りを確認しながら色を見た

    「お、これ桃星の模様に似てんじゃん」

    薄く軽い布に茶色の濃淡と、わざと染めていない白の部分が三毛猫を彷彿とさせる。

    「大将の所に居る猫ですか」

    「そそ、あのぷくぷくしたやつ」

    部下達が「あぁ、あの」と共感してくれる中

    「雰囲気だけだろ」

    即刻ずばりと鋭く切り捨てられた
    確かに、全体的な雰囲気を掴み取っただけの発言だから
    模様の一つ一つまで似ているわけでも無いんだけど…
    大将ほど桃星と一緒に居ないから色も大雑把にしか覚えてないし。

    「夜號さん、この色も綺麗に出てて良いんじゃないですか」

    ふわ、と目の前に出されたのは色々な緑が横線になった織物

    「すげぇ、これにこっちの玉で帯留めつくったら俺巳虺みてぇ」

    黄色がかった明るい緑の玉を照らし合わせてみる

    「帯にこの布使ったらもっと近づくんじゃないですか」

    「おー!完全に巳虺…どうすか大将、巳虺色!」

    「…ふぅん」

    反応薄!目も合わなければ見てもくれない!!
    しかも俺が部下と遊んでいる所為か「早くしろ」と言いたそうな顔だ

    「そっちの猫みたいな柄を袴にして一緒に着ても洒落てますね」

    「お前仕立て屋の才能あるんじゃ無いか?」

    確かに、上が巳虺で下が桃星…
    色はちぐはぐだが布を合わせて上下で着ると中々良い。

    あれとこれも、こうしたらもっと…
    そういって何人かの部下と話していたら

    「それで決まりか?帰ったら椿に仕立ててもらえ、玉も必要な分持っていけよ」

    そう言って大将は離れてしまった。

    帰る前に辺りを一度見直すんだろう、毎回恒例だ
    帰り支度を急かされる前に気に入った布を手に掴んで広げてみる。
    戦いの場では汚れたり破れたりが心配なので、普段着…いや、寝間着だな…






    盗賊達は全員とっ捕まえて、お礼にって貰った根菜を当主の所へ部下が届けに行ったのが一昨日
    その時と前回、前々回、前々々回と当主に顔を見せてなかった大将が当主に呼ばれ
    とんでもなく不機嫌になって、集落への帰路に着いたのが今

    どうやら長らく顔を見せていなかった、という話から
    愛想が無いだの、やる気が見えないだの、孫はまだか…と三時間ほど続いた後
    食事にも強制的に付き合わされ、呑み、絡まれ、後処理を途中で放置しなんとか逃げてきたようだ

    と、いう情報を事前に桃星から聞いていた俺は
    どこまで迎えに行くか若干迷ったのだが、仕立ててもらったばかりの羽織を見てもらおうと「帰ってくるよ」と聞いたその足で迎えに歩き出していた。

    自分で選んだにしては割と似合っているのでは無いだろうか
    あまり褒める事の無い人だから、この前みたいに「ふぅん」で済まされるかもしれない
    興味なさそうな返事だけならまだ良くて、間が悪いと八つ当たりの対象になるかな
    感情を表に出さない人だから、それすらぶつけてくれない可能性もある

    じゃりじゃりと砂交じりの道を歩いて行く
    なんとなくこっちから大将が帰ってくる気がするんだよな

    大将の妖気と機嫌の悪そうな匂いがふんわりとした
    やっぱ今度にすれば良かったか
    でも今更戻れないし、大将だって俺が近付いてる事とっくに気付いてるだろう

    だからきっと

    そこの木を曲がった所で

    ほら、歩いてる

    「大将!おかえりなさい!」

    当主の所から真っ直ぐ飛べばすぐ集落に着くのに、わざわざ道を使うってのは
    きっと苛立ちを集落に持ち帰らない為の、心を落ち着かせる時間なんだろう

    大きく手を振って
    気付いているだろうけど、ここにいるよって伝える。

    紅い髪が風に揺れてるのも
    いつものだらっとした歩き方も
    地面に擦った足音も、呼吸の仕方も
    ちょっと上目で俺を面倒臭そうに、睨むように見上げるのも

    全部分かる距離でピタリと足を止め

    無言で

    ちょっと小首を傾げて俺の異変を確認している

    「へへ、これどうですか?袴も…なんか皆で針してくれたらしくて思ったより早く出来上がったんですって」

    「お前にその色の組み合わせは珍しいな」

    「へ?女達はよく見る組み合わせだって言ってましたよ」

    「…そうか?」

    まじまじと仕立て上がったばかりの羽織りと袴を見つめる大将は
    先程までの隠し切れていない不機嫌さが無くなっていた。

    「やっぱり女は凄いな…これを短時間で…」

    「色の名前も教えてくれました!」

    「…お前、色の名前も知らないのか?」

    「………え、あ!いや、そうじゃなくて!白とか黒とか…その辺は流石に分かりますよ!!」

    普通の簡単な呼び方なら俺だって分かる
    そんな事 童じゃあるまいし得意気に言うかよ

    …この人実は俺の事相当な阿呆だと思ってんな。

    知ってたけど…

    「帯は銀鼠って言う色らしいす、その中でも色は薄いけど俺はこの方が好きだから」

    「鼠色が薄いから白っぽく見える。ぱっと見は絹のようだ」

    大将はついついと俺の帯を指先でなぞり、布の感触を楽しんでいる
    なんだか少しだけ触られている感じが腹に伝わってくすぐったい

    「そうす、んで…羽織りと袴の方が猩々緋!普通より昏くて鮮やかな赤…」

    「猩々の流す血の色だそうだ」

    「えぇ…」

    あからさまに「そうじゃないんですけど顔」をした俺に、大将は怪訝な顔で返す

    「アンタの髪色でしょーが!」

    つい勢いで「アンタ」と呼んだのを誤魔化す為に
    わしゃわしゃと昏くて鮮やかな赤い毛を撫で回す

    すぐに鉄拳が飛んでくると思い身構えていたが、大将は直立不動で動かない

    顔を覗き込むときょとんとした顔で小さく「そうか」とだけ呟いていた















    〜 一ヶ月後 〜

    「女達から聞いたんだが」

    「はい?」

    「その…帯」

    「?」

    「……ん、いや…別に、改めてお前から聞く事ではなかったな」

    「えっ…え?何々?ちょ、待ってくださいよ!帯が何!?」

    「うるせぇ」

    「えぇぇー」
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